3日4回観てきて、大体の感想を少しずつ書き留めたものをまとめてアップします。
なお、清水ジュリエットは予定していた日に休演だったこと、また大貫死はスケジュールの都合上持っていたチケットは
身内に譲渡したので主なプリンシパルではこのお二方については感想はなしです。
また、感想はあくまでの一個人の趣味嗜好にすぎませんし、違う感性の方もいらっしゃるでしょうが感じ方に正誤はありません。
ご覧になるあなたのご意見と異なったとしても、悪しからずご了承くださいませ。
それでは以下、キャスト毎に感想をまとめてまいります。
<城田ロミオ>
特に歌唱力で前回以上の安定感を見せ、安心して見られました。総合力の高いロミオだったと思います。
一幕では仲間たちとの友情を屈託なく、またジュリエットへの愛を含めて幸福感溢れる様子を体いっぱいで演じたからこそ、
二幕の悲劇性がより引き立つように思います。
4Starsを経て歌唱力で進化を遂げつつも、実年齢よりも10歳近く若い役どころをみずみずしく表現できていたのではないでしょうか。
惜しむらくはダンス。世界の王でのダンスは、恵まれた体型、中でも長い手足が活きるようにもっと大きくメリハリのあるダンスで
魅せてくれたら更に良かったなと思いました。
<加藤ティボルト>
歌手活動はともかくミュージカルのプリンシパルとしての経験値はそれほど積んでいないはずと記憶していますが、それでも
強さと大人の色気が漂う魅力あるティボルトでした。ジュリエットへの愛を静かに秘めていながら、自らの置かれた立場へのやるせなさなど、
苦悩が存分に伝わってきます。ソロは高音域など難しい曲がありますが、うまく歌い上げていたと思います。時折見せるシニカルな笑みも
ティボルトの複雑な内面を奥行き深く見せてくれました。加藤ティボルトからは「苦悩と絶望」を特に感じ取れたように思いました。
<フランクジュリエット>
前回初演公演では初々しさと共に新人ならではの不安定さも目立ちましたが、再演までに他の舞台での経験も積んだこともあり、
初々しさはまだ少し残しつつも、ご本人の言うような強い(意思を持った)ジュリエットが健気さや一途さと共に表現できていたと思います。
まだ本当に若いだけあって、成長著しいのが本当に頼もしく、安心して見ていられるジュリエットになって帰ってきてくれてとても喜ばしく思いました。
特に歌が安定して外れずに歌いながらも、しっかり感情が乗せられてこちらに伝わってくるのが心地いいですね。
今後も別のステージでの活躍を期待しています。
<尾上ベンヴォーリオ>
梨園の方のミュージカル歌唱に興味津々で拝見しましたが、安定・安心して聴ける歌唱でした。それに加えて、一幕は狂言回しを彷彿とさせるような
テンポの良さでメリハリよく台詞運びが進み心地よく耳になじみました。一幕がコミカルな演技なので、強いて言えば二幕でもっと悲壮感を強調して
頂けると(「どう伝えればいい」など)いいような気もしましたが、概ね満足していますし素敵でした。
<平方ベンヴォーリオ>
前回とは違う役での登板となりましたが、想像以上にしっくりきました。心なしか、前回の浦井ベンと演技プランが似ているように思えます。
(真似しているというわけではないですよ)歌は安定していて耳になじみましたが、若干台詞を急ぐ傾向にあるのか聞き取りにくい時がありました。
私の耳の問題もあるかもしれませんが、滑舌ももう少し明瞭だと台詞が聞き取りやすくて助かります。総体的には尾上ベン同様安定した歌と演技でしたね。
<水田マキューシオ>
まだ舞台経験が浅く若い役者さんですが、期待以上に健闘しておられたと思います。若さゆえの暴走が、フレッシュな演技で表現されていたのでは
ないかと思います。歌唱力に関しては、もっと経験を積んでいけばさらに伸びるかと。
余談ですが、大公と似ていないせいもあるのか甥にはさっぱり見えないのがなんともはや。もちろん水田さんが悪いわけでは全くなく、見た目の印象の
話です。まあどうでもいいですね。
<東山マキューシオ>
悪いことを悪いと分かっていてやってしまうマキュという印象を受けましたが、なぜかこちらは背反するイメージなのに大公の甥に見えました。
理由は全くわかりませんが、単に雰囲気の問題でしょうか?
