The Price Of Milk(2000)
ニュージーランド産、ミニシアター系モダン・フェアリーテール。美しい自然の中に117頭の乳牛と暮らすロブ(カール・アーバン)とルシンダ(ダニエル・コーマック)。ロブにプロポーズされたルシンダは、ふと2人の愛が永遠に続くのかどうか、不安になります。友人のアドバイスを受け、彼女はロブの愛情を確かめようとしますが、キルトとロブの大切な乳牛たちを交換してしまったことで、2人の関係は劇的に変化してしまいます。
←「俺の乳牛ちゃん・・・どこさいった・・・」
「妖精」たちに盗まれたキルト。妖精のおばあちゃんに、「キルトを返して欲しいのなら、おまえの持っている価値のあるものと交換だよ。」と言われたルシンダは、ロブの愛情を確かめたい気持ちもあって、キルトと彼の乳牛と交換してしまうのです。乳牛がロブにとってどれほど大事なものたっだのか、自分が何をしたのか、ルシンダはロブが家を出て行ってしまってから気づくのでした。
自分のしたことの償いをするにはどうしたらいいのか。時間を戻すことは出来ません。自分でしたことは自分で責任を取るしかないのです。妖精は言います。「もし乳牛を取り返したいのなら、あなたの一番大事なものと交換してあげる。」彼女は続けます。「大切なものを手に入れるには、犠牲が必要なの。」何かを手放さなければ、貴重なものは手に入らない。手に入れたい物の価値が大きければ大きいほど、失うものも、あきらめなければならないものも大きい。それが「自由」や、「お金」「愛」、なんであろうと同じです。この妖精の言葉は、そのまま私たちにも投げかけられています。ルシンダは妖精の要求をのみ、乳牛を取り返します。ロブの乳牛を取り返すために手放した、ルシンダにとって一番大切なものとは何だったのでしょうか。この部分はとても暗示的かつ哲学的です。
誰でも幸せなときは、この幸せが永遠に続けばいいのに、と願います。現実には、情熱はただの生理現象。情熱はいつの日か消えるでしょう。その代わり、本当の愛情は情熱の消えたあとも穏やかな感情となり、絆はさらに深まるはず。しかし情熱のみで消えてしまう関係と、本当の愛情とをどう見分ければよいのでしょうか?ルシンダの採った方法は、ロブを怒らせてみること。ミルクのタンクの中で泳いでみたりします。が、大事なミルクが台無しだっ!と激怒したのも一瞬で、ロブはルシンダを許します。この場面、カールのミルクタンクに飛び込むシーンの演技が好きです。その瞬時に変る表情、もしかしてカール・アーバンて凄く演技上手いのでは?と初めて思った一瞬。なんだかとてもヨーロッパ映画的演技だな・・・(ラテン系の演技?)もうひとつ、ルシンダに乳牛を売られてしまったことをロブが知った時の演技もよいです。人間本当にがあーん!とショックを受けたときのこの表情!そのあとカールが出ない声で「妖精」たちに"My Cows"と訴える涙目演技は、この映画の見所のひとつ。大きな目に涙を溜め、全身で怒りと悲しみを表現する姿は、見るたびにこっちまで悲しくなります。カール・アーバンの底力を感じる場面です。
←エプロンにつなぎ姿でポーズ。
妖精ジャクソンを演じるのはニュージーランドの女優ランギ・モツゥ(「ワンス・ワー・ウォリアース」に出てました)。いい味出しています。この映画の妖精たちはみなマオリ風。アイルランドなら妖精といえば小さいレプリコーンでしょうが、ニュージーランドではでっかい羊歯の間に立つこの小さいマオリのおばあちゃん。おばあちゃんの親戚たちは、みないかついマオリ男の妖精っていう設定も面白いです。
←ニュージーランドの妖精は寒がりだった・・・
アート系映画ですので、ストーリーとともに細部を楽しめるかがポイント。インド風にきれいに飾られた乳牛たちや、緑の草原にたなびく赤いサリーといった表現にこだわりが感じられます。また、ルシンダがバスタブの中で泣くシーン、涙の音に牛の鈴の音が重なるところが表現として私はお気に入りです。ミニシアター系がだめな人は、「つまらない」「意味わからない」などの不満がでます、たぶん。オージー/キウイ映画「エンジェル・アト・マイ・テーブル」やスペイン映画「みつばちの囁き」を見て、なかなか良い、と思った人ならこの映画もいけるはず。
