幸いにもこれまでの人生において
“風呂のない風呂場”を目にした経験がありません。
かなり以前の古いアパートで床と壁がタイル張り、そこにステンレス製浴槽が
ポンと置かれただけの浴室には実際に数回入れて頂いたこともあり
あれがその手の造りの浴室なのでしょう。
ただ自分自身では公営住宅にも民間のアパートにも
入居したことがなかったので、最初から風呂場には必ず風呂がある
つまり浴室には浴槽と風呂釜は必ず納まっているものとばかり思っていました。
ところが、です。
今回、たまたま市営住宅の資料を見る機会があり
建設年度がH3までの古い集合住宅に関する一覧表の「風呂」の欄に
「×」が記されていることに気付き、「これって風呂がないのですか?」と
市の職員に尋ねたところ「斜線は風呂場自体がないのですが
×は浴室はあるけれど浴槽と風呂釜がない状態です」とのこと…。
浴槽と風呂釜がないのに浴室と呼ぶ?
「流しがない台所」や「便器のない便所」はあり得ないと思うのですが
当時の世間では空の浴室は有りだったのでしょう。
現在でも“必要な人”は自分で業者に依頼、自己負担20~30万円で設置して
退去の際はまた取り外して元の状態に戻さなければならないのだそうな。
中には設置せずに銭湯を利用する人もいる、とノタマイますが
この金額は大きいですし、さらに元に戻すとなれば
“必要でもそう出来ない人”もいるに違いないのでは…。
この付近で見かける、畑に放置され水槽代わりにされている浴槽は
これらの末路の姿かもしれないとふと思いました。