まるもり移住・定住サポートセンターのをシェアしました。
【 河北新報朝刊記事について 】
東北地域の活力向上と持続的な発展を目的に、東北活性化研究センターが、「2015年度 東北圏社会経済白書」を発行しました。
白書のなかで、丸森町の移住施策の取組みが紹介されていますので、ぜひご覧ください。
東北活性化研究センター(仙台市)は「2015年度東北圏社会経済白書」=写真=を発行した。人口減少対策として若者の移住・定住促進にスポットを当て…
をコピーしました。
① 宮城県丸森町 ―取組み初期段階の動向―
1)宮城県丸森町の概要宮城県伊具郡丸森町は県の南端に位置しており、仙台市と福島市へは車で1時間程度である。
人口は13,984人(4,551世帯)(2015年10月時点)、1954年に2町6村が合併し現在の枠組みとなった。面積は273.0㎢、
そのうち森林が192.1㎢で7割を占めており、耕地面積は31.7㎢である。
就業人口は7,059人で産業就業人口別では第一次産業が14.0%、第二次産業が40.5%、第三次産業は45.5%となっている。
町内の基幹産業は農業で、主要な作目である水稲、畜産、野菜と果樹や特用林産物を組み合わせた経営が行われている。
資料:大河原地方行政連絡調整会議(2015)「仙南地域の概要 平成27年度」 農林水産省「作物統計調査 平成26年」
宮城県「平成27年国勢調査結果速報(宮城県の人口及び世帯数)」図2-1
宮城県丸森町第Ⅱ部若者の移住・定住促進 107
2)丸森町の人口の概況丸森町の人口は1950年をピークに高度経済成長期に著しく減少した後、
1985年までは約20,000人を維持していたが、それ以降、減少が続いている。
現在は13.984人とピーク時の半数以下となっている。図2-2 丸森町の人口と高齢化率資料:総務省「国勢調査」(2015年のみ宮城県「平成27年国勢調査結果速報(宮城県の人口及び世帯数)」)
第Ⅱ部若者の移住・定住促進 108
3)丸森町の移住・定住政策丸森町が移住・定住の促進に関して本格的に取組んだのは2015年度、子育て定住推進課 定住推進班が新設されてからである。手探りの中でも県のモデル事業に取組む等積極的な動きがみられる。
()これまでの支援施策等の取組み丸森町では子育て定住推進課 定住推進班が設置される以前からも「定住支援」に関する施策が行われている。町のホームページ中の「定住支援」の項目に掲載されている情報をまとめたのが表2-1である。
第2子以降保育料無料化の施策以外は住環境整備に特化した内容である。これは希望者に働きかけて移住・定住を促進することを目的としたものというよりは、既存住民を引き留めることを重視した内容といえる。
その他、町内でも比較的農業が盛んな地域2ヶ所にクラインガルテン(滞在型市民農園)を2000 年と2005年に整備している。クラインガルテンとは休憩(宿泊)可能な小屋がセットになった市民農園である。丸森町では全26区画、1区画当たり年間36万円で貸し出し、滞在人口の拡大を図ってきた。これを機会に移住した人もいるが、施策として町が関わったものではない。現在は新規就農者の研修等にも利用されており、田舎暮らしを選好する人には好評を得ているが、徐々に利用者が減少している。
次に今年度、新たに行っている事業について説明する。
表2-1 これまでの施策資料:丸森町HPよりhttp://www.town.marumori.miyagi.jp/teijyu.html(2015年12月8日最終閲覧)
第Ⅱ部若者の移住・定住促進 109
()2015年度からの取組みア子育て定住推進課 定住推進班を新設前述した通り、正式な担当課が新設されたのが4月からである。これまでの企画財政課をはじめ複数の課で担当していた定住施策部分を引き継ぎ3人体制で発足した。これにより、移住・定住促進の取組みが本格的に行われることとなった。
イ「移住・交流推進モデル事業」の取組みこれは宮城県が移住・交流推進に関して市町村への支援、連携を強化するため行っているモデル事業である。実施地域は2箇所であり、丸森町大内地区の他、栗原市花山地区である。内容は移住推進に積極的な市町村を対象にアドバイザーを派遣し、市町村・受入団体等と一緒に地域資源の掘り起こし、受入体制の整備等、地域性や独自性のある企画提案を行うものである。大内地区は21の行政区(集落)で構成されており、人口2,526人(823世帯)(2015年10月31日時点)の地域である。
この事業ではアドバイサーを招き、ワークショップ等を6回行った。ワークショップには28名の委員が招集され、委員は区長等の充て職もいるが、ほぼ半数がUターン者やIターン者である。移住・定住経験者の体験に基づく意見も取入れ協議を重ねた。初回に町からは、決してアリバイ作りの委員会ではないので町は答えを準備していない旨を宣言し、そもそも、移住者を受け入れる必要があるのか、という根本的なことから協議を開始した。
人口減少は地域にとってどのような影響があるのか、移住者の受入れはどのような効果をもたらすか等、自分達に関わることだと想定してもらいながら協議した。結果的に移住希望者に対して地域を知ってもらう地域のガイドブックを作るという結論に至った。