←ストール長過ぎやしませんか?(ダニエル・コーマック、ジーナにも出てます。)
始終寝起き頭に無精ひげ、つなぎの下は裸かよ!のカール・アーバン、ファンには見所、突込みどころ満載です。この映画はミニシアター系ながら評判はよく、口コミで良さが広まるタイプの映画ですね。見終わった後にほのぼのとした余韻が残ります。
余談:乳牛関連では、内戦状態のころのスペイン・バスク地方の酪農一家のお話、スペイン映画「VACAS(訳:乳牛たち。)」(1992年)がお勧め。酪農家にとっていかに牛たちが大事なのか、思い知った映画でもあります。ヨーロッパ映画特有のかなりきつい表現が有りますが、それでもスペインを代表するすばらしい映画の一つだと思います。ちなみに「みつばちの囁き」の超演技派少女アナ・トレントが出ています。
ニュージーランド産、ミニシアター系モダン・フェアリーテール。美しい自然の中に117頭の乳牛と暮らすロブ(カール・アーバン)とルシンダ(ダニエル・コーマック)。ロブにプロポーズされたルシンダは、ふと2人の愛が永遠に続くのかどうか、不安になります。友人のアドバイスを受け、彼女はロブの愛情を確かめようとしますが、キルトとロブの大切な乳牛たちを交換してしまったことで、2人の関係は劇的に変化してしまいます。
←「俺の乳牛ちゃん・・・どこさいった・・・」
「妖精」たちに盗まれたキルト。妖精のおばあちゃんに、「キルトを返して欲しいのなら、おまえの持っている価値のあるものと交換だよ。」と言われたルシンダは、ロブの愛情を確かめたい気持ちもあって、キルトと彼の乳牛と交換してしまうのです。乳牛がロブにとってどれほど大事なものたっだのか、自分が何をしたのか、ルシンダはロブが家を出て行ってしまってから気づくのでした。
自分のしたことの償いをするにはどうしたらいいのか。時間を戻すことは出来ません。自分でしたことは自分で責任を取るしかないのです。妖精は言います。「もし乳牛を取り返したいのなら、あなたの一番大事なものと交換してあげる。」彼女は続けます。「大切なものを手に入れるには、犠牲が必要なの。」何かを手放さなければ、貴重なものは手に入らない。手に入れたい物の価値が大きければ大きいほど、失うものも、あきらめなければならないものも大きい。それが「自由」や、「お金」「愛」、なんであろうと同じです。この妖精の言葉は、そのまま私たちにも投げかけられています。ルシンダは妖精の要求をのみ、乳牛を取り返します。ロブの乳牛を取り返すために手放した、ルシンダにとって一番大切なものとは何だったのでしょうか。この部分はとても暗示的かつ哲学的です。
誰でも幸せなときは、この幸せが永遠に続けばいいのに、と願います。現実には、情熱はただの生理現象。情熱はいつの日か消えるでしょう。その代わり、本当の愛情は情熱の消えたあとも穏やかな感情となり、絆はさらに深まるはず。しかし情熱のみで消えてしまう関係と、本当の愛情とをどう見分ければよいのでしょうか?ルシンダの採った方法は、ロブを怒らせてみること。ミルクのタンクの中で泳いでみたりします。が、大事なミルクが台無しだっ!と激怒したのも一瞬で、ロブはルシンダを許します。この場面、カールのミルクタンクに飛び込むシーンの演技が好きです。その瞬時に変る表情、もしかしてカール・アーバンて凄く演技上手いのでは?と初めて思った一瞬。なんだかとてもヨーロッパ映画的演技だな・・・(ラテン系の演技?)もうひとつ、ルシンダに乳牛を売られてしまったことをロブが知った時の演技もよいです。人間本当にがあーん!とショックを受けたときのこの表情!そのあとカールが出ない声で「妖精」たちに"My Cows"と訴える涙目演技は、この映画の見所のひとつ。大きな目に涙を溜め、全身で怒りと悲しみを表現する姿は、見るたびにこっちまで悲しくなります。カール・アーバンの底力を感じる場面です。
