着付けの気づき

着付けの個人教室を行っている先生が、着付や着物に対するこだわりの思いを中心に語ります。

苦しくなく着崩れない着付け

2015-03-30 21:55:40 | 出張着付
3月に入るや普段のお稽古に加え、卒業式、結婚式など着付けの依頼が増え、多忙な日々を過ごしてきましたが、24日の卒業式の依頼を終えて、やっと一段落。ほっとしているところです。
生徒さんたちにも実践の場があり、それぞれに充実した日々だったと思います。
お疲れ様でした。

「より苦しくなく着崩れない着付けができないものか・・・」
私は自分が教わってきた着付けのやり方だけに満足せずに改善を求めて日々研究しています。
そんな中、3年程前から独自に確立した方法がとても好評となりました。生徒さんや着せ付けのお客様にも喜んでいただけていて、嬉しい限りです。リピーターさんも目に見えて増えています。

先日生徒さんと着せ付けをさせていただいたお客様のお話です。
お子さんの卒業式に参列されるお母様お二人の着付けを同時にさせていただきました。

私は着付けをさせていただいたお客様に、着物で過ごされた感想を毎回お伺いすることにしています。
今回もお客様それぞれにご連絡をしたところ、お二人とも
「着崩れも全く無く大満足でした。今まで着物を着た中で一番楽に過ごせました」
とお誉めのお言葉を頂戴でき、一緒に着付けをした生徒さんと大いに喜び合いました。
おまけにお二人とも
「入学式も是非ともまたお願いしたい」
と言われました。

「仕上がりが綺麗でない」
「着崩れてしまった」
「苦しかった」
私はこれらお客様を不快や不安にさせることを絶対避けたいと考えています。ただ今回のお客様にはお誉めのお言葉をいただけた一方で、
「全然着崩れなかったんですよ。でもあんまり楽すぎて逆に着崩れるのではないかと心配に思うほどでした」
と言われました。

思ってもみないお言葉でした。私の楽な着付けが逆にお客様を不安がらせてしまったのでしょうか?何とも難しいものです。

でもこれはクレームではありませんよね。
着物は昔の日常着。苦しくなく着ることは本来当たり前のことの筈です。
入学式もまた頑張ります。
どうぞ宜しくお願いいたします。

川口着付個人教室
 http://www.wbcs.nir.jp/~yoko/
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手作りの着物、思い出の縫い合わせ

2009-04-25 13:35:23 | 出張着付
もう1ヶ月程前になりますが、3月18日、私の次男の小学校卒業式がありました。
その日までに
「何とか自分で訪問着を作ろう!」
とチクチク針を動かしていましたが、式の二週間前に漸く完成させることが出来ました。

和裁の先生に教えて頂きながら仕上げましたが、そもそも訪問着を作成するなどということは私にとって初めての経験で、絹物を縫い合わせていくことがこんなに難しいものとは正直思いませんでした。
普通、和裁師を養成する学校などでは、まず運針の練習から入り、肌着、浴衣、ウールの着物、モスリンの長襦袢、絹の長襦袢、単の絹の着物をそれぞれ数枚作るというお稽古を積んでやっと絹の袷の着物というように進んでいくものらしいのです。ところが私の先生は、
「折角お子さんの卒業式というような着物を着る機会があるなら、それに向けて訪問着を作ったらどう? 運針は十分出来るようだし。大変だとは思うけど、私が応援するから」
とおっしゃってくれました。少しでも和裁の知識があれば、そんな考えは無謀なことと思うのかも知れませんが、そこは知らぬが仏、私も確かにその方が俄然やる気が出るしと、チャレンジすることを決意しました。

馬喰町にある某呉服卸店のバーゲンで、気に入った色とデザインの布を破格な値段で手に入れるところから始まり、縫ってはほどいて、お直しの繰り返し。
「♪三歩進んで二歩下がる~♪」
と歌いながら、お直しの繰り返し・・・
「でも確実に一歩は進んでいるんだから」
と先生に励まされながら、お直しの繰り返し・・・
やっと仕上がった着物を羽織ってみた時には、先生とお仲間からよく頑張ったと拍手が起こりました。
「本当に嬉しい!」
思わず私も自分で拍手をしていました。
でも私自身の頑張りを褒めてやりたい気持ち以上に、先生への感謝の気持ちで一杯になりました。本当に良く励まして頂きました。そして根気良く教えて下さいました。どうも有難うございました。

家に帰って、
「息子よ、君の卒業式にこの着物を着ていくよ」
と見せると、
「母さん凄いね。やっと出来たね!」
と息子。
何かを感じてくれているのでしょうか?

