松下啓一 自治・政策・まちづくり

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☆地方自治論9・外国人は地方公務員になれるか(相模大野)

2014-06-10 | 1.研究活動
 地方自治論の9回目は、外国人は地方公務員になれるかである。

 この問題は、実務や判例はすでに固まっている。外国人が地方公務員に就職するのは、問題ないとされ、実際には外国人の地方公務員も多い。焦点は、認容された外交人公務員が管理職になれるかに移っている。

 日本に中長期的に住んでいる外国人は、200万人を超える。ここ数年は、頭打ちであるが、少子高齢化時代のなか、今後も増えていくことは間違いないだろう。自民党も財界も積極的である。そういう現実を前提に、ディベートをやってみた。

 最初に受講生の意見を聞いてみた。すると全員が地方公務員になれるべきという立場である。その理由は、要するに、その地域に住んでいたら、日本人だろうと外国人だろうと、地域のために行動すべき権利と責任があり、その延長線で、住民のためになる優秀な人ならば、国籍がどこであろうと、公務員となって、地域のために活動してほしいというものである。

 最近、日本人ならば住民のためになるが、外国人ならば住民のためにならないといった議論をする人に出会うことがある。最近の中国や韓国・北朝鮮の振る舞いを見ていると、そうした思いを持つことも理解できないわけではないが、国際政治と地域で暮らすという地方自治とは全く別である。

 国際政治は、アナーキーなので、力と力がぶつかり合う。ニコニコと握手をしながら、見えないところで、相手の足を踏むのが国際政治である。アナーキーゆえに国際政治では他国への警戒をしながら、行動することも必要である。ところが、地方自治は、自立と助け合いである。困ったことがあると、みんなで力を合わせて助け合い、日常の課題に取り組んでいく。両者は行動原理が違うのである。その違いを一緒にすると、地方自治は、おかしなものになり、そもそも成り立たない。

 例えば、大地震や大津波が来れば、日本人も外国人もない。そこにいる人が、協力し、助け合わないと、ひとり一人の命が守れない。高齢者福祉でも、老人の車いすを優しく押す人が大事なのであって、国籍が大事なのではない。老人を邪険にする日本人と老人にやさしい外国人のどちらが地域に大事なのかは言うまでもない。それが地方自治である。地域で、地域の人たちと暮らしていれば、そんなことはすぐに分かる。

 だから大事なのは、異質だからと言って排除するのではなく、助け会い、協力し合う関係をつくっていく努力と仕組みである。外国人問題で最も大事なのは、政治参加や行政参加よりも外国人のコミュニティ参加である。これはまったくと言っていいほど手がついていない。日本人にとって、外国人との共生は、慣れないことだし、戸惑うかもしれないが、早晩、本格的な移民政策が始まってくる前に、その準備を進めておかないと困ったことになってしまう。

 ディベートでは、みんなが賛成派だったので、私は反対派になって議論をした。ただ、外国人が地方公務員になってはまずいという理由が、現実性の乏しいケースばかりなので、私の反対論は、あっという間に打ち破られてしまうことになった。
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