着付けの気づき

着付けの個人教室を行っている先生が、着付や着物に対するこだわりの思いを中心に語ります。

フリーランスのデメリットについて

2024-09-13 15:41:36 | 着付け

先日インドネシアに赴任中の息子の家に初めて遊びに行きました。

既婚の息子には今年の3月に子供が産まれて、普段、息子は会社勤務中のお嫁さんと赤ちゃんと3人で暮らしています。お嫁さんは育児休暇取得中で会社のお仕事はしていませんが、会社からは給与の補填あるそうです。慣れない土地での子育ては本当に大変なのですが、自身の収入源があるというのは少しだけ羨ましいと思いました。

私が会社に入った頃は男女雇用機会均等法が施行されたばかりの時代でしたが、私が当時勤めていた会社も含め、多くの会社はまだ男尊女卑の部分が多かったです。それでも私は結婚して妊娠しても7ヶ月までは頑張って働いていましたが、出産後、保育園を予約することも至難の業でしたし、近くに支えてくれる親族も居なかったのでその後は会社を辞めることが自然な選択肢となりました。

結果専業主婦となり、子育てに専念することになったのです。

主人は、大方のサラリーマンがそうであったように朝早く出勤し、夜の帰りも遅かったので、家事と子育ては完全に私の担当となり、私自身が仕事に出るようなことは到底出来ない状況でした。当たり前の如く、私には収入がなく主人に養ってもらっていました。

学生時代までは男女も平等で同等に働くべきだと教育されていたのに、周りの環境は追いついていないし、何より、自身が社会と切り離されて、私は子育てと家事を無償でする以外は誰からも何も評価されず、社会の中では何も価値がない人間なのではないか、でもそうではない、私はここにいるんだと言える何かが欲しくて、もがきながら自分は

「川口さんの奥さん」

「〇〇くん(子供の名前)のお母さん」

以外の、社会とつながっているという証が欲しくて常に模索して過ごす日々でした。

そもそも今の着付けのお仕事はそんな葛藤の中で始めたのでした。

さて、現在私はその頃から続けてフリーランスの着付師、着付け講師として仕事をしています。30年近く一生懸命着付けの分野の技術や知識を磨いてきました。がむしゃらに育児も家事も仕事も頑張ってきました。

ですが、5年ほど前から更年期症状が出始めたり、3年前から『左右の手の指の腱鞘炎』そして昨年は『右肩の痛みから腱板断裂』をわずらったりしました(それぞれ手術しましたそして今度は『左肩の痛み』が発症していて治療中です。着物をきちんと着る、着せるということが意外と力仕事or体力勝負であったんだということを思い知らされます。

そして、悲しいかな、身体の不調の度に私の仕事が思う存分出来ないという状況になっています。私の仕事は実際身体を動かさないとお仕事ができない職種です。長い不調が続く中、一体いつになったら思い切り仕事が出来るようになるのでしょうか…?

そういう先の見えない時期が、精神的にも大変な苦痛であるということを実感する日々です。

また、着付けのお仕事をするだけでなく、フリーランスのお仕事をされている方々全般の地位を向上させて、安心して働けるようにするアクションができないものかとも考える今日この頃です。

 

川口着付個人教室
 http://www.wbcs.nir.jp/~yoko

 

 

 

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自分で着物が着られるのにプロに着付けを頼むということ

2024-08-21 22:10:57 | 着付け

最近、ある着付け講師の先生が、

「礼服着物の着用シーンの際、私はお金を出してでも着付け師に着せてもらった方が絶対にいいと思う。自分も勿論着られるが、その着姿は着せてもらった仕上がりには叶わない」

と仰っていました。

『確かに、一理あることよね』

と正直今の私ならそう思います。

私はもともと自分で着物が着られるようになりたくて着付けを習い始め、着物を着ることができるようになってからは礼服着用シーンであろうとなかろうと自分で着てきました。

つまり長いこと私自身は、

「自分で着ることができるのにわざわざお金をかけて着せてもらうなんてあり得ない」

と思っていました。

ですが、ここ10数年くらい前からか、着付け師として着付けの現場で自身が仕事をしたり、着物のスタイルブックなどを見たりするにつけ、きちんと着せてもらったお客さまやモデルさんは本当にお皺一つなくとても美しい仕上がりとなされているのに気づきました。当時の私には持ち合わせていなかった数々の着せ付けの技術にショックを受けて、現場で活躍される着付け師の先生にその技術を教わりに行くことになったのです。

