着付けの気づき

着付けの個人教室を行っている先生が、着付や着物に対するこだわりの思いを中心に語ります。

「質」と「量」の問題について

2024-10-02 17:38:58 | 着付け師

たまたまSNSで、大阪府の吉村知事と、サッカーの本田圭佑さんとの対談の一部が流れてきました。

その時語られていた内容は「質」と「量」の問題についてで、本田さんの発言を要約すると、

「量をやってない人間に質を語る権利はないと思っている。サッカーもそうだが、思いっきりたくさん練習することもせず、怪我もしてないような人間は、どのフェーズまでいったら疲れて怪我するのかもわからない。いっぱい動かないと質なんてわからない」

というものでした。

『確かに…』

私は、がむしゃらに着付けの練習をして様々な現場に出続けることで技術を磨き、漸くある程度自分の技術が定着しました。そして、どんな現場でも仕事上困ることがなくなってきて、仕事のやりやすさや楽しさを感じることが多くなってきたと思っていました。

本田さんが言うところの「質」を語るのはおこがましいかもしれませんが、それだけの「量」をこなしてきた自負はありました。

ですが、ここ数年で私の身体は悲鳴をあげ始めました。

左右の手の腱鞘炎で手術はするわ、右肩の腱板断裂で手術はするわ、現在は左肩の痛みでずっと不調続きです。つまり、本田さんがいうところの、より良い「質」を求めるために沢山の練習や仕事「量」をこなし過ぎてしまったのかもしれません。

私を診察されたどこの病院でも、それらの不調の原因は「加齢」と「使い過ぎ」と言われました。

「加齢」しかり。「使い過ぎ」しかり。自分自身でも思い当たる節がありすぎます。ここまで使うと身体に故障が出てくるのだな、と思ったのでした。 

今の時代なら、YouTubeなどをはじめとするSNSなどでは簡単に、しかもタダで着付けの技術の情報を取りに行けるので、それらを利用して量を伴わず質を改善してしまう人が沢山いらっしゃるかもしれません。私自身、自分なりに苦労して編み出した着付けの技術も、生徒さんたちには簡単に惜しみなくお教えしています。私の時代はSNSもなく、長い間現場の技術を教えてくださる方も居られず、

「技術は見て盗め」

などと言われる時代でしたから、仕事に集中すれば見ている暇などなく、結局わからず、悔しい思いも沢山しながら自分なりにトライアンドエラーを繰り返して技術を習得してきました。

ですが、

「簡単に教えてもらえたもの」は

「簡単に忘れてしまう」

こともあるな、と思うことも正直あります。私のように

「身体を壊すまで質を見極めるために量をこなせ」

と言うことはできませんし、それはある意味過りです。ですが、やはり、苦労して獲得したものというのは何事にも代えがたいものがあることを実感しています。

ですので、ある程度の量をこなした人でないと質を見極められないし効率性も上がらないのではないかという本田さんの意見には激しく同意します。

質を上げるには一定量の継続は不可欠。でも私のように心身故障しないために、指導者としてはバランスを考えながらご指導することも、今後はより一層大事だと思っています。

 

川口着付個人教室
 http://www.wbcs.nir.jp/~yoko

 

 


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