松下啓一 自治・政策・まちづくり

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☆熟議の市長選挙㊸政策選択の選挙(新城市)

2017-09-29 | 1.研究活動

 やや影が薄くなってしまった公開政策討論会ではあるが、10月から始まることになる。3会場でそれぞれ1つずつ、合わせて3つの政策について討論をする。
  ・人口政策
  ・産業政策
  ・市民自治政策

 以前の投稿にもあったように、新城市においては、住民投票やその後のリコールの余波で、住民の間で、政治向きのことは、うかつに口に出しては言わなくなったということもあって、公開政策討論会を取り上げるブログは、「千秋在住」のみである。いつも出るのを楽しみにしているが、今回も、『人口政策』 各市長候補者のみなさんの比較という大論考になった。とても便利で、助かる。続いて、産業政策や市民自治政策の続編も出るようなので、お楽しみに。

 詳細な分析は、千秋在住に譲るとして、私としては、3者の主張を読むにあたっての基本的視点のようなものを提供しよう。切り口は、市民の役割である。市民については、①主権者、②顧客、③公共の担い手の3つの役割がある。 

 ①まず顧客としての市民であるが、企業に例えると、市民は顧客という考え方である。わかりやすい。しかし、英国では、1970年代まで、政府が顧客に盛んにサービスし(ゆりかごから墓場まで)、その結果、政府の肥大化が起こり、英国病になった。そこでサッチャーが出てきて、一転して、民営化にかじを切った。日本でも同じような経緯をたどり、2001年の小泉さんの骨太の方針で、民営化、規制緩和にかじを切った。

 これは政府の失敗といわれるものであるが、実際、少子高齢化で、もうそこまで税金を出せないという事情があるほか、そもそも市民は顧客であるという考え方は、市民は、まちのオーナーでもあるという点を忘れている。市民は、経営者として、考え、行動すべきという視点も忘れてはならない。 

 3者のなかで、山本さんは、顧客(サービスの客体)としての市民を強調する(だから市民ファーストの会)。たしかに規制緩和も行き過ぎがあって、国民のためという本来の目的を見失ってしまいがちな中で、いま、あえて「顧客としての市民」を強調するというのなら、その意義もあるかもしれない。問題は、そのお金をどのように用意するのかがポイントで、新城市のような財政状況では、膨大な借金や国の補助金に頼らなければできないので、そこが市民としては、そに踏み込むかどうかが決断のポイントになるだろう。

 ②主権者としての市民であるが、これは当然である。白井さんは、つとに主権者としての側面を強調している。ここから住民投票やリコールにつながり、今回の公開政策討論会でも、市民自身が考え、判断する機会として、その高く評価しているのだと思う。だから、わざわざ、山本さんのところを訪ねて、公開政策討論会の開催を迫ることになる。

 しかし、主権者であることが、「オレたちの言うとおりにやれ」という要望、要求型の自治になってしまい、結果的に財政破綻を招いてきたという歴史があるので、その失敗を乗り越える方策を示すことがポイントになる。単に「市民は主権者である」と言葉でいうだけでは動かないから、具体的に、どのような仕組みや仕掛けを使って、本来の主権者たるにふさわしい市民としての行動をリードできるかが、聞き所だろう。新城市の若者政策などは、若者の主権者教育のひとつで、その具体化であるが、こうした仕組みをどのくらい考えているのかがポイントになるだろう。

 ③公共の担い手としての市民である。市民は公共サービスを受けるだけでなく、公共サービスの提供者でもある。穂積さんの主張は、公共の担い手としての市民に光を当てる。元気な高齢者もコミュニティビジネスを興し、雇用機会を増やし、公共に担い手になっていく。あわよくば月2,3万円の小遣いを稼ぐというのが方向性である。新城市は、自治基本条例をつくり、役所だけでなく、市民も公共の担い手であると大きくかじを切った。そのための政策も打ちだしてきたが、具体化で持効性のある、市民に活躍してもらう場を提供できるか、どのように進めていこうとしているのかが、聞き所だろう。

 人の考えは、一面的ではなく、それぞれの候補者が、この3つの視点は、お持ちだと思うが、比重のかけ方は、このように違うように思う。考えてみると、今回の選挙は、小さな政策選択の選挙なのかもしれない。

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