着付けの気づき

着付けの個人教室を行っている先生が、着付や着物に対するこだわりの思いを中心に語ります。

もはや文化!? 女性袴とその着付け方について(その2)

2021-04-06 14:48:09 | 
3月が終わり、卒業シーズンも無事に終わりました。
さて、先日のブログで、女性の卒業袴の着せ付け方について、今までの王道ではないやり方での着せ付け方が登場しているということを書きました。
特に私が斬新だと感じた、背中の部分で袴の上から半幅帯の結びを見せるというやり方です。

↓こんな感じです

↓通常はこんな感じ


今まで写真や動画以外、生ではそのような出で立ちの方を見かけたことはなかったのですが、ついに先日お見かけしました。
「ん!?」
でも何か変! 
近づいてみると何と袴の後ろ紐がゆるいのか、袴の背がずり落ち半幅帯の結びがあらわになっているのでした。
↓こんなイメージです


裾ラインが落ちて床をこする形になっており、それにはお嬢様も気が付かれていらっしゃるようで、裾の後ろを持ち上げて歩きにくそうにしていらっしゃいました。
流石に私もこの状態をほってはおけない気持ちになり、ついついお声をかけてお直しさせていただきました。

そこで思ったことなのですが、前述の斬新や着付け方は、下手するとこのお嬢様のように着崩れていると思われることもあるんじゃないでしょうか?
このような考え方から私自身としては自ら敢えてこのスタイルをお客様に提案することは出来ないかな、と感じました。

いずれにせよ、このお嬢様を着付けた着付け師は、もっと根本的な技術を磨くべきですね。一生に一度の晴れの日を台無しにするようなこんな着付け方は如何なものかと思いました。

アレンジの鍛錬も大切ですが、基本はもっと大事です。

川口着付個人教室
 http://www.wbcs.nir.jp/~yoko

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もはや文化!? 女性袴とその着付け方について

2021-03-16 22:13:00 | 
私が大学に通っていた30年以上前は、卒業式だからと言って女学生さんたち皆が袴姿になるという時代ではありませんでした。

当時たまに見る袴姿のお嬢様について、私の大学のある先生は、こう仰っていました。
「お嬢様が卒業式に和服を着るなら、ミスの第一礼装の振袖を着られるなら兎も角、袴姿は本来ならおかしいと思いますよ、だって昔の女学生の普段着ですもの…。礼服ではないんですからね」

あれから時が流れ、卒業式に参列される女学生さんたちは殆どが袴姿となり、これが日本の伝統文化になっていると言っても過言ではない時代になりました。
その間私も着付け師になり、毎年卒業式に向かわれる学生さんたち沢山に袴の着せ付けをしてきました。

さてこのところ多くの着付け師さんたちが、インスタやYouTubeなどでこぞって袴紐の結び方のアレンジ画像やその方法などについて紹介されています。それらを見るにつけ、正直、こんなに崩して良いのかなあ…と少し違和感をもっています。
袴についても最近ではとても派手な模様が入った生地で出来ていたり、袴紐の生地も表裏で色柄が全く違うものになっていたりと、華やかなものが沢山登場しています。

普通の紐の処理の仕方↓


アレンジした紐の処理の仕方のほんの一例↓


まだこのくらいのアレンジならかわいいものですが、昔の女学生はこんな着方していなかったであろう、袴の背から半端帯の結びを見せて装着する方法までが登場してきました。
これは一体誰が考え出した着付け方なのでしょう? その斬新な着せつけ方には驚きます。

私の着付けの先生は、
「卒業式、入学式、結納、披露宴…などへの参列で着物を着用するお客様には、あくまでその場がセレモニーであることを重視して、着付け師は着崩すことや遊び心のある着付け方で目立った装いを提案すべきではないし、ご提供すべきてはない」
と仰っていました。

しかしながら最近見かけるこれらの紐の結び方のアレンジや、今までの王道ではない着方を、もしも着用するお嬢様たちがこぞって受け入れて、これが大流行するのであればこれが文化となっていくのかもしれません。いくら
「私の先生がこんな着方をすべきではない」
と仰ってましたと言ったところで、その着方を「良し」と思うお客様が「こうして欲しい」と仰るのであれば着付け師はある程度それが出来るようにしておかなければならないと思います。伝統的な着方も大切にしながらもファッション的な着方にも大きなアンテナを立てて日々の流行もチェックしなければプロとは言えませんよね。

お嬢様のご家族たちや学校サイドがどう思われるのかも気になるところではありますが、今後の動向を注意深く見守ることが大切になると思います。

本当にこの仕事は奥が深く、勉強には終わりがないな、とつくづく感じています。

川口着付個人教室
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帯幅について考える 「小学生が卒業式に袴姿で臨むことは悪いのか?」

2019-05-17 16:38:46 | 
前に当ブログで、半幅帯について最近のものは幅がありすぎるということに触れましたが、小学生の卒業袴の着せつけをさせていただいた際には、尚更それを痛感しました。

女性が帯を締める際、帯の下線(下のライン)は通常腰骨位置より上にしか締められません(それより下だと落ちてしまいます)。
今どきの半幅帯をお持ちになられたお嬢様の場合、帯の下線を腰骨位置に決めたところ、上線(帯の上のライン)はアンダーバストよりも必ず上の位置に来てしまいました。
今どきの半幅帯の幅が広すぎるからです。
これは痩せていてお肉のないお子さんや、背の小さいお子さんにとって、苦しくない訳がありません。
おまけに必然的に袴の位置も上過ぎることになりバランスもよろしくない仕上がりになってしまいました。

帯を適当な幅になるように折りたい気持ちにもなりましたが、帯に本来は付くはずがない位置に折り皺が入るのは良くありません。
何とも釈然としない気持ちになりました。

卒業式に小学生が袴姿で望まれることについては、華美である、お金がかかる、和服に慣れていないお子さんにとって所作が難しい(難しくないんですけど…)などの理由から問題視される方がおられます。しかしながらきちんと和装の知識を持った親御さんが、お母さまご自身やご親戚、お友達のお持ちの着物や帯など(勿論あればですが)をお子さんに用意してあげることができたならば、その日のために洋服を買い揃えるよりも実は余程安く済ませることが出来るのです。

私は着物の知識が無い方が増えて、何を(どんなものを)用意したらよいかも分からず、折角色々とお持ちであったとしても利用できるのかどうかの判断もつかず、様々な商業ラインに乗せられてしまうことこそが大きな問題なのではないかと思っています。

日常着としても着物が着られていた時代の人はお金がある人も無い人も着物を着ていた筈ですし、装う時もそうでない時も和服でした。
知識が無いがために日本の伝統的な民族衣装である着物が敬遠されたり果ては禁止されたりするのはとても残念なことです。(日本の)自分ちの衣服を否定することにもなりかねず、そちらの方が大問題だと思います。

日本人はもっと和服の構造やその着用の仕方についての基本を若い頃からもっと学ぶべきなのではないでしょうか。
そうすればもっと着物が身近なものとなり、日本の伝統も洋服と同じようにファッションの一部として根付き、賢く使うことが出来るのではないのではないかと思います。


川口着付個人教室
 http://www.wbcs.nir.jp/~yoko/
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