その後、敵との接触を避けるために森の中を歩き続けた。
雪がある上に獣道なため疲労したが魔王の提案で行李を運ぶための橇を作ったお陰で、
道中で行李を放り出すようなことはなく、引き連れた騎兵砲も含めて無傷で後退できた。
もっとも、原作通り天龍と遭遇したため大隊への帰還が遅れてしまったが。
で、だ。
「顔が微妙だからそんな報告が出るのか、若菜大尉」
大隊本部に帰還後。
帝国軍接近の報告、そして天龍遭遇の際に言われたのがこれだよ、おい。
おまけに顔が微妙とかパワハラだぞパワハラ、訴えてやる!
「なんだ、文句でもあるのか?」
「いいえ、まったくございません」
だが悲しいかな軍隊ではそんなことは言ってられない。
ちくしょう、若菜フェイスだからなぁ―――。
「まあいい、貴様は顔こそ微妙だが天狼会戦での撤退準備進言。
そして今回は中隊を敵からも味方からも失わずにここまで来た点は褒めてやる」
へいへい、どうもー。
そして、それはツンデレなのか?
オッサンのツンデレなんて誰得よ?
「今後の方針について、
3刻後に指揮官集合をかける。
それまで精々中隊の面倒でも見ておけ」
「はい、了解しました」
「で、新城中尉。中隊は?」
「疲労が重い兵を優先して屋内で休息を取るように図りました。
なお飲食物の配布、弾薬を筆頭とする補給物資の分配に関しても完了しました」
困ったときに魔王様こと新城殿は完璧な仕事をしてくれた。
補給は一見戦うことよりも楽そうに見えるが、財布の紐が硬い補給担当の人間との折衝。
面倒で細かい書類上の手続き、などなどと面倒くさいことこの上ない。
そんなわけで、有能な人材活用の名の下の事実上の丸投げで私は楽が出来た。
できる部下がいて私は鼻が高いよ!
えらいぞ、新城。百万年無税。
「ところで、中隊長」
ん、何かね新城君。
「今後大隊はどのような方針を採ると思いですか?」
なんか変なことを聞くなー。
いや、自分の命が掛かっているからそういうことぐらい聞くか。
「んー。方針についてはこれから話すと言っていたけど、
味方撤退の時間稼ぎを最低2日しなきゃいけないから夜襲だろうな」
多勢を相手にする際の戦術としてこれしかない。
原作では最低3個大隊。つまり3倍の数の敵を相手にせねばならないんだよなぁ…。
「貧乏くじですね」
「まあ、そうなるな」
戦力をきちんと保持しているのがウチだけだし。
「まあ、それが軍隊という奴さ。
私達が出来ることは生き残る算段をするだけだ」
「はい」
というか、次は本格的な戦闘だし、魔王様ほんとうによろしく頼む!
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