そこでは昔からその時まで私が習ってきた着せ付けのやり方が全否定されるくらい、当時の私の技術が現場のそれと大きく違っていることに衝撃を受けました。

「日本は昔、みんなが着物を着てきたのだ。着物を着たり着せたりすることは日常のことなので着付けは技術ではない」

という考えももはや昔の考えで、昔の着方、着せ付け方しか出来ない状態では

「着付け師」

としては正直通用しない現場もあるようなことにまでなってしまっています。

また、更に細かいことを言えば、着物を着るシチュエーション…例えば撮影なのか、撮影ならどんな動きを想定するのか、特にどこの角度から美しく見えるような仕上がりにすべきなのか、お出かけなのか、お出かけ先はどんなところなのか、どんな立場で参列し、どんな動きをすることを想定するのかなどなどで着せ付けの技術も変わり、またその技術も進化しているのが現状です。

仕事をしながら周りの同業者たちと切磋琢磨して常に技術を磨いて最新の技術にリセットするようなことも必要で、学びに終わりはありません。あまり現場に出ていない着付け講師や着付け師の中にはこの、シチュエーションによる着付け方の違いを知らないで仕事をしている人も少なからずいらっしゃるかもしれません。

そして、美しく着せたいと思う気持ちは、自分自身も美しく着たいという気持ちにも当然繋がります。

ですが、やはり自分の全身の姿は自分では見えないし、悲しいかな、

「自分で着物を着る」

という動作によって着崩れるということもあります。そんなことから着姿は、

「自分で着るより着せてもらった方が綺麗だ」

ということになるのかもしれません。

「しかるべき時は人に着せてもらったほうがいい」

という考えは、そのようなところからもきています。 

しかし一方で、私は自分自身が着る時については、長時間着ていて楽なことを大変重視するのですが、そちらに関しての最良の着付け師はやはり自分自身だと思っています。自分自身の腰紐を締める心地よい位置、帯を巻く心地よい位置、それぞれを締める最適な力加減などは、やはり自分が一番よく分かっています。 

最近、私の着物の着用シーンは自分が主役であることは殆どなくなっています。それでも一張羅としての着物を着たい時に天候が悪かったり、炎天下のなか移動しなければならなかったりする場合は、私は動きやすい洋装で現地の式場やホテルなどの更衣室に赴き、涼しいところで着替えをするということを非常に良くやります。

自分で着れれば着付け師とともに移動しなくて済むのもメリットです。

いずれにしても、私自身は自分で着る技術を持っていて良かったな、と思ったことが数知れません。

これからもどんな時も自分で着たいと思っています。

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雨の日でも安心して着物が着られるには

2023-06-14 17:42:04 | 着付け
先日、朝から晩まで雨風強い一日がありました。

前々からこの日は結婚式に参列されるご予定の方から訪問着の着せ付けを頼まれていましたが、この悪天候の中ではキャンセルになるかもしれないな、と内心思ったりしていました。絹製品は水に濡らしてしまうと生地が縮んだりシミになることがあり、自分では修復ができないようなことが起こる可能性があるからです。ですが、キャンセル連絡も入らず、念の為こちらからも連絡を取ってみましたが、
「予定通り着物で行くので宜しくお願いします」
とのことでしたのでお客さまのご自宅に伺いました。

この大雨のなか、着物で出かけられるのであれば、雨コートなどの雨対策グッズを用意されていらっしゃるか、着付けのあと雨に濡れないよう、ご自宅の玄関先に車を横付けされるのかな、と思っていました。
でも伺ってみるとそういうご準備も無く、ご自宅から駅まで、そして式場の最寄り駅からも普段通り傘をさして歩いて行かれるとのことでしたので、ご衣裳やお草履のことを考えると大変心配になりました。
「着物を購入したお店では5年間、着た後のメンテナンスは無料でやってくれることになっているから大丈夫」
と仰るので、そんなサービスもあるのね、と思いつつ、それでも草履や足袋は濡れますし、鼻緒や台は絹の帯地で作られた高価なものと思われましたので、思わず持ち合わせた草履カバーをお貸しすることになりました。私自身、着付けを終えて帰りしな、お客さまのご自宅から駅に向かうまでの間だけでも大分濡れたので心配していましたが、その日の夕方、
「結婚式に行ってきました。お借りした草履カバーのお陰で草履も無事で、食事も沢山食べられて着崩れもなく過ごせました」
とメールが届いて安堵しました。

