還り見れば酔生夢死か?

80歳代の聾人でネットの話題を書いています。足が悪いので家で得ることが出来るネット情報と私自身の唯我独尊の偏向文です。

論 碁 ?

2008-12-31 01:24:24 | ネタ

論 碁?

① もう30年前後になるか?我家に現役教師の来客があった。

当時 私は某ゼネコンに勤めていて現役のバリバリだった。

お酒が入り話に弾みがつき来客の方が

「我々は労働者だ」と言うくだりで私は思わず

「教師は労働者ではないよ。聖職だよ」と言った。

「聖職と言う言葉は戦中、戦前に時の政府が作り出した言葉に過ぎない!今は違う」

「ならなんだ?」

「労働者だ!」

「違うだろう?教師としての矜持はないのか?」

激しいが静かな論争になった。その方は日教組のかなりな活動家だったのだ。

見かねたカミさんが間に入りその場は収まった。

そしてお互いの趣味である碁を始めた。

私が負けた。

あとは彼の好きな焼酎と我輩の好きな日本酒での酒盛りだ。

当時はお互いに一晩で一升瓶を空けたものだ。

若かった~・・・・。

② その数年後 また同じ方の訪問があり、今度は

「生徒と我々は友達だ」と言う下りで

「それは違うぞ。教師はあくまで教師であり、生徒は生徒だ」

「違う!一人の人間としては同等だ!」

「何が同等だ!生徒が子供であることには違いないぞ!大人と一緒にしてもらっては困る」

「私は人間教育をして居るのだ!大人、子供の話ではない!」どこか?食い違う。
違和感がある。

「先生は子供を教え導き生徒は教えられて何をか身につける。そこには厳然と師弟の関係がある。それを弁えないなら教師の資格はない!」

「私が言ってるのは生徒も先生もない人間の問題だ!」

論争も二本のレールの上を走っている。それも進む方向が逆に進んでいた。

またもや静かであるが激しい論争になった。

後はカミさんの執り成しで収まり囲碁の対局である。

その日の囲碁は私の勝ちであった。悔しそうな顔をしていた。

その後は例により彼は焼酎!我輩は金粉入りの日本酒(五橋)だ。

何故か彼は焼酎しか飲まない。
・・・・・・・・・・・・・・・・・
③ その後、どういうものか懲りずに、この方がまたもや来宅されて今度は

「国旗、国歌」で論争になった。

「国旗はアジアを侵略した軍隊の旗印だ!」

「国歌は皇室の賛歌に過ぎない!」

「何を言う、国旗は国旗だ!国歌も同じ日本の国の国歌だ」

「国旗、国歌は今に始まったことでない!江戸時代から使っている!調べれば分かる」

「その国旗、国歌が問題なのだ!」

「どこが問題だ?問題はそう解釈していることが問題と思う」

何時ものパターンでカミさんの執り成しで論争のあと囲碁を打つ。

私の負けであった。

何故か?いつも論争のあとで囲碁の対局になり、囲碁の勝負がつけば二人だけの酒盛りだ!

酒盛りも焼酎と日本酒だ。私は先にビールがいいのだが彼が余りビールを好まない!

彼は焼酎の前に他のものは飲まないのがいいと言う。

何故か?それに我輩も付き合っている。

優柔不断な我輩がそこに居る。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
それ以後 十年くらい見えることは無かったが、彼との雑談で、やがては、こちらに来て終の家を造り住みたいという希望は聞いていた。

その方が定年後こちら(房総半島)に家を建てて引っ越されてきた。

こちらに来られて、もう十年近く経過していた。

房総半島の温暖な気候が気に入ったらしいが流石に冬に雪が無いのは寂しいようだ。

今年の夏に、あろうことか、その方から我家に来たいと葉書がきた。

車でなく電車で来られるらしい?

別にお断りすることはない。来られる時には連絡をして欲しいと返事をだした。

房総半島に来られて、山登り、バイオリン、なにやらボランテァ活動 等 多方面にわたる同好会に参加されてかなり忙しいらしいが、どうも、どの会も夏休み入ったらしい?

関東にも出身地の教師のOBの会があり、こちらに来られた当時はよく、そこに顔をだされていたようだが、何故か最近は足が遠のいているとか?

