株式会社プランシードのブログ

株式会社プランシードの社長と社員によるブログです。
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その29.男の価値

2012-07-23 07:13:18 | 制作会社社長の憂い漫遊記
取材物のPRを主に演出しているからなのか
はたまた私が言葉巧みなのか、さだかではないが、
私が演出するとシリーズになる事が多く
「シリーズ物の多田」として各社のプロデュ-サーに重宝されてきた。


いまから20年ほど前、私がフリー時代にシリーズとして
数十本監督させていただいたのが富士火災海上さん。
扱う商品は損害保険で、
最初のころの作品はすべて保険の説明PRビデオだった。
そもそも保険は目に見えない商品で、安心を売る商品である。
約款も分厚く、渡されても見る気もしない。
カタログも保険内容や期間のイラストがあるだけで
見る気が起こらない。
そこでビデオ化し、約款を簡略化して見せる。
実は私が商品PRに嫌気がさしたのは、
仕事をいただいて申し訳ないがこの仕事がきっかけだ。


(富士火災海上さんの取材でロケを終了し
奈良県春日山で夕景撮影後、バンザイするオールスタッフ)

保険という商品の目に見えない「安心」を映像化するのは難しい。
したがって進行役を設けて、
その進行役の解説に映像を当て込むという手法を使う。
最初の数本は、Naだけで進めたが、
その内、女性キャスターがでてきて説明する。
男性キャスターの場合もある。
商品によっては子役の進行役もある。
ゆるキャラをアニメーションで作り、進行役にした事もあった。
やがて危険なシーンは紙芝居風にしてドラマ化したり、
役者を使ってドラマ化する。
もはや進行役に語らせるのは手詰まり!
そこで今度はお客さまにこの保険の良さをお聞きし(インタビューして)、
お客さまに商品を語らせる方法を取るようになる。
この手法はこれまでの進行形式とは違い、
お客さまにインタビューするので、真実味もあり、
「これはイケる」とスポンサーも納得。
出会いもあり、何を言い出すかわからないアヤウサもあり
監督としても楽しかった。

そうこうするうちに説明商品も少なくなり、
次の手立てを考えねば「シリーズの多田」としてはマズイ。
そこで今度はトップセールスマンにその商品を売ってもらい、
「販売ではどういう点に注意すべきか?」「どう販売すればよいか?」
「その時のセールストークは?」など、視聴対象をエンドユーザーから
セールスマンにし、教育用ビデオ制作に入っていった。
私は取材を重ねるうちに、取材物の面白さにハマり、
「行動観察しながらインタビューする」
私のスタイルが確立した。
(その21.退路を断て!参照)
以降20年強、全くあきずに人を撮っている。

富士火災海上さんからの仕事が落ち着きを見せ始めた頃、
出会ったのが農業機械のクボタさんだ。
1990年、第1作目の依頼内容は、
クボタがこれから進める『顧客管理』を
ディーラーにわかってもらうためのシステム紹介であった。
しかし私は「システムを紹介するよりも、システムを導入して
成功事例を作りながら、社内の水平展開を図った方が効果は大きい」
と進言した。


(1993年11月、撮影スタッフそっちのけで鳥海山バックに
記念撮影の大隈課長と私
大隈課長はその後要職を歴任され2012年定年退職された)

当時のクボタ企画部の担当者だった大隈 憲治課長は、
この特命を社から受けて、
1990年に出向していたディーラーから呼び戻された。
さすがディーラーで営業部長をやられていただけあって
営業マンの気持ちをよく理解されており、私の真意も素早く理解してくれ、
「取材方式で顧客管理の水平展開にチャレンジする」
と明言し、取材が始まった。
顧客管理の言い出しっぺの長谷川 透本部長はじめ、
このプロジェクトにかかわる
システム担当者や営業担当者の方々にもインタビューし、
「もやは顧客管理は最重要課題である!ご下命いかにでも果たすべし!」
と退路を断った。

顧客管理システムの導入先はクボタグループの中でも
最も力のあるディーラーの協力を得て、
導入動機については社長インタビューを、
活用状況は傘下の営業所をはじめ、
実際にシステムを使う営業所長や営業マンの活動を撮るなど
導入間際の会社の進捗状況を取材しまくった。
インタビューで少しでも「導入したい」「導入すべき」「時代の要請だ」
と聞けば名前入りでビデオに取り上げた。
言った限りはやるべし!
退路を断って前に進んでいただき、
また数カ月後に取材してさらに活性化させる!
を繰り返した。


どんな企業でも『顧客管理』が基本になくては商売にはならない。
八百屋の親父なら頭の中に、お客さんの名前、家族構成、服装から見た年収、
好みや趣味などを頭にインプットしている。
しかし、大きな会社で組織営業をしていると、転勤もあるし、
新人を採用したら配置換えもある。
入社以来ずっと同じ場所で営業する事はまずない。
そうなると誰が担当しても
お客さまの事がわかるようにしておかなければならない。
それが『顧客管理』だ。
クボタにも『顧客管理』の定着は必須だった。もちろん今も変わらない。
営業マンにとってまずは商品知識であるが、
実際に販売するにはお客さまを知る事が必須なのだ。


この第1作目の取材先は、クボタグループディーラーの新潟クボタで、
吉田社長(現:吉田 至夫社長のお父様)にインタビューしたが、
あまりにしつこく顧客管理の重要性を聞く私に
「理屈じゃ~ねっす」
という名言を吐かれた。
理屈じゃない、商人として『顧客管理』の重要性は言わずものがなのだ。
吉田社長は、オンボロの社長車に長靴姿で
展示会を激励に来ては、誰よりもお客さまと熱心に話されていた。
だからこそ理屈ではなく、やるしかない!と私のインタビューを通じて
クボタグループ各社に宣言したのだ。
もちろん、この名言は第1作のエンディングに使わせていただいたが、
今もなお私の中に息づく名言で、
たまに若い衆に「理屈じゃ~ねっす(やるっきゃないだろ)」を
使わせていただいている。
こうして1990年に始まったクボタさんとのお付き合いは、
今もなお続いている。



(取材で出会い今なお交流の続く
 当時、新潟クボタのトップセールスマン 佐藤 美津雄氏と)

フリー時代に多くのスタッフと出会い、多くのスポンサーと対峙したことが
現在の私の礎になっている事は言うまでもない。
が、とりもなおさず私に大きな影響を与えたのは、
取材を通じて出逢った多くの方々である。
「乱作の多田」と言われるのは、多くの人々と出会った証である。
いまでは少なくなったが、フリー時代は
社長インタビューや財界人インタビューがあるというだけで
作品内容はともかくも監督としてよく声がかかった。
これからもこの仕事は続けていく所存である。
最後に吉田社長の思いをマンガ家・里中満智子さんの名言にかえて…
男の第3の価値は「言葉」であり、第2の価値は「行動」であり、
第1の価値は何より「生きる姿勢」である。



(まだまだ甘いが当社の若手も取材で男を磨いている)


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