私は雨のなか着物(晴れ着)を着る場合は、必ず雨コートを着て草履カバーを草履に装着して徹底的に濡れないように防御します。
でも正直暑い季節を迎えた時には、雨の中コートを着用して過ごす道中は本当に大変なものです。そう考えると、やはり着物を購入された時に後々のメンテナンスを無料でしてくれるサービスをつけておくことや、防水、防汚加工などをしておかれることは一時はお金がかかりますが、長い目で見た時には良いのかもしれません。
或いは、何より「現地で自分で着ることが出来る」という選択肢かあることは最強です。これなら大雨が降ろうと、炎天下であろうと道中は気にせず快適に動くことができます。結婚式場などではほとんどの場合更衣室がありますから、冷暖房の完備されたお部屋で着替えれば良いのです。

やはり、自分で着られると色々なところで融通が効いて便利だな、と改めて思いました。

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クレームから考える着付け方の改良について

2023-04-30 13:28:54 | 着付け
大学の卒業式の着付け業務に携わるにあたり、クライアントさん主催の講習会に出席した2月初めのお話です。
クライアントさんは毎年卒業式に携わるなかで、着付けで去年はこのようなクレームがあった、あのようなクレームがあったなどのお話しから、今年はそういうことを回避するためにこういう工夫をして欲しいとか、ああいうことに気をつけて欲しいなどのお話しが例年あります。
それらのクレームの中で、
「お客さまの着物に伊達衿を縫い付けられた」
ということを聞きました。
「?」
こちらの現場では針や鋏を着付け師が現場に持って入ることを禁じています。こちらのご衣装には既に着物に伊達衿がついていますし、ご衣裳の点検や準備なども原則クライアント側が済ませていますので、着付け師サイドが針や鋏を使う必要はそもそも無いのですが、私が直接お客さまとやり取りをするような場合は伊達衿を付属の留め具で止めるか、無ければ縫い止めさせていただくことは普通にあることです。
そうすることによって着物の後ろ衿で伊達衿が飛び出してくるような心配が回避出来るからです。
私自身、着付け教室に通っていた時も、先生からは伊達衿は着付けの前に縫い付けておくようにと、その縫い付け方も教わっています。

クライアントさんが仰った内容は、
「針を持ち込んではいけない現場なのに針を持ち込んで縫い付けた着付け師がいたということなのかな?」
とその時は単純にそう思いました。ですが、その後、私に直接着付け依頼をしてこられたお客様がご用意された貸衣装に、「着物着付けをされる方へ」という紙が入っていて、それには追加請求の対象となるNG行為として、
『伊達衿を縫い付けること、衿を固定する為に縫うこと、両面テープを使用すること』
と書かれていました。衣裳に傷がつく可能性があるからでしょうか? でも、お客さまだけでなく自分自身の着用時でも伊達衿は縫い付けていますし、半衿の中で衿芯が泳がないように固定するために半衿の一部を少し縫うようなこともありますが、私自身、着用後衣裳に傷がついたことも無いですし、お客さまからクレームを受けたこともありません。
レンタル衣裳屋さん側として、次のお客様にスムーズに出荷できるように、返されたご衣裳に縫われた糸を取り外す作業という工程を省くための協力依頼なのでしょうか?或いは太い針と糸を使ってブスブス縫った着付け師でも居て、実際にご衣裳に傷がつくような事例があったのでしょうか?
別段縫い付けずに着物クリップで固定して着せつけをして(着物クリップは後で外す)綺麗に着せ付けが出来ないということでは無いです。ですが、長時間着て過ごしたあとに伊達衿が後ろで飛び出してきたり、衿芯が動いてだらしない着姿になるようなことはないのでしょうか?
私自身、長時間過ごした時に、それら『縫う』という作業をしない場合どのように崩れるか或いは崩れないのか否かの検証をしたことはありません。長年、恐らく多くの着付け師が良かれと思って当たり前のこととしてきたことでもクレームになったとか、NG行為にあたるなどと聞かされればその意味を深く考えて、今後の着付けについて改良していかなければならないと思いました。

