松下啓一 自治・政策・まちづくり

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☆ジョン・ロックの統治二論で寄り道する(三浦半島)

2015-11-14 | 1.研究活動

 『励ます地方自治』の校正を始めたが、そこに引用したジョン・ロックの『統治二論』を確認しようとしたら、ついつい、一日、ほかのところも読み始めてしまった。おおきな寄り道をしている。鵜飼先生の本と加藤先生の本を合わせ読みしているが、加藤先生のほうが、やはり読みやすい。

 気になるところもある。鵜飼本は、キーワードであるプロパティを所有権と訳すが、加藤本は、固有権(生命、自由、財産)とする。ロックは、日本国憲法に大きな影響を与えるが、憲法13条から見ると、生命、自由、財産と訳した方が、適切なのだと思う。

 ロックは、ホッブズとは違い、自然状態においても自然法が支配するゆえに、人々の固有権(生命、自由、財産)は、ある程度保全されるが、「その権利の享受はきわめて不確実であり、たえず他者による権利侵害にさらされている」(『完訳統治二論』ジョン・ロック著 加藤節訳 岩波書店第2部第9章123節)と考えている。

 そこで、自らの生命、自由、財産を守るために、人々は政府(国家)を設立する。「人々が、自分の自然の自由を放棄して、政治社会の拘束の下に身を置く唯一の方法は、他人と合意して、自分の固有権と、共同体に属さない人に対するより大きな保障とを安全に享受することを通じて互いに快適で安全で平和な生活を送るために、一つの共同体に加入し結合することに求められる」(第2部第8章95節)。「人が、政治的共同体へと結合し、自らを統治の下におく大きな、そして主たる目的は、固有権の保全ということにある」(第2部第9章124節)。

 ロックによると、「政治権力とは、だれもが自然状態でもっていた権力を社会の手に引き渡し、その社会のなかでは、社会が自らの上に設立した統治者に対して、社会の成員の善と固有権の保全とに用いられるようにという明示的あるいは黙示的な信託を付して引き渡したものに他ならない」(第2部第15章171)ものであるから、「立法者が人々の固有権を侵害することによって信託に反する行動をとったときには、新たな立法部を設け、改めて自分たちの安全を図る権力をもつ」(第2部第19章226)。これは有名な抵抗権である。

 ちなみに、ロックは、人々が、各個人の同意によって一つの共同体をつくった場合、「その共同体へと結合した各個人がそうあるべきだからとして同意したことなのだから、各人は、その同意によって、多数派の拘束を受けなければならない」(第2部第8章96)としている。

 このようにロックにおいては、政府設立の基本となるのは、人々の同意や信託で、これが従来型の地方自治のキーワードとなっている。励ます地方自治は、信託論は、国家の理論としてはいいかもしれないが、地方自治は、信託だけでは論じられないだろうという発想である。

 いいところで切り上げて、早く校正にもどろう。

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