松下啓一 自治・政策・まちづくり

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☆論点1.『地方消滅』は地方自治の本なのか

2025-01-04 | 地方消滅

 『地方消滅』(中央公論社)をあらためて読み直している。研究室がないので、不要になった本は処分しているが、もう少しでこの本も処分するところだった。捨てないでよかった。

 論ずべきたくさんの論点があるが、これは今後、書いていきたいと思うが、今回、読み直してみて、この本は、地方自治の本ではないことがあらためて分かった。

 この本の関心は、あくまでも人口減少による国力の低下をどう防ぐか、あるいは東京一極集中による日本の脆弱性をどう是正していくかがメインで、地方自治は、それを防ぐ「ダム機能」の役割という位置だと思う。

 地方自治を基点に考えていないから、地方自治がつくる民主主義のような議論は、この本には、出て来ない。論者たちは、そもそも住民自治にさほど関心がないのかもしれない。まさに地方自治は、大きな平野が広がる下流(国家)を守るダム機能の役割なので、地方自治はその範囲であればよいと考えている人たちなのではないかというのが、現時点での私の仮説である。

 私の仮説は、国から見た『地方消滅』という限界を持つのではないかというのが私の仮説であるが、その証左は、実際、消滅可能性都市の議論は、その次の地方創生に連動していくからである。この増田レポートは、国との連携、もう少し言えば、国と示し合わせて、露払い、先導の役割を担って書かれたものだろう。

 むろん、国家戦略の一環を担うと提言が、悪いと言っているわけではないが、少なくとも、これを地方自治をリードする政策として読み取るということは、十分、注意しなければいけないということである。この『地方消滅』の限界点をしっかり踏まえて、考える必要があるだろう。

 住民自治から考えるという観点の欠如は、地方分権改革から連綿と続く、日本の「地方自治改革」構造的弱点である。それは簡単に言えば、国の都合(希望)する地方自治改革ということである。

 なので、対案は、この住民自治を意識し、ここから立案しながら、消滅可能性都市を考えていくのが、正攻法だろう。むろん、うまくいくか、そこまでの力量があるかどうかは、見てのお楽しみであるが、この点は大事なことなので、きちんと書いておこう。

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