着付けもファッションとしての流行を追った着せ付けの変化だけでなく、さまざまなクレームを通して工程や技術は進化していくものです。これでいいと学びを止めてしまっては駄目ですね。
着付けも日々勉強です。

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他の着付け教室の先生方に無理だと言われたけど無理じゃなかった!

2023-03-15 21:37:01 | 着付け
先日、ご事情があって短期間で着物が着られるようになりたいと仰る方からのお問合わせが電話でありました。
「海外で着たいのですが出発までに間に合うでしょうか?どうしても無理ならば洋装にせざるを得ないと思ってはいるのですが…」
とのこと。
着物は訪問着、帯は袋帯のお太鼓結びの手結びです。
「通常ですと、そもそも何回位通ったら出来るようになるでしょうか(目安)?」
と尋ねられましたので
「ご自宅でどの位復習できるかにもよりますが、通常のお稽古で多くの方は十数回で一通りの着物(普段着から礼装まで)で一通りの帯(半幅、名古屋、袋帯)を用いて基本の結びが出来るようになられています。でもお話を伺うに、今回は一通りのことをゆっくりしている時間は無いので、着る予定になっている訪問着と袋帯を用いて、初めから二重太鼓をされたほうが良いかと思います」
と言いましたら
「出来る限り自宅でも練習しますのでお願い出来ますか?」
とのこと。取り敢えずいらしていただいたのが2/2。出発は2/23です。私と彼女の都合がつく日にちは私のスケジュール帳と照らし合わせるとトータルで5日ほどしかありません。
4日で基本出来るようにして、後の一日は総復習にしましょう!
 
特訓が始まりました。
2回目のお稽古の際にその生徒さんが
「実は私、こちらの他にもいくつかの個人でやっていらっしゃる着付け教室に連絡して受け入れてくださるか聞いてみたんですけど、『正直に申し上げます、こんなに短期間で出来るようになるのは無理です』と言われたんですよ、駄目元でこちらに連絡してみたら繋がってしまって(笑)そして特訓してくださるって仰ったので…」
「あら、そうなんですか。大丈夫、着られるようにご指導しますので」
と言いながら
『なるほどー、ほかの着付けの先生は出来ないと言われたのね、それじゃあ私がやってやろうじゃ無いの❗️』と思いました。
生徒さんのやる気が感じられたこともあり、私自身も相当の熱量でみっちりお教えしました。
そしてタイムリミットのお稽古最終日、きちんと、綺麗に着られるようになった生徒さんを見て
「無事出来るようになられて、私も嬉しいです。今回、私自身アドレナリンが相当出ていたような気がします」
と思わず生徒さんに言いました。
「どこの教室も受け入れてくださらなかったのに丁寧にご指導いただき、何とか出来るかな、と思えるところまで辿り着けました、有難うございました」
と、仰っていただき嬉しくなりました。勿論これは私の努力だけではないですが、このように他の着付け教室の先生方が匙を投げるような難しい案件⁉︎のハードルでも向き合って越えることにやりがいを感じ、これからもむしろそれを面白がってお仕事をしていこうと思いました。
 
PS: 後日、海外に向かわれたその生徒さんから、無事に着物を着られたとメールとその時のお写真が画像で送られてきました。
着られたご本人、さまざまな反省点はお有りだったようですが、お写真を見る限り綺麗に着られていて、私まで嬉しくなりました。
また、現地の方々にも大変喜ばれたとのこと。
海外で「着物」という日本の伝統文化の紹介が出来たということも意義あることだったと思いました。
着物を着るという挑戦のお手伝いが微力ながらもできたことを幸せに思いました。

