株式会社プランシードのブログ

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その19.録音マンは3人いればよい?

2012-07-02 16:10:12 | 制作会社社長の憂い漫遊記
いまから20年ほど前の話である。
フリーランス集団「オフィスキネティック」を作った頃には、
フリー監督の私に多くのプロダクションから声がかかるようになっていた。
それぞれのプロダクションごとに、
出入りしていたカメラマンや照明技師、
提携する編集スタジオや録音スタジオはあったが、
監督にはスタッフの任命権がある。
プロダクションの都合もあるので、スタッフ全員任命とはいかないが
カメラマンと録音スタジオ、ナレーターは指名していた。
商品PRなのか、取材物なのかでカメラマンは決めたかったし、
ナレーターと音楽をイメージして、台本を書いていたからだ。
特にナレーターをイメージして編集しないとトンデモナイことになる。
というのもナレーションが作った映像の尺よりも短い場合は音楽で埋められるが
ナレーションの方が長いとニッチモサッチモいかなくなる。
また、ナレーターによって「間」が違うので、
台本作成時にナレーターを決めておくのがベストだが
遅くとも編集前には人選すべきである。

ナレーターについては後述するとして
ここではまず、録音マンについて述べたい。
録音スタジオでは、たいてい2名の録音マンが作品につく。
1名が作品のイメージを汲み取って選曲をし、
もう1名はその尺に合うように選んだ曲を編集する。
前者の選曲マンには、監督に近い能力がいるのに対して
後者は職人に近い。当時はアナログだったので、
音楽テープに磁気録音された曲の節目を耳で探り
映像の長さに合わせて短くしたり長くしたりする。
磁気録音だから目に見えない。
長年の経験から耳で曲の位置を探るのである。
また油性の手は禁物である。
テープに手油が付くと音がこもってしまうからだ。


(サウンドシードにて
 選曲の山城氏<上段右から2人目>と整音の納多氏<上段右端>)

PRビデオの音楽(BGM:バック・グランド・ミージック)は
映画のように1作品ごとに作曲するのではない。
スタジオミージシャンがあらかじめ様々なジャンルの曲を作っており、
その中から作品に合う曲を選曲マンが選び、
曲の長さを編集してあてていく。
作品の長さにもよるが20分物で8~10曲使う。
音の構成要素としてはBGMだけでなく、
SE(アタックと呼ばれる効果音)、
現場音(雑踏をはじめ現場で実際に聞こえる音)、
インタビューなどがある。
フィルムの時代は同緑ではないので、
効果音は後で似たような音(時には全く異なる音をつけることもある)を
どこかで録音してきたり、作ったりする。
時代劇で人を切った時に「ブシュ」と鳴るがこれは効果音の最高級品である。
また無音も重要な音の要素である。
色んな音を足し算ではなく引き算にして、
効果はかけ算になるが理想的である。かりにBGMが鳴っていなくても
曲が視聴者の頭の中に流れているように音構成するのが
選曲・録音マンの一流の証である。


あくまでも私見ではあるが、
私の作品作りの中で最も信頼できる選曲マンは山城 日出男氏だ。
山城氏は、私が大学生の分際で
グリコアイスクリームの商品PRスライドの演出を任された折の
録音助手(国際放送録音からオーディオブレーンに移籍し、
その後㈱サウンドシードを立ち上げた)という関係で、
以来30年間、私が演出する多くの作品の選曲マンである。
山城氏の選曲センスと
遊び人としての傍�盖無人ぶりは関西でも有名である。
よって私は普段、愛情をこめて「師匠」と呼んでいる。


(山城氏とは夜のクラブ活動でも同じ部に属し
 たまにオネーチャンと同伴出勤したりもした)

山城氏が選曲すると、曲のテンポと映像の編集ポイントがピタリと合う。
本当に不思議であるが、そういうことが多い。
まれに合わない時は、せっかく選んでくれた全ての曲を
総替えということもあるが、替えると全ての曲が合ってくる。
また、ずっと同じ音量で流す必要はない。
うまい音楽構成をすれば、時に曲が流れていなくても
視聴者は流れているつもりで見ているということもある。
たぶん山城氏の持つセンスは学ぼうと思っても学べるものではなく
山城氏がそのセンスごと墓場に持っていくことになる。
(サウンドシードHP http://soundseed.web.fc2.com/index.html)

ちなみに私見ではあるが、
効果音では㈲ガリレオクラブの職人・吉田 一郎氏、
なんちゃって作曲では㈲スタジオマックスの鉄人・増南 正氏が
私の思いを音楽化してくれる。

「ガリレオクラブ」の職人・吉田氏とは
私が勤めた2つ目の会社「映像館」時代からのお付き合いだ。
焚火のシーンをもっと効果的にするため、
わざわざ自分の庭で火を焚いて録音してくるという職人である。
ちなみに本職はお坊さんで、この時火にくべたのは護摩木だと
まことしやかに囁かれた。
吉田氏のミキサーのフェーダー操作は独特で、
通常は音のレベルをVUメーターで決めたら動かさないものだが、
吉田氏は音楽を耳で聞きながら、耳から感じる音の強さ、大きさに合わせて
こまめにフェーダーを上げたり下げたりする。いわゆるスケベーである。
(ガリレオクラブHP http://www.galileo-club.com/)

「スタジオマックス」のなんちゃって作曲家・増南氏は、
レンタルした楽曲が気に入らないと、
編集卓の下側に別注で作った引出しから
シンセサイザーを引き出し、曲を作ってしまう。
ジングルやアタックなどはお手の物!
チョチョイのチョイで作曲してしまう。
知る人ぞ知る、私の監督した「西沢学園」CM。
アダ・マウロー嬢がカタコトの日本語で
「ニ・シ・ザ・ワ・ガ・ク・エ・ン」と語る長期放映されたCMは
増南氏がチョチョイのチョイで作曲してくれた。


(スタジオマックス設立前に勤めていたオーレックで
 増南氏と<左から2人目>)
(スタジオマックスHP http://www.studiomax.co.jp/)

いずれも3名は今では大社長で、最近ではタッグを組むことは難しい。
私は彼らが現役バリバリの頃に仕事ができたので幸せである。
もちろん彼らに代わる優秀な録音マンもいるのだろうが、
この3人がいれば監督として楽しい録音合戦ができると今でも思う。
あくまでも私見であるが…


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