株式会社プランシードのブログ

株式会社プランシードの社長と社員によるブログです。
会社のこと、仕事のこと、プライベートのこと、あれこれ書いています。

その356.新潟の酒

2017-12-23 07:51:43 | 制作会社社長の憂い漫遊記
今年最後のロケは新潟。
晴天の伊丹を飛行機は飛び立ったものの、
長野辺りから新潟に近づけば近づくほどに揺れに揺れた。
しかし雲間を抜けて新潟平野が見えると
心配されていた積雪もなく、
着陸寸前にガクンと落ちてヒヤリとしたが無事着陸。

左に見えるのが伊丹空港

新潟平野には積雪もなくホッとする

雪を予想し早めの飛行機にしたのが正解だったが、ちと早い。
レンタカーでホテルに向かう道中、
「今代司酒造」という看板が目に入る。
酒米について気になることもあり
杜氏さんがいたら聞きたいという願望がホツホツと湧き
もはや無視できない監督の好奇心という性。
Uターンして今代司酒造の駐車場に。

ちょうど無料の工場見学が始まったところで、少し遅れて乱入。
前フリを飛ばしたので素性はわからないまま
男性の親方(社長さんかもしれないが)の案内に従った。
見学とはいえ、すでに作業を終えた工場内は人の気配もなく、
酒の貯まったタンクを見るだけだ。
去年作の酒米で今年6月に酒にして、
今はタンクに貯まったお酒を来年の6月までに出荷販売する。
来年の6月になればまた酒を造るのが今代司酒造のやり方だ。
以下はその親方曰く
「新潟には現在90程の作り酒屋がある。最盛期は130程あったが、
今でも日本で一番、造り酒屋が多い。
灘の宮水は六甲山のカコウ岩から涌き出ているので硬水、
一方、新潟の水は軟水で一般的には酒に適さなかった。
そこで軟水をカコウ岩に通して硬水にする研究もされたが
うまくいかず、『淡麗辛口』というキャッチフレーズで販売することにした。
ちなみに本来、たんれいは端麗という漢字になる。
しかし端麗の端はハシッコになり文字にするとイマイチなので、
淡麗という造語を作った。
軟水で造った新潟の酒は『淡麗辛口』というキャッチフレーズで販売し、
思わぬヒットとなった。
この『淡麗辛口』というキャッチフレーズは、
商標登録をしていなかったので、今ではビールなどでも使われ
一般用語になっている」残念至極と笑いながら嘆く。
続けて「その昔は、新潟の酒は北前船で主に北海道に運び販売し、
また帰りの便でニシンなどの海産物を運んだ。
造り酒屋は酒販売と海産物販売で大いに儲かった」と再び笑いながら語った。

工場に約1時間いたが、結局、貯蔵タンクの見学に終始した。
緑色の貯蔵タンクの本体は鉄で、
内側はホーローでコーティングされている。
私はその緑色のタンクに貼られたタンク製造会社の名盤に反応した。
実は私は灘五郷の西の端にある西郷(にしごう)の生まれ育ちだ。
名盤にはタンクの製造元である「神鋼フアウドラー」とある。
神鋼とは神戸製鋼所のことであり、私の生まれ育った町にある。
西郷(にしごう)は、沢の鶴や忠勇といった造り酒屋と、
神戸製鋼所の鋳造の町なのだ。
だからこそ灘の酒の貯蔵タンク製造は神戸製鋼所となる。

余談だが、先般出雲にロケにいった折り、吉田酒造に取材したが、
ここにも神戸製鋼所(神鋼フアウドラー)の貯蔵タンクがあった。
神戸製鋼所と灘の酒は切っても切れない関係だったようだ。

清酒月山醸造元・吉田酒造(島根県)

貯蔵タンク

さらに余談だが、兵庫県篠山市にある鳳鳴酒造でも
酒蔵の見学をさせてくれるのだが
いずれも神鋼ファウドラー製の貯蔵タンクがある。
そこには昭和25年生の貯蔵タンクがあり
銘板には「神戸製鋼所・本社工場」とある。


新潟にあるここ今代司酒造の蔵に並ぶ神戸製鋼所の貯蔵タンク。
その横には新潟に本社を置く新洋技研工業社製の
サーマルタンクが並んでいる。貯蔵タンクに保冷機能がついており
常時4℃を維持できる優れものとのこと。
ただし貯蔵タンクに反応したのは見学者7名程の中で私だけ。
見学コースに酒造りのビデオ試聴などもなく、
流暢な親方の話を聞くに止まった。
しかし、親方の話があまりに流暢なので、あっという間に時が過ぎた。
最後は試飲をしてお酒を買う鉄板コースだが、試飲をすると買いたくなる。
やっぱり買ってしまった。
確かに純米大吟醸はスッキリと喉元をすぎる。雑味がない。
しかし私は純米酒の雑味、引っ掛かりが好きだ。
試飲の末、結局、純米酒にした。

しばし歴史を感じた見学だったが、外に出ると小雪が舞っている。寒い。
ブルルという震えと共に、試飲したお酒が胃の中で回転し熱を帯びる。
今回の目的は観光ではない。さぁ仕事、仕事。
明日の撮影会場へ下見にGO!

最新の画像もっと見る

コメントを投稿