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着物(晴れ着)着用時の補整について

2022-06-04 16:52:48 | 着付け
着物を着せてほしいと頼まれた時、着付け師はお客様に対して、どういう着物を着られるのか、それによって準備していただきたいものは何なのかをお客様に伝えるわけなのですが、その際、体型の補整としてタオルや晒し(もしくはガーゼ)をご用意いただきたいとお願いするケースが多いです。
洋服着用時にはほぼ使わないものですね。

着物は長方形の布からできていて殆どが直線縫いですが、体は曲線なので、くびれているウエスト周りなどにはタオルを巻いたり、鎖骨あたりの窪みに綿花を入れたり、お胸やお腹の大きい方には晒しやガーゼを巻いたりして体のラインを平らかに整えるなどの補整をすると次のようなメリットがあります。
1.着物が綺麗に着られる
2.お紐を締めた時、体への負担を軽減させることができる
3.汗を吸収することによりダイレクトに着物に汗がいかないようにする
4.着崩れを軽減させる

さてこの補整グッズですが、お客様サイドの判断で、
「私は太っているからタオルを巻く必要はない、補整は要らない」とか
「胸がないからガーゼは要らない」
などなどと、ご用意いただけないケースが少なからずあります。
着付け師が必要だと思うのに用意されていない場合、美容室やお客様のご自宅への出張の場合などでお借りできる場合は良いのですが、そうでない場合、全く使えないままでの着せつけを余儀なくされることがあります。
着付け師はどんな体型の方でも、綺麗に、崩れずに苦しくない着付けが出来ないかを目指しているものなのですが、その解決はいきつくところ、いかに綺麗に体型の補整が出来るのかというところにあると言っても過言ではありません。
太っていると仰る方でも多少のくびれはあるものですし、ウエストのくびれは無くとも反り腰で後ろの腰とお尻の段差がきつい方、お胸とお腹に段差がある方…とさまざまです。
そして、それらはほんのタオル1〜2枚で解決できるようなことばかりで、
「せめて一枚タオルがあったらもう少しきれいに着付け出来たのに…」
と思うようなことも多々あります。
着付けを頼まれる方々、どうかご自身の勝手な判断で、用意してほしいとされているものを用意しないということはなさらないでくださいませね。

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白色の長襦袢について

2021-01-30 21:36:36 | 着付け
着物を着用する時には、普通、着物の下に長襦袢というものを付けます。
主に結婚式で新郎新婦の親族の既婚女性が着用する「留袖」、そして葬儀の時に着用する「喪服」について合わせる長襦袢については、色が「白」と決まっています。
これについてはマストアイテムです。

ではこの白い長襦袢、それ以外の着物に合わせて着るというのはNGなのでしょうか?

私は着付けを習い始めて30年以上経ちますが、
「白色の長襦袢は着物を選ばずオールマイティーに使える」
と思っていました。
実際私が当時通っていた教室の先生はお稽古の際、メンテナンスが楽だからという理由でポリエステルの白の長襦袢をどんな着物にも合わせて良く着ていらっしゃいました。
白色の半衿や足袋についても私はどんな着物にも合わせられる、オールマイティなアイテムだと思っています。

ところが、あるYouTubeで着付けの先生や呉服屋の店主の方が、
「白色の長襦袢は留袖と喪服用で他の着物に合わせるのはNGだ」
と仰っているのを拝見しました。
「?」
私が教わったこととは異なりますね。
気になり、過日80才代の和裁の先生に尋ねてみましたが、
「白の長襦袢はオールマイティーという考えで良いですよ、確かに紬などのほっこりとした素材の着物の振りから白色の長襦袢が見えたら寒々しく見えることはあるけれど、だから何?って感じなのよ。NGだなんて、そんなことを言う方は知識の無い方に色襦袢を作らせたいからそんなことを言っているんじゃないですか?」
とも仰いました。
確かに袖の振りからチラッと色柄が見えたらおしゃれかもしれませんが、そもそも洋服を着ている時に冠婚葬祭以外でいちいち服の色や下着の色をとやかく言う方がいらっしゃるでしょうか?

