続いたネタ6 GATE~夢幻会、彼の地にて戦いけり
アメリカ合衆国 ホワイトハウス
「で、日本とインペリアル・ジャパンはようやく異世界で能動的に動き出したのか?」
「大統領閣下。自衛隊の司令官ハザマ中将に慎重な上に、
帝国日本側のクリバヤシ中将もまたこの世界で海兵隊を硫黄島で苦しめたように守勢に秀でた人物です。
それに前に説明したように、門のせいで補給はトラックのみゆえ物資の備蓄をしていたのでしょう」
ディデル大統領の質問にクリアロン補佐官が答える。
「補給が限られるゆえに展開できる兵力は常に限られ、
異世界で軍を展開し目的を達成するのは用地要点を支配するしかない、か。
成る程、自衛隊とIJAは合理的な判断を下しているようだ……どこぞの馬鹿共と違って」
忌々しげにテレビ移る大日本帝国打倒と解放を訴える大規模なデモを見る。
門の向こうに1945年の世界、そして覇権国家になった大日本帝国の存在は21世紀の世界に衝撃を与えた。
過去の地球、それも違った歴史を歩んだ世界。
その存在が証明されたことで物理学では盛んに議論が交わされ、
また、政治的経済的に新たな関係を結ぶことで得られる利益に色めき立っていた。
資本主義の親玉国家アメリカとして異世界と大日本帝国を新たな市場として迎え入れたかったが、
「アメリカは軍国主義日本を打倒し正義を達成せよ!」
「門の向こうのアジア解放し民主主義を輸出しよう!」
「日本の侵略主義の復活を阻止せよ」
「門を国連の監視下に!」
だが、カリフォルニア州のアジア系の住民から始まった反帝国日本デモがアメリカに政治的混乱をもたらしつつあった。
主にアジア系の住民が多く住むカリフォルニア州から始まったデモは今や首都ワシントンで万の規模になりつつあった。
「イラクやアフガンで苦戦していると言うのにこの上戦端を開く?
おまけに門は同盟国の首都にあるのだぞ!冗談もいい加減にしろ!!
さらに言えばこのデモの背後にはレッドチャイナに裏切り者のキムチ野郎が関わっているのだろ!?」
「はい、CIAが昨日報告したように表向きNGO団体等が主導していますが、
資金並びに人員に中国と韓国の情報当局が関与しているのは間違いありません」
デモは民主主義国家では認められた神聖な権利であり、
例えそれが政府に抗議するものだとしてそれは認められる。
が、若しもそれが敵対国による情報戦なら許せるはずがない。
しかもそのせいで政治的混乱を呼び起こしているのだからなおさらだ。
「裏で操っている人間を始末すれば何とかならないか?」
「その件について目下監視等を強化していますが…。
デモ自体はここまで大規模になると流れを止めるのは難しいかと」
「ファック!!」
足元のゴミ箱を蹴り飛ばす。
つでといばかりにしばらく何度も踏み抜き鬱憤を晴らす。
「……ああ、すまない。見苦しいところを見せてしまった。
まずコリアについては同盟国として懇切丁寧に釘を刺しておこう。
我が国でチャイナと組んで一体何をしているか、懲りなく来るあの女に聞いてみよう」
「チャイナについては?」
「ワシントンの奴らの大使を呼びつけ抗議する。
最もコウモリ野郎より遥かに面の皮が厚い連中だ。
大使どころか首脳会談でも自分の事なぞ知らぬ顔をするだろうがな」
過去の事をしつこく穿り返す女性大統領と、
自身をアメリカと並ぶ大国と自負して止まないアカの面を思い出し苦い顔を浮かべる。
「門は宝だ、過去の違う歴史を歩む地球は我がアメリカが欲する未来の市場だ。
あのファンタジー世界は1から全てを開拓せねばならないが、あそこには購買力を有する消費者が大勢いる」
なるほど確かに元凶であるファンタジー世界は資本主義社会の食事となりえる。
だが、資本主義の食欲は旺盛でせいぜい中世レベルの文明を相手にするには腹が満たされない。
それに見合うだけの水準まで引き上げるまで手間暇かける必要があり、金銭と時間がかかる。
対して約半世紀前とはいえ、そこにはそれなりに近代化された消費者を抱えている。
嬉しいことに相手の勢力圏は広大で、今後も発展を続けることが約束されている。
例え相手が違う歴史のアメリカを滅ぼしたとしても彼らの領域に入り商売をすべきである。
「ゆえに我がアメリカはインペリアル・ジャパンとは親しい関係を結ばなければならない。
それを旧大陸に赤熊はもちろんチャイナに蝙蝠野郎に邪魔されてたまるか、私は今歴史の基点にいるのだから」
「おっしゃる通りです、大統領。
ここでインペリアル・ジャパンと親しい関係を結び、
アメリカに利益を齎せば間違いなく貴方の名は歴史に残るでしょう」
「そして私の支持率も不動のものになる、な」
補佐官の言葉に目先の目標を付け加える。
ディテル大統領は具体的な成果を国民に示さねばならない苦しい立場にあった。
「では手始めに大使として赴任しているヨシダとはより積極的に接触すべきかと考えます、
次に日本はインペリアル・ジャパンとの首脳会談も予定しているので、それに合わせて我が国との首脳会談も行うよう準備すべきです」
「ふむ、常道であるな。
当面はその方針で行こう。
国内向けには経済効果を宣伝することで抑えるとしよう」
そうしてこの話を終え、
補佐官から、続いてカナリア諸島の調査報告に耳を傾けた。