松下啓一 自治・政策・まちづくり

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☆政策類型論の限界(三浦半島)

2014-09-05 | 1.研究活動

 政策論のテキストを書いている。

 元の原稿は、15年前くらいに書きかけたものである。1998年に『自治体NPO政策』を書いて、続いて、自治体政策論を書こうと思って、たくさんの文献を読み始めた。その後、しばらく入院することになって、病院で書いたのが、『インターネットで政策づくり』である。だいぶ調べていたので、これは、あっという間に書くことができた。

 その後、いつかは、自治体政策論を書こうと思っていたが、ずっと、そのままになっていた。最近、政策形成の研修を頼まれることが増えてきたので、ようやく意を決して、書き始めることにした。ほかの本と並行して書いているので、しばらくかかるだろうが、楽しみながら書くことにしよう。

 政策がどのように展開するかを論じるのが、政策類型論である。当時、一番、気に入っていたのが、J.Q.ウイルソンの政策類型論である。
 これは,政策実現に要する費用とその結果もたらされる便益が、特定セクターに集中するか、広範に分散するかを基準に、政策の決定・執行過程を類型化するものである。

 ウィルソンは、費用(集中・分散)×便益(集中・分散)で、4つの政策類型に分ける。(1)分散した費用と分散した便益、(2)集中した便益と集中した費用、(3)集中した便益と分散した費用、そして(4)分散した便益と集中した費用である。

 このうち、政策の形成が困難なのが、(4)のタイプである。なぜなら、受益者側は、個々の受ける利益がわずかであるため、利害・関心が希薄であるのに対して、負担者側は、負担が集中するため、強い利害・関心をもち、また、少数者ゆえに、負担者を組織化し、政策形成を阻止すべく政治的影響力を行使することが容易だからである。それゆえ、この政策は、提案されにくく、提案されても強い反対に遭遇する。

 容器包装リサイクル法ができる前、横浜市独自で、ドイツのデュアルシステムのようなシステムの導入を考えたが、それはこの(4)のタイプだった。まさに、事業者団体の強い反対論に遭遇し、ウィルソンの言うような展開となった。今でも、悔しい思い出のひとつである。

 自治基本条例は、(1)のタイプだろう。費用も便益も分散するタイプは、受寄者側も負担者側も、利害・関心が希薄であり、いずれのサイドからも圧力は生じない。だから、行政側が問題提起して世論を創出することが大事ということになるのだろう。

 

 

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