白色の長襦袢は、式以外では無粋?
もしもそういう感覚だとするならその意見はその方の「好み」の問題だと思います。

私が着付けを習い始めた30年ほど前頃から暫くの間は、自宅で簡単に洗えるボリエステルの長襦袢は、そもそも白色とピンク色の地色のものしか売っていなかったように思います。
「ピンクは年齢を重ねると着るのが恥ずかしいと思う方もいらっしゃるけれど白ならば礼装にも使えるし、年齢を問わず着られるので無難」
とも言われたものです。

「白の長襦袢は留袖と喪服だけ」
という考えは色々な色の長襦袢が買える時代になったからこそ生まれた新しい考え方なのでしょうか?
でも私は「NG」としてしまって色襦袢を持たない人がそれゆえに着物を着られなくなるのは好しくないと思います。

冠婚葬祭やお茶会など、洋装でも気を遣わなければならない着用場面では、そのコミュニティの考え方に従った方が良いでしょうが、それ以外であれば自分の好きなように装えば良いのではないかと思います。

着物も洋服もファッションとして楽しむ時に、「◎や◯はあっても×はない」と思います。
着物好きの方々、是非とも「自分はこれが好きだ」ということを他人に押し付けないでいただければと思います。
もっと気楽に着物を着て、楽しみましょう。

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今は無き便利グッズ

2020-05-27 16:34:33 | 着付け
先日、以前義母の断捨離で送られてきた着物や帯、小物たちの整理をしました。
大分年季の入ったそれらのものの中にはこれはどういう時に使うものなの?と迷うものが1つありました。今日はこちらの紹介をしたいと思います。

こちらです(写真上です)。

幅は3寸7分(約14㎝弱)、長さは2尺8寸8分(約109㎝)です。    

こんなのは初めて見ました。
一体何? どういう時に使うもの?
義母にも尋ねてみましたが、
「分からへん、使うたこともあらへん」
とのこと。義母の実家は京都の呉服屋だったので色々な着物関係のものを持っているのに、義母は普段にはあまり着物を着て来なかった人です。
歴史は浅いですが大きさがそっくりの「前結び用の前板(写真真ん中)」というものが市販されていますので、愛用されている方も多いですが、それとは素材感が全く違っています。
大きさ(幅)は違えど、素材感はマジックテープ付きの伊達締め(写真下)にそっくりです。

見れば見るほどこれ、一体何なんだろう…??
そしてハッと閃きました。
これ、昔からよくある博多帯の献上柄が一部分(1尺3寸ほど(約49㎝))についています。
普段着(家着)の着物(ウール、麻、木綿、紬など)で(どうせ家だし、他人に会わないし…)帯までは締めない状態で着ていた時に、ちょっと外出しようと思った場合には、これを前腹だけ柄が出るようにチャチャっととめて羽織でも着ると、あたかもきちんと半幅帯を締めているように見えます。

前から見た感じ↓

後ろから見た感じ↓


しかも羽織は室内で脱がなくても非礼にはならないので、実は非常に使い勝手の良いものなのでは?
そう考えたらこれ、めっちゃ便利!
きっとそういうものであったに違いない!

着物を普段に着る方が減って、冠婚葬祭やお洒落着としてしか着用しない方が増えた結果淘汰されてしまったのかもしれませんが、普段着物を着て過ごされる方にはアイデアグッズですよね、見直してみてはどうかと思いました。

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更年期の方の着物生活

2019-12-05 16:44:59 | 着付け
私52才になりまして、このくらいの年代の多くの女性の方が経験する体の変調…更年期を迎えております。

私が直面している嫌な症状の一つはホットフラッシュです。
体の内部から急にぐわーっと熱くなる症状で、所謂体調不良でおこる発熱症状とは異なり何とも不快です。熱いと思って服を脱ぐと急に寒くなってきたりもして、洋服を着る時は常に脱ぎ着のしやすいものを選んで調節しています。

ここで困るのが着物です。
着物は、着物に帯を締めている状態から暑かったときに、人前でこれ以上脱ぐことが出来ません。

先日同年代で、私と同じ症状で悩まれている生徒さんと、
「昔、着物生活が主流だった頃の人々は、こういう時、どうされていたんでしょうかね?」
という話になりました。
話の結論としては「人生50年と言われていた位の年代だったら、更年期を迎える前に多くの方は亡くなっておられたのでは? そもそも更年期を経験しないので、これが原因で不自由を感じることはなかったのでは?」ということになりました。