そして式当日、絶好の晴天に恵まれて式を迎えることが出来ました。
感無量。この着物に思い出がしっかり刻みこまれました。これからこの着物にどんな思い出が縫い合わされていくのでしょう。

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「手づくりの温もり」

2008-11-13 23:28:19 | 出張着付
先日、あるおばあさまの着付けをして参りました。お孫さんの七五三のお祝いだそうです。

とても上品なこのおばあさまは、ご自分の長襦袢に付いた半襟と帯の刺繍を指さして、照れくさそうにこう言われました。
「この半襟と帯、私が刺繍したものなのよ。今日の為に随分前から少しずつね。何とか間に合ったわ」
とても立派で素敵な刺繍にすっかり見とれ、お孫さんのハレを祝うおばあさまのお気持ちの深さに触れる思いがしました。

日本刺繍は随分前から習っていらっしゃるとのことでしたので相当の腕前なのでしょうが、「一日中刺してもこれくらいしか出来ないこともあるのよね」
と親指と人差し指で小さな輪を作って見せられました。流石にこれにはびっくりすると同時になお一層綺麗に着付けをしてさしあげなければならないと気が引き締まりました。

「今日みたいに身につける日にちが分かっていてその日までに仕上げなければならないと思いながら刺している時にはしんどい時もあるけれど、いつもはのんびり、マイペースで刺しているの。時間が出来た時にちょこちょこっとね。楽しいよ。少しずつの積み重ねで形になっていくから」

何だかこのお客様と私、気が合うと感じました。そういうところは私にも大いにあるからです。私もとにかく何かを作ることが大好きです。
そして、私は正に現在小学校六年生の息子の小学校の卒業式と中学校の入学式に備えて訪問着の作成に奮闘している最中なのです。
ついついそのことをお話しすると、
「偉いねぇ。あなた、手先が器用なのよ。今、何でもお金を出せば手に入る世の中だけど、手づくりの温もりってあるよねぇ。和裁も日本刺繍もそうだけど、若い人、やる人が少なくなっているでしょう。すたれなければいいなぁって思うわ。ものをつくるのが嫌いな人は何か作るのに身構えちゃって。でも好きな人は細切れの時間でちょこちょこ手を動かすのよね。貴方、まだ若いんだし、いろいろな事に挑戦してみられたらいいと思うわ」
有り難いお言葉。確かにそうですよね。

楽しく会話しながら着せ付けも終わり、お客様はご自身の着物姿を見られて、
「作品が出来て感動、着て感動ね。有難う」
と言われ、私の着付けにも満足していただいたようで、私自身も嬉しかったです。

「よ~し!私も頑張るぞ!」

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美容師さんの悩み

2008-08-04 22:27:57 | 出張着付
私がかつて着付けでお世話になった美容室の店長さんからこんな話を聞いたことがあります。
「1000円カットの店っていうのが最近沢山進出してきているけど、あれって、川口さんはどう思う? 髪の毛も洗わない、カットだけ、ブローもしないで、はい、さようならっていう店。うちの美容室のサービスに比べたら・・・そんなのでお客さん、満足するのかね?って思うんだけど、これがなかなかどうして、結構繁盛してるのよ。うちの店の近くにそんな店が出来ちゃって、正直お客さん取られてる気がして脅威なんだよね」

そして私も実際にそういう場面に遭遇してしまいました。
その安値の動機は、本業でもないので「あれば儲けもの」的なのか、折角学んできた技術が萎えないために「練習のためにやっている」のか良く分かりません。
確かに巷で着付けを頼もうとすると、かなり費用がかかるイメージがあり、安い値段で着せ付けしてくれるなら着せてもらおうかな?と思う方もおられるかもしれません。

では、巷ではなぜ着付け費用が高額なのでしょうか?

