「征途×艦これ」短編小説
某架空戦記とのクロスオーバーです。
誰もが一度は妄想したであろう構成ですが形となっているのはこれだけです。
ぜひ見てください。
(まぁ、また会えるなんて)
と、思わず笑みがこぼれた。
その将官は湾岸戦争時に彼女の艦長を務めた人物だった、そして
(あの人のご子息でもある)
今や伝説となっている沖縄沖海戦、
その主役となった〈武蔵〉艦長の次男だった。
(また一緒に戦えるのね)
どうやらその将官は〈やまと〉を含める第八護衛隊の司令として着任したらしい。
〈やまと〉は(不謹慎かも?)と思いながらも、胸の高まりを抑えることができなかった。
かつての戦いの末期、〈大和〉は北海道に侵攻してきたソ連軍と勇敢に戦い、石狩湾海戦では戦艦三隻を沈めた。
それでも北海道分割は避けられず、そのうちソ連占領地域は「日本民主主義人民共和国」として建国され(彼らにとっての)真の道を歩みだした。
こうして戦後の日本列島は、伝統的な「日本国」と「日本民主主義人民共和国」通称「向こう側」の二つの国家が存在する事となり、
ドイツや韓国などと共に分断国家として戦後世界を歩む事になった。
冷戦とも無関係ではいられず、北海道戦争、ヴェトナム戦争、
そして湾岸戦争で直接・間接的に南北日本は干戈を交える事となり、はや五十年が経過しようとしていた。そして・・・
披雷した箇所の復旧も終わり、函館港から出撃可能となった。
目標は樺太強襲・・・「向こう側」の戦略打撃軍の聖域、IRBM基地の破壊だった。これが失敗すると
(私たちの)
日本が反応弾攻撃を受ける事になる。絶対に失敗の許されない作戦だった。
やがて函館基地隊より発光信号が届いた。「貴隊ノ武運ヲ祈ル」
ほどなく〈やまと〉から返信が送られた。「誓ッテ戦果ヲ掲グ」
近年まれにみるやりとりに、
隊司令は周囲からの注目を集めた。
〈やまと〉はそのやりとりを見て思った。
(かつての戦いで、私は武蔵との誓約を守る事ができなかった。
そのせいで日本は南北に分断され、五〇年近くもの時間が経ってしまった。
本来ならとっくに退役してもおかしくない私も無理やり改造を重ね、
イージスシステムなんて武蔵やかつての聯合艦隊のみんなが思いもしないような兵器を積んで、いまだに現役として生き延びている。
なんのために今ここに私はいるの?今こそ武蔵との誓約を果たすときが来た)
函館港から出撃した〈やまと〉は沖合で僚艦と会合した。
打撃護衛艦〈あきづき〉、ミサイル護衛艦〈はたかぜ〉、護衛艦〈あさぎり〉、〈はつゆき〉の四隻だ。
名前こそ帝国海軍時代のものを引き継いでいるが、彼女らは皆戦後生まれの娘たちだ。
「この海域の安全は確保しました。私たちも準備完了・・・やまとさん、ばっちりです」
護衛隊を代表して〈あきづき〉が片目をかわいらしく閉じながら報告した。
迎えられた〈やまと〉は居ずまいを正し、そして厳かに宣言した。
「やまと、推して参ります。第八護衛隊、我に続け」
こうして、最後の戦いが始まった。
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