私も更年期を迎えるまでは更年期の大変さなど考えてみたこともありませんでしたし、むしろ冷え性で悩んでいた位でしたから、
「着物は補整(くびれた部分にタオルやコットンをつけるなど)をして着るし、お腹周りは帯を巻きつけるので着ているだけで体を温めてくれる着心地の良いものだ」
と思っていましたが、ホットフラッシュが起きてきた時は、とたんに閉口してしまいした。すっきり綺麗に着るための補整はこの時期は少し我慢し、着心地良く楽に着ることを優先しなければ、やってられません。

…と、ここまで書いてきて、私の、着物生活をしていた祖母は86才と当時としては長生きだったことを思い出しました。もう亡くなって40年近い年月が流れましたが、この問題、どうやって乗り切っていたのでしょう?
着物生活をされる方が減っている昨今、着物生活をしていた方に今になって聞きたかったことが沢山あります。しかし知る由もないので、更年期でも快適に乗り切る工夫を着物着用の時でも考えなければと思案し始めたところです。

何事も経験してみなければわからないことってありますね。
経験しているからこそその痛みも分かり、その改善も考えられるというものです。
私も若い方々にとっての先輩として乗り切りたいです。


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自分で上手に着物を着られない着付け師と人に上手に着物を着せられない着付け講師

2019-11-14 14:15:42 | 着付け
色々な着せ付けの現場に入ると、現場の方(クライアントさん、同業の着付け師さんなど)が
「着付け教室の先生は着せ付けが下手な人が多い」
と言っているのを往々にして聞くことがあります。着せ付けに時間がかかりすぎるとか、クライアントさんの求める仕上がりにしていただけないということが主な理由です。

一方で着付け教室の先生(着付け講師)からは
「着付け師みたいに、ただ早く着せればいいみたいな着付けとか、着崩れなけりゃ良いだろうとぎゅうぎゅう紐を締めて、着せられる方の着心地を無視した着付けはしたくない。着付け師の中には左程自分で着物を着ることも出来ない人が着せ付けをやってることがあるんだってね」
というようなことを聞くことがあります。

沢山の人を着せ付けていれば着せ付けは上手になる。
沢山自分が着ていたら自分が着るのは上手になる。

ある意味当たり前のことです。
私は以前、自分が着ていて楽な着付けを人さまにもしてあげられたらそれが一番いいと思っていました。丁寧な着付けには、時間がある程度かかって当然だとも。
そして、そのための研究も体を張って(自分の着せ付けのやり方をお教えした生徒さんに自ら着せて貰うことでその着心地を試すことや、着せて貰った状態で長時間過ごしてみてどこがどのように着崩れていくかを試すようなことを)やってきました。
ところが、多くの着せ付けの現場に入ると、どちらかと言うと着心地より見てくれや、着せ付けのスピード、そして着崩れしにくさを大変重視し、
「苦しいのはクレームにならないけど着崩れはクレームになる」
と言われてびっくりしたこともあります。
一分一秒を争う現場の着付け師が、ゆっくりと、またある意味紐の締め方も緩めの着せつけをしている着付け教室の先生を見たら
「もっと早く着せないと…!」
とか
「こんな紐の締め加減では着崩れるよ!」
とイライラすることもあるのでしょうと思いました。
でも、私自身、現場で着付け師が、必要以上に紐を締めて着せつけしている状況を見ることも多々あり、
「こんなにきつく締められたら苦しいよ、こんなにきつく締めなくても崩れないよ」
と諌めたくなるような経験も少なからずしてきました。私は
「着物を着せてもらったけど苦しくてこりごり、二度と着たくない」
という思われる方を増やしたくはないのです。
「着心地を良くして、極力早く、綺麗に着る、着せる」ことは難しいのでしょうか ?いえいえ、着ることも、着せることも同じくらい訓練すればそれは出来ると思っています。そして
「着付け師も着付け講師も様々な角度から鍛錬して、お互い切磋琢磨して技術の向上を図っていきましょう」
と思います。
そして私は着付け講師と着付け師を両立して着物を着る方を増やしていきたいと思います。

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