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

④ 来宅された感じが以前と随分と違う。

お互い歳を取った所為か?もう社会問題、教育問題の話はなかった。

早速 碁盤を出して対局した。局面は何故か?私が非常によい。

私ならとっくに投げている局面になった。

それでも一向に投げる気配はない。

「もう 勝負は付いているのだが?」と呟いた。

「そんなことはない」と彼は呟き白石を指先に挟みこんで考えている。

どうやら私の黒石を殺そうと手数を数えているようだ。

然し 既に攻める側の盤面の白石の大石は欠け目で死んでいる。

50目以上の差がある。それでも気が付かないようだった。

「これでは昔のあんたのようだな」と呟いた。

わき目を振らないで信じることに一途に進む彼を指しての言葉だ。

彼は改めて盤面を見られたが自分の石の大石が死んでいるのに気が付かず、その盤面が目に入らぬようだった。

堪らずに・・・

「この(白)石 死んでいるよ、ほら、この目は欠け目だよ」指差す私の指先の石をみて

「あッ・・・」と叫んで固まった。

普通このような失礼なことはしないが、そうせざるをえなかったのだ。

「ほら 昔のあんたのようだよ」

「・・・・・」

彼は怒らなかった。じ~と盤面に目をやっていた。

「負けました」お辞儀をして、その日の対局は終わった。

何時も対局は一局のみだった。

今回は彼に勝った。

「昔の私か~~」彼は遠い昔を振り返るように小さく呟いた。

「これでもね~私は近くの碁会所で2段で打っているのですよ」と話題を変えられた。

「そう それは凄い! 私はまだ初段ですよ」

「そろそろ飲みますか?」

「いいですね」ということで新しい焼酎の一升瓶を両手に持って来て出す。

「あれ?日本酒は?」

「ええ 私も今は焼酎にかえましたよ」

「身体にいいというのでね」

「そうですか・・・」

そのまま、お互いにコップになみなみと注ぎあい軽く乾杯してゴクリと飲む。

「美味しいな~何処の・・・」と彼は焼酎の一升ビンのラベルを見た。

「鹿児島か~ァ どうりで・・」

「久し振りですね・・・」

「・・・・」

ふと、かれが

「ペスタロッチか?」と呟く。

彼の目は遠くを見つめていた。

彼も私との論争は頭に残っていたようだ。

そもそもの始まりの原点はここにあったのだ。

私が例の知った被りの薄っぺらなペスタロッチ論を展開したことに、この長年にわたる論争のきっかけがあったのだった。

真面目な彼は私の拙い知識にも係わらず丁寧に応じたのだ。

その挙句が件(クダン)の論争?に まで発展したのだった。

あれから30数年 もう論争の歳ではない。

今の彼は昔の隙のない厳しい顔から何故か穏やかな顔をしている。

お互いに顔を見合わせると笑顔が浮かんでいる。

久し振りにいいお酒、いや、いい焼酎を飲んだ。

「明日の予定は?」

「鎌倉を歩いてみたい・・・」

「案内しますか?」

「いいです。気侭に歩いて電車で帰りますから・・・」彼らしい・・・。

翌日 早めに行きつけのお店で食事をとり、鎌倉駅の近くまで車で送った。

鎌倉駅近くの信号の前で止まり彼は車を降りた。

「これから、ここを気侭に歩きます」

お互いに

「気をつけて・・・良かったら今日もうちに泊まっていったら?」

「いや 帰ります」

「そうされますか・・・でも何かあったら遠慮なく来て下さい」

「そのときはお願いします さようなら」

彼は暑い夏の陽が指す鎌倉の段カツラの通りを横切り消えた。

いい日が過ごせた。囲碁も良かった。

なが~い “論碁”だった。

30年近くに渡る長い論碁だったな~~

“やっと終わったな~“ と振り返った。

暑かった今年の夏の忘れられぬ思い出であった。

今年の我輩の十大ニュースの中でもピカイチのニュースでもあった。

その方からは毎年 棟方志功なみの素晴らしい年賀状がきている。

来年の賀状がまた楽しみになった。

末筆で失礼ですが、ここにいらっしゃった多くの皆様に厚くお礼を申しあげます。
よいお年を迎えられることを祈念いたします。 Osamuこれは花押のようなものです。ご勘弁あれ



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6 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
来年もよろしくお願いいたします (bube)
2008-12-31 10:09:08
某I先生と、時々、うわさしております。
ちょっと、太極拳の日記が寂しいような・・・

3月は、大会出場だそうですね。
黄色い声で応援しますので、
加油!
返信する
Unknown (薬作り職人)
2008-12-31 10:27:26
長い友情というのは、
年取ってからでは手に入れられない大切なものですよね。
来年は私も四十、将来のことを考えながら生きて行きたいと思います。

今年はいろいろありがとうございました。
応援にはいつも力づけられていますよ。
来年も良い年になりますように!
返信する
現職時代 (沼じじ)
2008-12-31 10:28:52
若かった現職時代、転勤するたびに酒を酌み交わし公私にわたりお世話になった父母の方と今も賀状の交流をさせて頂いています。
思想信条を語り一途に歩んだ過去が懐かしいです。

良い年をお迎えください。
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bubeさん へ (osamu)
2008-12-31 16:06:41
あじゃ~~参ったな~。でも応援して頂けるとは嬉しいですね~ェ。
黄色い声ってどんな声でしょう?
こちらが興味深深です。

トウロ間違えそう
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薬作り職人さん へ (osamu)
2008-12-31 16:24:14
いつもコメント有難うございます。 なにしろ今は半ボケ状態です。友人との繋がりはご無沙汰で細く見えても実は太いものですね~。
何年も年賀状だけで連絡がなくて思い出したように連絡がありますと受け取った時には、なんだか?年中連絡しあっている気持ちになります。共通の趣味として囲碁があったのがいいようでした。しかも棋力は互角のようです。

ご長男が凄く逞しく成長されていますね。お嬢さんも可愛くなられピアノの腕も急に上げられ来年はまた、楽しみですね

皆さんいいお正月を迎えられますように祈ります。
来年も本年同様によろしくお願いいたします。
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沼じじさんへ (osamu)
2008-12-31 16:37:56
超プロの沼じじさんを指しおいて教育論をぶち上げるのは甚だ僭越なことでしたが、何しろ始まりが30年近く前で私もまだ40才台で生意気盛りでした。
お互い意見は違っても蟠りなく言えるのがいいです。
囲碁のあとの酒盛りもいいですね。
何時も飲み過ぎて翌朝は何を喋ったか?忘れています。千葉からは車で2時間くらいでスキー場に行けると言っていました。スキーの腕は1級とか?自信たっぷりのようです。今年は雪が少ないようです。

来年も本年どうように宜しくお願い申し上げます。

いいお正月を迎えられますように・・。
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