これは「地域の教科書」と呼ばれるもので、住民にとっては当然のことである、地域行事や自治会費、年間を通した気候や地域独特な生活の知恵の他、地域の古老でなければ語ることができなくなりつつある伝統や言い伝え等を整理し、まとめたものである。「地域の教科書」づくりを通して、住民の一体感が生まれ、移住者に向けたものではあるが、その製作過程では既存住民が今一度、自分が暮らす地域を見つめ直す機会になる。自分達の暮らす地域の価値を再確認し、移住希望者へ胸を張って自らの地域を説明出来るようになるのである。このように委員が出した結論であるならば、町は予算を含め可能な限りの支援を継続するとのことである。
ウ「丸森町婚姻推進活動支援事業」の取組みこの事業は人口減少対策のためのものである。丸森町では2002年から独自に結婚相談所を設け、 38組の成約実績がある。しかし、町内住民が町外の住民と出会う機会を創出するには限界があり、 2015年10月に結婚相手紹介サービスを行う民間企業と提携した。この企業が地方自治体と提携するのは6例目であるが、入会金に加え、月額会費の半額までも町が補助するという事例は初とのことである。
第Ⅱ部若者の移住・定住促進 110 エ「起業支援推進事業」の取組み
これは子育て定住推進課定住推進班の担当ではなく、商工観光課の担当であるが、移住希望者にとっても移住を決断する際に有効的な取組みであると考えたため、簡単に紹介する
。町では、2015 年8月27日、起業を支援する取組みとして「起業サポートセンターCULASTA(クラスタ)」を開所した。若者世代の就業機会を確保し人口流出を防ぐため、起業希望や関心がある住民を対象に支援を行うことを目的としている。
業務は起業支援に実績のある仙台市にある企業が請負っており、スタッフが週3日、終日常駐している。事業計画の練り直しや資金調達の仕方等を伴走型で支援する。また、年会費1,500円でセンター内の共同スペースも利用可能で、町外ですでに起業に実績のある人や、起業希望者も積極的に受入れようとしている。実際に起業したという事例はまだないが、具体化しそうな計画が出始めている。
その他、今年度は定員10名の無料ビジネススクールも6回開催した。これまでは既存住民の流出を防ぐため、住環境整備に直接補助金による支援を重点的に行ってきたが、
2015年度からは担当課を新設し移住・定住を促進するために取組みを本格化している。特に住民の受入体制を主体的に整備することへの支援や、やる気次第で着実に起業を後押しするような支援が打ち出された。住民にとって補助金をもらうというような受身的ではなく、活動を促されるような支援に変わってきている。写真2-1
起業サポートセンターCULASTAの概観注)有形文化財「齋理屋敷」を改修し利用している。資料:MARUMORI CULASTA PROJECT HPよりhttp://marumori-startups.com(2015年12月24日最終閲覧)第Ⅱ部若者の移住・定住促進 111
4)担当職員の評価と展望丸森町では今年度、様々な取組みが一斉に同時進行している。そういった中で、これまで取組んできたことに対しての評価や今後、どのような点に留意すべきと考えているのか、担当職員の発言をまとめたのが表2−2である。この発言からは、移住・定住促進は行政が主導的に進めるものではなく、住民の理解と主体性を引き出すことで成されると考えていることが分かる。また、職員自信の固定概念に囚われず、新たな価値観への気づきやその価値観の友好的な活用が重要であることも示唆している。表2-2
担当職員の評価・展望第Ⅱ部若者の移住・定住促進 112 5)取組みのまとめ
()これまでの取組み元々、「定住支援」という名目で行われていたのは補助金による住環境整備が主である。これは移住者の獲得というよりは既存住民の流出防止といった意味合いが強いものである。まずは既存住民が幸せに丸森町で暮らすことが第一であり、移住者獲得の優先度は低かった。
()新たな取組み担当課が新設され、本格的な取組みが始まったばかりであるが県のモデル事業に応募し、住民の主体的な受入体制を整備することや、やる気次第で起業実現まで手厚く支援する独自の取組みが一斉に始まっている。今後はNPO等による移住者受入れの支援組織の設立を検討している。行政は住民主体的な取組みになるような仕掛けをしながら、積極的に移住・定住促進に関わる支援施策を打ち出している。
6)移住・定住促進に向けて
()受入れる住民に必要な支援の拡充移住者の受入経験が乏しい初期段階では、受入れ当事者である住民の主体性を引き出すことが重要である。行政は住民に考える機会を持ってもらい、住民の決定を尊重出来る支援をする。例えば、本当に受入体制を整備する必要があるのかといったことから協議することを促すことである。
()新たな視点の必要性新たな価値観、コンセプトを考え出して、施策を打ち出すことである。それはないものを新たに作り出すということではなく、存在しているのに気付いていないものに価値を与えることである。例えば、自家用車で通勤することが当たり前と思っていることについて、実は「ウリ」になるのでは、と考え出すこと等である。
その他、IターンとUターンを同一視せず違いを整理し受入れ側として、より誘致しやすい希望者に狙いを定め支援施策を打ち出すこと等も考えられる。