←エプロンにつなぎ姿でポーズ。
妖精ジャクソンを演じるのはニュージーランドの女優ランギ・モツゥ(「ワンス・ワー・ウォリアース」に出てました)。いい味出しています。この映画の妖精たちはみなマオリ風。アイルランドなら妖精といえば小さいレプリコーンでしょうが、ニュージーランドではでっかい羊歯の間に立つこの小さいマオリのおばあちゃん。おばあちゃんの親戚たちは、みないかついマオリ男の妖精っていう設定も面白いです。
←ニュージーランドの妖精は寒がりだった・・・
アート系映画ですので、ストーリーとともに細部を楽しめるかがポイント。インド風にきれいに飾られた乳牛たちや、緑の草原にたなびく赤いサリーといった表現にこだわりが感じられます。また、ルシンダがバスタブの中で泣くシーン、涙の音に牛の鈴の音が重なるところが表現として私はお気に入りです。ミニシアター系がだめな人は、「つまらない」「意味わからない」などの不満がでます、たぶん。オージー/キウイ映画「エンジェル・アト・マイ・テーブル」やスペイン映画「みつばちの囁き」を見て、なかなか良い、と思った人ならこの映画もいけるはず。
←ストール長過ぎやしませんか?(ダニエル・コーマック、ジーナにも出てます。)
始終寝起き頭に無精ひげ、つなぎの下は裸かよ!のカール・アーバン、ファンには見所、突込みどころ満載です。この映画はミニシアター系ながら評判はよく、口コミで良さが広まるタイプの映画ですね。見終わった後にほのぼのとした余韻が残ります。
余談:乳牛関連では、内戦状態のころのスペイン・バスク地方の酪農一家のお話、スペイン映画「VACAS(訳:乳牛たち。)」(1992年)がお勧め。酪農家にとっていかに牛たちが大事なのか、思い知った映画でもあります。ヨーロッパ映画特有のかなりきつい表現が有りますが、それでもスペインを代表するすばらしい映画の一つだと思います。ちなみに「みつばちの囁き」の超演技派少女アナ・トレントが出ています。
カールは「ロード~」の中では、演技する機会をあまり与えられていないように感じていましたので、そちらの面でも興味がありますね。“つなぎの下が裸”も、大きなポイントです(爆)。お取り寄せしてみようかなあ…。
カール・アーバンの演技力を知る1作です。
この作品を見たピーター・ジャクソン監督が、カールに指輪物語への出演をオファーした、とか。。その理由は見れば納得でしょう。
>“つなぎの下が裸”も、大きなポイントです(爆)
ファンでなくても思わず突っ込みたくなるポイントです。他に突っ込む箇所と言えば「風呂のお湯で皿を洗うな!」「落ちてる下着の匂いを嗅ぐな!」とかでしょうか・・・余計なお世話でしょうかねぇ。
>大切なものを手に入れるには、犠牲が必要なの
自分にとって一番大切なものは何なのか。
その何かの為に、どんな犠牲・どこまでの犠牲を払う事が、自分には出来るか。
ほんわかしたファンタジーで重たいテーマが包まれている、とても心地良い作品でしたよね!
そして、そんな世界に溶け込んでいるカールに、新たな魅力を感じました。
たしかに、ほんわかした中に重いテーマが含まれていますね。毎日の暮らしの中でさえ、沢山の小さな選択をしつつ生きている私たちは、何か「価値あるもの」を選択するたびに多かれ少なかれ何かを「犠牲」にしているのではないでしょうか?
お約束のハッピーエンドではありますが、含みを持たせたエンディングでも良かったのでは・・・なんて、あまのじゃくな私は思ってしまったりもします。
>そして、そんな世界に溶け込んでいるカールに、新たな魅力を感じました。
同感です!私もこれを見たときは新鮮でした。めそめそしているへたれ具合がお気に入りです。
この監督の他の作品も、面白そうですね。やはり現代のフェアリーテール「TOY LOVE」が見てみたいです。