松下啓一 自治・政策・まちづくり

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☆外国人はなぜ民生委員になれないのか(3)

2019-05-23 | 1.研究活動

 民生委員は、特別職非常勤公務員と言われている。一方ではボランティアとも書かれている。どうなんだろう。

1.地方公務員には、一般職と特別職がいる。一般職は特別職に属する職以外のすべての職とされる(地公法第3条)。特別職の公務員は法律に特別の規定がある場合を除いて地方公務員法は適用されない。

2.特別職の範囲については、地公法第3条3項各号に列記されており、いろいろな特別職がいる(たとえば)首長の特別秘書)。民生委員は、第3条第3項第3号の「臨時又は非常勤の顧問、参与、調査員、嘱託員及びこれらの者に準ずる者の職」が当てはまる。「非常勤」で、だから特別職非常勤公務員と言われる(水道局長も特別職である。第1号の2。これは非常勤ではない)。

3.総務省通知では、特別職非常勤とは、「主に特定の学識・経験を必要とする職に、自らの学識、経験に基づき非専務的に公務に参画する労働者性の低い勤務態様」(平成26年7月4日付け総務省自治行政局公務員部長通知)とされている。法律や自己の学識経験等に従って自らの判断と責任で職務を遂行することが期待されている。

4.非専務的な職とは、生活を維持するために公務に就くのではなく、特定の場合に、一定の学識、経験、技能などに基づいて、随時、地方公共団体の業務に参画する職を意味する。

 5.労働者性の低い勤務態様とは、担当する職務が厳格な指揮命令系統の中で行うことが予定されておらず、当該公務の他に職務を有していたり、公務のために使用する時間が短時間であったり、その期間が短い勤務態様である。

 6.使用従属関係があり、個人が地方公共団体の事務処理のために労働力を提供し、当該地方公共団体がその者を自らの支配下において労働に対して対価を払うという関係と同視できる場合には、地方公共団体との関係で労働者に該当する。特別職非常勤職員はこのような性質が低い職である。

7.なお、平成32年4月施行の改正地公法で、特別職非常勤職員の任用要件が厳格化されている。すなわち、特別職のうち「臨時又は非常勤の顧問、参与、調査員、嘱託員及びこれらに準ずる者の職」については、自らの学識・経験に基づき非専務的に公務に参画する労働者性の低い勤務態様のものという、従来の考え方に加え、「専門的な知識経験又は識見を有する者が就く職であって、当該知識経験又は識見に基づき、助言、調査、診断その他総務省令で定める事務を行うもの」に限定するとされている。これは、6のように臨時職員等を地公法などが適用されない特別職非常勤職で採用するケースなどが頻発し、特別職非常勤職員の範囲を明確にしたものである。

8.民生委員は、地方公務員法第3条第3項第3号の特別職非常勤公務員であると解されている(昭和26年8月27日 地自公発第360号 岩手県総務部長あて 公務員課長 回答ほか)
 民生委員は、都道府県知事の推薦によって、厚生労働大臣が委嘱される(民生委員法第5条)。民生委員には給与を支給しないものとし、その任期は3年とされている(同法第10条)。その職務に関して、都道府県知事の指揮監督を受けること(同法第17条)。そして、民生委員に関する費用は、都道府県が負担すること(同法第26条)等がその理由である。

9.ちなみに、国家公務員ではなく、都道府県の地方公務員とされている(回答3及び4 民生委員の職務内容及びその経費の支弁者等を総合的に勘案して地方公務員としたものである。なお、民生委員が都道府県の地方公務員なりや市町村の地方公務員なりについては、現行法上必ずしも明瞭ではないが、現行法上は都道府県の地方公務員と解し、その費用弁償の支払義務者は都道府県知事であると解するのが相当であろう)。

10.民生委員制度は、変遷しているが、近年は、「社会奉仕の精神をもって地域の福祉向上に取り組むボランティア」とボランティア性が強調されてきた。「民生委員・児童委員は、「住民の立場に立った相談・支援者」であり、自らも地域住民の一員として、担当の区域において高齢者や障害者の安否確認や見守り、子どもたちへの声かけなどを行っています。医療や介護の悩み、失業や経済的困窮による生活上の心配ごとなど、様々な相談に応じます(民生委員・児童委員には守秘義務があり、相談内容の秘密は守られます)。そして、相談内容に応じて、必要な支援が受けられるよう、行政をはじめ地域の専門機関との「つなぎ役」になっています」(社会福祉協議会HP)。

11.「民生委員・児童委員の職務は、公権力を行使できる権限を有していないため、国では身分証を作成しておらず、身分を示すものとしてき章を交付している」(総務省)。「当然の法理」にたっても、民生委員に国籍条件を求めるのは、過度な要求といえよう(入り口で狭める合理的理由はないようだ)。

 ちなみに、民生委員法ができた当時の国会議事録では、「民生委員の資格要件につきましては從來の民生委員令には何らの規定がなかつたのでございますが、本法案におきましては第六條におきまして、当該市町村に議員の選挙権を有していること、人格識見の高いこと、社会の実情に通じていること、社会福祉の増進に熱意のある人で、更に兒童委員としても適当であることを明らかにいたしたのであります」( 参 - 厚生委員会 - 18号 昭和23年06月28日)という程度で、なぜ日本人に限るのか、主権論からの積極的な議論は行われていない。

 人格識見条件のひとつが、選挙権くらいな感じである。つまり選挙権もないような人(欠格者)は、民生委員にふさわしくないといった感じなのだろう。制度的に、選挙権がない外国人には、この議論は当てはまらない。

 

 

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