歌うように語ろう

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レディ・ベス観劇雑感

2014年05月04日 | 観劇関係

クンツェ&リーヴァイコンビによる新作ミュージカル「レディ・ベス」を観て参りました。

プリンシパルの簡単な感想とともに、演出やストーリーなどについても少々語ってみたいと思います。

あくまで一個人の感想なので、お読みになる方と感想は同じとは限りません。そこは感覚の相違ということであしからずご了承ください。

 

さて、私は一応メアリー以外のプリンでWキャストは両方観たのですが、それぞれカラーが違ってそこは興味深く観劇できました。

まずはベス。どちらの役者さんも私にとっては初見(声優ファンでも宝塚ファンでもないので…)でまっさらな目で見ました。

その上での感想としては、平野ベスは歌で押し切る勝気なベス、花ふさベスは芝居とオーラで君臨するベスという印象でした。

平野ベスは期待以上に歌唱部分については良かったと思うのですが、若干やんちゃで勝気さが勝って見えました。

それが悪いというわけではなく、そういう個性として面白く拝見しました。

一方の花ふさベスは一幕では少し歌が弱いかなと思ったのですが、二幕にかけてどんどん意志を示すとともに盛り上がりを

感じました。ややおとなしげな雰囲気からより一層の数奇な運命を裏付けるような芝居だったと思います。

体格は平野ベスより大きいくらいだと聞いていますが、きゃしゃで小柄に見えるのが不思議でした。可愛らしさの中にも

気品と気高さをアピールする「レディ」らしさを感じました。

 

山崎ロビンは安定の歌唱力で聞いていて安心する歌声でした。花ふさベスとの組み合わせで観劇したのですが、ぐいぐいとベスを

引っ張っていくように感じました。そしてどちらかというとクールなロビンに映ったのが意外でしたが、終始危なげなく新作と言えども

魅せてくれました。

加藤ロビンは見た目だとクールなのですが、芝居に入るととても情熱的に感じました。歌唱は以前よりもさらによくなっていると思います。

滑舌がもっとよくなり歌詞が聞き取りやすいともっといいなと思いましたが、私が聞き取りがあまり得手ではないからゆえの感想かもしれません。

 

メアリーは上記の通り未来さんのみ見たのですが、風格や威厳からしても英国女王として支持されていてもおかしくない気品と説得力を

感じる歌と芝居でした。特に威圧感さえ覚えるオーラで、強引ささえなければもっと民衆がついていったのでは…とも思ったり。

実際史実で今まで「ブラッディー・メアリー」として批判の的だったのが歴史を見直そうという動きの中でまた違った見地が出ているとか。

病を得て若い夫には去られ、彼女も孤独にずっと耐えていたのだと二幕後半では哀愁を漂わせ歌い上げます。考えてみれば

彼女も父王や歴史の流れに翻弄されていたのですよね。

 

そしてメアリーが生涯忌み嫌ったベスの母アン・ブーリン。和音さんの歌は安定して聞けましたし彼女自体には文句はないのですが、

亡き母としての出番がちょっと多すぎるかなと感じました。個人的に父王ヘンリー8世の言い分を一曲でもいいので歌に託して聞いてみたかった

と思うのですが、これはたぶん少数意見ですかね(笑)

 

フェリペ王子は出番の割には思ったよりも個性の違いが出たような気がします。

平方フェリペはそれほどはじけず冷めた目で女に手を出しつつ俯瞰で周囲を見ているように感じさせてくれました。ベスへの介入も考慮の上という

クレバーな王子と言ったところでしょうか。

一方の古川フェリペは周囲を引っ張りまわす印象。平方さんも歌が良くなっていましたが、古川さんも更にうまくなりましたね。安定感が出てきたように

思います。芝居では、本当に女好きで好きなようにふるまう自由人の雰囲気が特に感じられました。

 

キャット・アシュリーの涼風さんはいつも通り安定した歌唱でした。地味目の役どころなのであまりオーバーアクションな演技も出ずよかったです。

 

家庭教師のもう一人、ロジャー・アスカムは石丸さんと山口さんでこれまた大きく印象を変えているなと今日深くそれぞれ拝見しました。

山口ロジャーは父のような包容力を感じさせる柔らかな歌声と余裕を、石丸ロジャーは優れた教師として知恵を授けるいかにも家庭教師らしさを

芝居の流れの中で聞き取りやすい歌で表現していたと思います。

 

ガーディナー卿の石川さんはコミカルな演技と悪役然とした迫力のある歌で見事にメリハリがついているのがさすがでした。いつもしっかり脇を支えて盛り上げて

いく仕事ぶりには安心感と信頼感を持てますね。

 

そして、ここからは歌や芝居の演出などになりますが、楽曲自体は英国風やスペイン風も織り交ぜつつ悪くないなと思いました。

しかし、演出やストーリーの流れの中で疑問に思うところもいくつかありました。その一つが上記のベスの母アン・ブーリンの出番の多さでもあるのですが、

他にも気になったことを以下にいくつか書き留めていきたいと思います。

 

まずはベスとロビンの恋の顛末の描き方です。恋に落ちる流れも若干強引に感じたのですが、それ以上に引っかかったのがロビンとベスの逢瀬です。

バルコニーでのやりとりにものすごく既視感を覚えます。そう、ロミジュリにそっくりなのですよね。その後悪夢を見て飛び起きる(ここはロミオとベス、男女逆ですが)

ところまで似ています。私が何度もロミジュリをミュージカルで見ているせいもあるのでしょうが、ここはすごく気になりました。

 

それと、ロビンへの想いと王座の間で揺れ動く心情はもっとじっくり描いてほしかったですね。また、二幕最後の王座に就くベスの姿はもっとスポットライトを

当ててほしかったですし、ロビンへの思いがまだベスの中で未消化で残っている設定にせよ、終幕はもっと盛り上がるハッピーエンドらしい演出が

欲しかったです。盛り上がる楽曲や大きな歓声などがあればと、正直物足りなさを覚えました。

 

今回の日本公演が初演(ワールドプレミア)ということになりますが、もし海外で上演されるとしたらどんな演出でどういう評価になるか気になります。

いくつか要望も書きましたが、私はそれなりに楽しめたと思います。ただ、どうしてももう一度無理をしてでもまた見に行きたいかと問われると、

うーん…?と考え込んでしまうような舞台でもありました。

役者さんたちにはほとんど不足は感じなかっただけに、そこは残念に思います。

でも、新作ミュージカルを見るとき特有の新鮮な気分を味わえたことは良かったと思っています。

 

以上、簡単ですが個人的な所見を書き記しておきます。

 


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