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南足柄市苅野
古代の坂本駅跡といわれる南足柄市総合グラウンドから県道78号を矢倉沢方面に向かい
道標に従い足柄古道に入るとまもなく足柄神社の境内に入ります。
入ります、という言い方はちょっと変だけど、
足柄神社の境内は古道と平行してて境界がほとんどないので
古道を歩いてると自然と境内を歩くことになってしまう、
古道沿いというより古道を取り込んで神社がある感じです。
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鳥居の立つ参道の左側が古道
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参拝しない人もこのくらいの位置で拝殿を見ながら歩くことになるので
せっかくだから参拝しましょう。
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古道から階段を降りた位置には
本地仏である聖観音を祀ったお堂があります。
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本地垂迹説は明治の廃仏毀釈により廃れてしまったので
このようなお堂が残ってるのは貴重ですね。
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観音堂から県道までは急坂の参道が敷かれています。
県道が通った時に新設されたのでしょう。
ここからの苅野の景色はため息もの。
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県道側から見た参道
(撮り忘れたので画像は猫の足あとさんより)
私はここを登ったことないんだけど、なかなか大変そうです。
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さて拝殿前に戻ります。
足柄神社は南足柄の総鎮守であり、その起源は足柄峠に祀られていた足柄明神です。
古事記 景行天皇
「ヤマトタケルが蝦夷を倒した後の帰り道
足柄の坂本に着いて食事をしてると坂の神が白鹿に化けて現れたので
食べ残しの蒜(ニラやニンニクみたいな草)を投げたら白鹿は死んでしまった」
というクダリに登場する白鹿が足柄明神です。
坂本とは古代東海道の坂本駅。
現在の南足柄市総合グラウンドがそうだといわれています。
(ヤマトタケルの時代に駅があったかどうかは微妙)
足柄峠は標高700mを越えてますが坂本はせいぜい60mちょっと。
明神様はずいぶんと麓に現れたようです。これから自分のエリアに入ろうとする若者を確認したかったのでしょうか。
その白鹿をヤマトタケルは秒殺。
普通目の前に白鹿が現れたら驚き崇めはしても殺さないと思うのですが
神は悪にも等しい存在であるとかなんとかその辺りの理由なんでしょうか。
日本書紀にも白鹿の話はあります。
場所は違って信濃、山の神が白鹿に化けてヤマトタケルの前に現れるのですが、
こちらの白鹿は明らかな悪意を持っていました。
で、ヤマトタケルが秒殺。
そしたら祟りで道に迷ってしまい、ふらりと出現した白犬に導かれなんとか山を下ることができました。
古事記の白鹿は殺されておしまいだけど、日本書紀では殺された後に道に迷わせて邪魔をする、さらにヤマトタケルが白鹿を殺したことでその後人々は山の神の祟りを受けず安全に旅できるようになりましたとさめでたしめでたし、
というオチまで付きます。
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天慶3年(940)足柄峠にヤマトタケルに殺された足柄明神を祀った祠が建てられます。
理由はわからないのですが平安時代末期に矢倉岳に遷座。
矢倉明神社と号します。
鎌倉時代末期に現在の苅野へ再遷座し、昭和14年に足柄神社と改称されました。
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(田代道彌「萬葉集 足柄・箱根歌」
足柄古道、東坂案内図 に加筆)
足柄明神、矢倉岳、現在の足柄神社
及び南足柄市総合グラウンド(坂本駅)を地図に記してみました。
こんな風に足柄峠から遷座してきたのが足柄神社なので
主祭神は足柄明神だと考えるのが普通ですが、
なぜか
現在の足柄神社の祭神は
天照大御神、瓊瓊杵尊、日本武尊 の3柱なのです。あら不思議。
この不思議について
次回は足柄峠の足柄明神社からお伝えすることにいたします。
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足柄神社は護衛艦あしがらに分霊されています。
初代はスマトラ沖で沈没。涙
今活躍してるのは2代目。
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でも護衛艦あしがらの神様も天照大御神と日本武尊なんですね。
うーむ