着付けの気づき

着付けの個人教室を行っている先生が、着付や着物に対するこだわりの思いを中心に語ります。

箪笥の肥やしにしておくなんて勿体無い!

2024-11-15 23:32:54 | 和裁

先日、私が和裁のサークル活動で通っている公民館の文化祭がありました。

こちらでは絵画、書道、生花…、その他さまざまな活動があり、それぞれ一年かけて作られた作品や活動の発表などを展示する場でしたので、我々のサークルも着物や帯などの作品の展示をしました。

それぞれの展示のブースには誰かしらサークルの担当者が付き、見にこられた方々からのお尋ねに答えたり、作品の紹介などをしたりしていました。私がその担当をしていた時のお話です。

 

ある年配数人の方々がブースに来られ、こう仰いました。

「素晴らしい作品ですねー。でも皆さん、こんなに着物や帯を作られてどうされるんですか? 私は着なくなった着物や帯をどうやって処分しようかと思案しているところなのに、こんなに作って、着ていくところがあるんですか?」

「私なんてこの間、不要な和服を売ろうと思ってリサイクルショップに相談したら二束三文なのね。こんなことならゴミに出したほうがマシだったと思ったわ」

「私、古い帯で鞄を作ったのよ。でも、そもそも古い帯だから、織り糸も弱っていて、折角苦労して作ったのに使っているうちにすぐに糸が擦り切れてきて、ダメになっちゃった」

「着物は洗えないしメンテナンスが大変よね」

「今度、公民館でバザーがあるからそれに出そうかしら」

 

こっちは好きで作って、自身が着たり身内に着せたりして楽しんでいるのに、何という言いようでしょうか。

ある意味、我々のような着物好きの人間以外の方々の、着物に対して持っている感情を聞けて勉強になったのですが、そもそも礼装用の着物を着る機会があまりないのは礼装用の洋服を着る機会があまりないのと同じことですし、普段着の洋服と同じように着物にも普段着となるものはありますし、普段にはそういうものを自由に着たら良いことです。

私はこのところ、自分用の、そして普段仕様の着物や帯ばかり作っていますので、そういった作品も出していました。来場者さまには、着物生地には洋服生地と同じように「洗える素材」もあることも話し、私が普段に着ている時の写真、またそれを楽しんでいる様子も見てもらいました。

 

私自身、最近、自分用にはメンテナンスの楽な素材のものばかり作っています。

例えば、礼装の場に着るようなものでも絹生地に似たポリエステルの生地だってあります。

来場者さまたちには、

「そういう素材もあるのね」

「そういう着こなし方もあるのね」

と言っていただけました。

出来ないこと、不自由なことばかりにスポットを充てていたら折角の日本文化も廃れてしまうのではないでしょうか。

 

着物は着てナンボのもの。

もう少し着物への凝り固まった先入観を捨てて、ファッションの一部として楽しむ方が増えたらいいのにと思いました。

 

川口着付個人教室
 http://www.wbcs.nir.jp/~yoko

 

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まずはきちんと鶴を折りましょう

2024-11-12 15:04:15 | 着付け教室

10月に入り、これから七五三シーズン。また来年1月には成人の日を迎えるので、現場に入られる予定の生徒さん達は技術磨きに一生懸命です。


着物の形は昔と変わらないとは言え、「装うもの」という意味ではファッションなので、衿合わせの角度、帯位置、また帯結びや帯揚げ、帯締めの整え方のアレンジ方法は微妙に変化、進化していたりします。
ですから、今のお嬢さまたちはどんな装いを好まれるのか、アンテナを高く張って、お客さまに喜んでいただけるようにしっかり対応出来るようにしたいと思います。


ある生徒さんには、
「先生〜、私、もしお客さまがこんなふうに整えて欲しいとか、こんな帯結びをして欲しいとか画像を見せられてもとっさには出来ない気がします…」
と言われました。
確かに、
「なんじゃこれ?一体どうなってるの?」
と思うようなアレンジを見ることもありますが、私としてはそれを再現できた時の喜びは、まるで学生の頃、難しい数学の問題が解けた時のような達成感を感じて、それらのやり方を読み解くのも好きなのです。しかし、限られた時間内で出来るようになるにはやはり相当練習しなければならないのだろうな、と正直思います。


でも、それらの難題を解くことが出来ないと着付けの仕事ができないのか?と言われればそれはちょっと違います。
例えば日本人で大人であれば折り紙で
「鶴を折ってください」
と言われて出来ないのは恥ずかしいかもしれませんが、
「カマキリを折って」
「ネズミを折って」
などと言われたとして、それらが折れなくても恥ずかしくはないですよね。折り紙を折るのに相当精通している方々が例えそれらを折れたとしても、仕上がりは折る人によってきっとさまざまだと思われます。
着付け師たるものも、出来ないと恥ずかしいという、昔ながらの「王道」の着方の「基本」をしっかり押さえて、それが当たり前に出来ることがまずは最も大切です。そしてその上の応用は感性や練習によるところも大きいと思います。


先程の例では、折り紙の大きさや色、素材によって、きっと「カマキリ」や「ネズミ」もそれぞれ違うものが出来ることが推測できるのと同じで、着せ付けの仕上がりも、着付け師によって、またお客さまのご衣装や小物の素材感によっても全く同じにはならないのだと割り切ることも大切です。
自分がお客さまにとって最良のデザイナーになるという意識と自信を持って、また、お客さまの気持ちに最大限寄り添うことが出来るように対応できることが大切なのではないかと感じます。
でも言葉で言うは易しで、常に研究していくことはやはり大切です。


「継続は力なり」
生徒さんも、私自身も、現場はしんどいことも多いですがお互いお客さまから喜ばれる仕事をして、楽しみながら精進していきたいと思っています。

 

川口着付個人教室
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