それは、着物をみんなが日常茶飯事に着るという現状にはないこと、そしてそういう環境の中で着付師がその職業を生業とするうえで、いつ、どんな時、どんな状態でも自信をもってその技術を提供するためには普段から相当の訓練をつまなければならず、片手間では出来ない仕事だからだと思います。

美容師である店長さんも、普段から技術が萎えないためにこの仕事にかじりつくしかないと言われ、その道一筋で頑張って来られた方です。丁寧な仕事をして、お客様に喜んで頂けることがやりがいで、その工程のどこを取っても、いい加減には出来ないのです。そして私の考え方も美容室の店長さんと全く同様です。

私の着付けの師匠さんは、
「技術の安売りはしないでね。貴方は相当の時間も労力もお金も費やして一生懸命勉強して来られたんでしょう? プライドを持って仕事をして欲しいのよ。着付け料が安かったら自分で勉強して一人で着物を着れるようになりたいと思う気持ちが生まれるものではないわよ。誰も着物を着る勉強をされなかったら、日本の民族衣装が廃れてしまうんじゃないかしら?」
とよく仰っていました。

「安いだけが価値?」
世の中、安いものに飛びつくのはある意味人間の本能なのかもしれません。確かに日用雑貨などの汎用的な工業化製品などにはあてはまるかも知れません(それでも品質次第ですよね)。しかし高度な技術をその場その場で相手に合わせて創り上げていく着付けの価値が値段だけなのでしょうか? それでも「安値」の逆風はそんなことお構いなく吹いてきました。

ただそんな中で私を支えてくれているのは、私の着付けを気に入って何度も使って下さるお客様達や、一生懸命な生徒さん達の存在、そして何より、さして儲からないこの仕事を、ただ好きだというだけでやっている私の気持ちを尊重し、認めて、続けさせてくれている主人の存在です。

私はこれからも様々な方に感謝しながら、自分自身の技術が廃れないように、安い技術に取ってかわられないように日々勉強していくつもりです。

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思いを受け継ぐ着物

2008-02-03 11:29:09 | 出張着付
先日、美容室で濃紫の色留袖の着付けを頼まれて行ってきました。
お嬢様の結婚式に出席されるとのこと。

「この着物、もともと私の祖母のものなのですよ。私の母が結婚するときに祖母が誂えて袖を通し、私が結婚する時に私の母が着て、今日は私。結婚式が終わったら娘に譲ろうと思います」
とお客様。
大正時代に作られたというそのお着物は紋が大きく、時代を感じさせる重厚なもの。代々の方の思いが一杯詰まったそのお着物。着物ならではですね。お嬢様も是非大切にして欲しいと思いました。

私の結婚が決まった時に母は、
「着付け教室で折角着られるようになったんだし、着物を誂えてあげよう」
と言ってくれました。
確かにうれしいけれど、決して安いものではないし、
「そんなことしてくれなくてもいい」
と言った私に、
「あんたが着て、また娘でも出来た時には譲ってあげなさい」
と母。

今でもお気に入りのそのピンクの地色の訪問着は、私の結納、友達の結婚式、子供の幼稚園や学校の卒入学、お茶会・・・折々に何度も袖を通してきました。
その着物には初め、赤の伊達襟とピンクの帯揚げ、帯締めを合わせてきたけれど、歳を重ねるうち、伊達襟や帯揚げ、帯締めも黄緑色とか、帯を地味目にしたりしてコーディネートしました。同じ着物でも小物遣いで全く違う印象になるから不思議なものです。
けれど、そろそろ私には派手になってきたかしら・・・

思い出の沢山詰まったその着物。娘に譲る? いやいや私の子供は二人とも男の子。なかなか世の中、そんなにうまくいかないものですね。


HPもアップしています。是非ご覧下さい。
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