歌はもちろんですが、演技や細かい所作にも少しの余裕が感じられました。
<中島『死』>
静かに、時に激しく本当に人外の雰囲気を存分に発揮する「死」ですね。個人的に好みに合うのか、かなり目を引かれました。
相変わらずピルエットがぶれずに綺麗で素敵な舞踊を見せていただきました。この方だけはカテコでも「死」のまま(人間に戻らない)のが
ちょっと面白いですね。中身も個性的な方なのかもしれません。
<宮尾『死』>
もちろん綺麗に、かつダイナミックに踊れているのですが、不気味さを感じさせる「死」にはあまり見えなかったような気がします。
あくまで抽象的な存在であり、観客の受け取り方にゆだねられるキャストなので私の感性と合わなかっただけかもしれません。
ただ、不満なのかというとそういうわけではないです。ダンサーも個性が色々だなと思った、それだけのことです。
スケジュールが合わないので見られませんが、Kバレエで白鳥に出演されるらしいので、関心を持った程度には好感を持ちました。
<古川ロミオ>
一言でいうならば「幸薄ロミオ」。どことなくつかみどころのない印象でした。確かにロミオとしてはこれもアリで、それだけに二幕での
悲劇的展開に説得力がありました。時々声量が落ちてしまうのが残念ではありますが、2012年のルドルフ役(「エリザベート」)の時よりも
更に経験を積み、期待以上に検討されていて素敵なロミオだったと思います。
<柿澤ロミオ>
期待通りの歌唱力には満足しています。予想外にも「世界の王」でのダンスは3人のロミオの中で一番シャキシャキ踊っていたように
見受けられたので驚きました。彼の場合は一幕での歌や踊り、仲間との芝居に説得力を感じました。全体的にポテンシャルの高さは
十分に魅せて下さったと思います。
<城田ティボルト>
ラスボスと言っていいような存在感の大きさに圧倒されました。恵まれた体躯のおかげもあるのでしょうが、一対一だと歯が立たない、
キャピュレットの女たちが言うような「頼りになる男」像としては説得力がありました。ロミオとの演じ分けはどうかと興味を持ってみましたが、
見事に演じ分けできていましたね(もちろんそうでなければ困惑しますが)いつ切れるともわからない危険な男、という評はこちらの方が
より危険度が高そうに見えました。一歩間違うとチンピラかと。しかしその一方で秘めた思いが全く報われないことに対する怒りや
悲哀も感じさせてくれました。
<その他プリンシパルについて>
新しくなったロミオママは前回キャストよりも強い歌唱でジュリママと堂々と渡り合えてよかったと思いつつ、衣装がそのままなのが
残念でした。前の方には合っていても、今回のママにはちょっと…。
その他、石川、涼風、ひの、未来、安崎各氏らベテランが今回もいい仕事をして下さったと思います。若手プリンシパルが生き生きと
動き回るのをベテランが脇で支え要所要所を締めて下さるからこそ、単に若手が暴れまわるだけの舞台にならずに済みます。
特に3人のロミオに少しずつ異なるアプローチをしていた未来さん、安崎さんの演技にはコミカルな中にも緻密な計算が見て取れて
さすがだと感じ入りました。
演出やチケットの売り方など、運営や裏方には少々不満はあるものの、舞台そのものやキャスト陣には概ね満足しています。
このまま大阪千秋楽まで、これ以上のけが人が出ることなく無事終幕できるよう祈りつつ、個人的な感想をしたためさせていただきました。
以上