着付けの気づき

着付けの個人教室を行っている先生が、着付や着物に対するこだわりの思いを中心に語ります。

思いを受け継ぐ着物

2008-02-03 11:29:09 | 出張着付
先日、美容室で濃紫の色留袖の着付けを頼まれて行ってきました。
お嬢様の結婚式に出席されるとのこと。

「この着物、もともと私の祖母のものなのですよ。私の母が結婚するときに祖母が誂えて袖を通し、私が結婚する時に私の母が着て、今日は私。結婚式が終わったら娘に譲ろうと思います」
とお客様。
大正時代に作られたというそのお着物は紋が大きく、時代を感じさせる重厚なもの。代々の方の思いが一杯詰まったそのお着物。着物ならではですね。お嬢様も是非大切にして欲しいと思いました。

私の結婚が決まった時に母は、
「着付け教室で折角着られるようになったんだし、着物を誂えてあげよう」
と言ってくれました。
確かにうれしいけれど、決して安いものではないし、
「そんなことしてくれなくてもいい」
と言った私に、
「あんたが着て、また娘でも出来た時には譲ってあげなさい」
と母。

今でもお気に入りのそのピンクの地色の訪問着は、私の結納、友達の結婚式、子供の幼稚園や学校の卒入学、お茶会・・・折々に何度も袖を通してきました。
その着物には初め、赤の伊達襟とピンクの帯揚げ、帯締めを合わせてきたけれど、歳を重ねるうち、伊達襟や帯揚げ、帯締めも黄緑色とか、帯を地味目にしたりしてコーディネートしました。同じ着物でも小物遣いで全く違う印象になるから不思議なものです。
けれど、そろそろ私には派手になってきたかしら・・・

思い出の沢山詰まったその着物。娘に譲る? いやいや私の子供は二人とも男の子。なかなか世の中、そんなにうまくいかないものですね。


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川口着付個人教室
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されど、着付け教室

2008-02-02 13:14:39 | 着付け教室
図書館で「着物中毒」(中島梓著)を借りて読みました。

ご本人、とても着物がお好きな方で、ほとんど毎日を着物で過ごしていらっしゃるとのこと。
中島氏のお母様がそもそも着物好き、子供の頃から着物を着せられ、目にし、
「気がついたらひとりで着ていた」
とおっしゃる。そんな方がいらっしゃるのですね。

私は、というと、実家に着物は殆どなく、私が着付け教室に通うことになり、練習用の着物、帯を持ってくるように言われても、そういったもの自体がない。母がお嫁入りの時に仕立ててもらったという色無地と袋帯は、練習用にはもったいない代物。
「何もないのに何で習うことにしたのよ」
と母。
当時、古着屋さんで安く購入するような知識もなく、呉服屋さんで一番安いポリの着物と帯、小物一式を買って、それでも一生懸命練習したっけ。

「洋服の着付けは習う人なんて誰もいないのに自分ちの民族衣裳を着るのに、こんなに着付け教室に通わなくてはいけないっていうことが、そもそもやっぱりどう考えてもおかしい、昔の日常着としての着物をおいだしちゃった私たちは、着物を着付け教室で習う特殊技術にしてしまった」
と中島氏。

確かに、昔の人は着物で家事もすれば雑巾がけもしてきたのでしょう。そして中島氏も日常にもっと着物を着ようとおっしゃる。けれど、こういうお仕事をしている私でも、掃除の時はジャージにトレーナーといった格好、自転車に乗って買い物に行くのはジーパン姿・・・。洋服と着物を明確に着分けています。
引っ越す前まで通っていた茶道の先生も、お茶のお稽古の時は着物を着るけど日常は洋服。着物はやっぱり動きにくいとおっしゃっていたなあ。
残念ではあるけれど、今後、着物が好きな私たちがどんなに頑張っても、洋服が着物に再びとって替わられるなんてことはないと思うんです。

でも日本の民族衣裳である着物を見て素晴らしいと思う人は沢山いるし、せめて冠婚葬祭の時位は着物を着たいと思う方は多い。
私の教室に来られる生徒さんも日常的に着物を着たいとおっしゃる方よりも冠婚葬祭や、お茶会など、特別な場に自分で着られたらいいと思う方が殆ど。

そうなると、ただ普段着としての着方だけでなく、より綺麗に、そして着崩れのないような着方を学ぶということになるのだと思います。洋服だってドレスやスーツなど礼装用には下着やファンデーションにこだわる方が多いのと同じで、着物だって、礼装用には体型の補正は大事だし、着物と帯、小物との合わせ方、またTPO・・・。身近に教えて下さる方が居られなければ分からないと思います。
だから、あんまり着付け教室をバッシングしないで下さい。私は着付け教室に通うことで着物が着られるようになったし、これからも着物の素晴らしさを伝えていきたいと思っています。


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