بسم الله الرحمن الرحيم
93章解説
1. 朝(の輝き)において、
2. 静寂な夜において(誓う)。
3. 主は、あなたを見捨てられず、憎まれた訳でもない。
4. 本当に来世(将来)は、あなたにとって現世(現在)より、もっと良いのである。
5. やがて主はあなたの満足するものを御授けになる。
6. かれは孤児のあなたを見付けられ、庇護なされたではないか。
7. かれはさ迷っていたあなたを見付けて、導きを与え、
8. また貧しいあなたを見付けて、裕福になされたではないか。
9. だから孤児を虐げてはならない。
10. 請う者を揆ね付けてはならない。
11. あなたの主の恩恵を宣べ伝えるがいい。
この章は、1)啓示の延滞、2)しばらくの間啓示が停止したことを原因に啓示されました。これを受けて預言者ムハンマド(平安と祝福あれ)は悲しみを感じるほどだったと言われていますが、同時に彼の敵たちは、「ムハンマドの主は彼を嫌って、放置したぞ」と馬鹿にするのでした。そこでアッラーは、預言者ムハンマド(平安と祝福あれ)を慰め、敵たちのでっち上げを跳ね返すこの章を下し給いました。
この章は、輝く朝と静寂な夜における誓いの言葉で始まります。「朝(の輝き)において、静寂な夜において(誓う)。」至高なるアッラーが被造物で誓いの言葉を述べ給う際、それがアッラーの最も偉大なみしるしの一つであることが分かります。ここでは啓示の降下とその停止が、輝く朝と暗くなり静まる夜にアッラーによって例えられています。朝と夜は、宇宙の規則を害することなく順番に現われますが、神の啓示も同じであるということです。啓示が預言者ムハンマド(平安と祝福あれ)の心を初めて照らした瞬間は、人々が活気を帯びて活動し始める朝と同じと捉える事が出来ます。そしてその後に起きた啓示の停止は、静まった夜と同じです。その後に朝がやって来る、つまりかつてのようにクルアーン啓示が再開することを指しています。
続けてアッラーから預言者ムハンマド(平安と祝福あれ)に対する呼びかけに移ります:
「主は、あなたを見捨てられず、憎まれた訳でもない。本当に来世(将来)は、あなたにとって現世(現在)より、もっと良いのである。やがて主はあなたの満足するものを御授けになる。」
アッラーは仰せになります「主は、あなたを見捨てられず、憎まれた訳でもない。」この句は先述の誓いの言葉に対する応答です。アッラーは別れて行く人のようにあなたを放置したのではなく、あなたを愛し給うた瞬間からあなたを嫌い給うたわけでもない、という意味です。「本当に来世(将来)は、あなたにとって現世(現在)より、もっと良いのである。」審判の日にアッラーが篤信者たちに準備し給うた来世の住まいは、ムハンマドよ、あなたにとってこの現世よりも優れている、という意味です。「やがて主はあなたの満足するものを御授けになる。」それには、完成した魂、当時に実現した開国によってイスラームが高められたこと、イスラーム宣教の広まり、審判の日におけるムハンマドのその共同体のための取り成しや、アッラーしか知り給わない、預言者ムハンマド(平安と祝福あれ)に取り置きされている報奨が含まれます。
そしてアッラーは預言者ムハンマド(平安と祝福あれ)に対する恩恵を数え給います:
「かれは孤児のあなたを見付けられ、庇護なされたではないか。」預言者ムハンマド(平安と祝福あれ)は両親を亡くした孤児でした。父親は胎児のころに亡くなり、母親は彼が6歳のころに亡くなりました。そこでアッラーは預言者ムハンマド(平安と祝福あれ)のために彼を庇護し、愛情を注いでくれる者を祖父アブドゥルムッタリブとし、彼の死から2年後には新たにおじアブー・ターリブを保護者とし給いました。
「かれはさ迷っていたあなたを見付けて、導きを与え、」預言者ムハンマド(平安と祝福あれ)はかつて、預言が指す信仰について無知で、迷っており、自分の民の信仰を認めることもありませんでした。そこでアッラーは啓示を通じて彼を真実の道しるべに導き給いました。
「また貧しいあなたを見付けて、裕福になされたではないか。」つまり、アッラーは貧しいあなたを見つけて、金持ちにし給うたではないかという意味です。預言者ムハンマド(平安と祝福あれ)の父は遺産としてラクダ一頭と女奴隷一人を残したのみだったので、ムハンマドは確かに貧しかったのです。そこでアッラーは、貿易で得た利益と妻ハディージャが彼に贈った彼女の資産を預言者ムハンマド(平安と祝福あれ)に与えることで彼を裕福にし給いました。
孤児であった預言者ムハンマド(平安と祝福あれ)に対する配慮から、アッラーは預言者ムハンマド(平安と祝福あれ)と信徒たちに、孤児が持つ権利に十分配慮するよう命じ、また彼らを軽蔑することを禁じ給います。「だから孤児を虐げてはならない。」
同じようにアッラーは、全ての必要とする請う者に優しくすることも命じ給いました。「請う者を揆ね付けてはならない。」言葉で彼らにきつく当たってはいけないという意味です。なお、宗教の規定について尋ねる者を指しているとも言われます。
最後にアッラーは預言者ムハンマド(平安と祝福あれ)に語りかけ給います:「あなたの主の恩恵を宣べ伝えるがいい。」ここの恩恵は、先述の導き、裕福さといった恩恵を指しています。代わって恩恵を述べ伝えることとは:貧者に対する散財を惜しまないこと、請う者の力となることであり、単に資産の多さを口で語ることではありません。それはアッラーに禁じられた高慢さを示す態度です。また、恩恵はクルアーンを指しており、それを述べ伝えるとは、クルアーンを読み、その諸真実を解明することだとも言われています。
この章は預言者ムハンマド(平安と祝福あれ)に語りかけ、慰めると同時に、全信者に対する語りかけでもあります。主との関係を強くし、誠実に主のために崇拝行為に勤しんだ信者は、もし災難が降りかかったとしても、決して主が自分を嫌ったり放置したとは思わず、反対にこの災難は自分の信仰の純度を計られるための試験であるとか、忍耐し主のご尊顔を求めて災難を受け入れればアッラーの御満足を得られる手段であると捉えます。また信者は、永続する至福が存在する来世が、過ぎ去っていく現世のどんなものよりも優れており、アッラーは忍耐強い信者に、心が満足する現世と来世のよいものをそのうち授け給うことを知らなければなりません。
(参考文献:ルーフ・アル=クルアーン タフスィール ジュズ アンマ/アフィーフ・アブドゥ=ル=ファッターフ・タッバーラ薯/ダール・アル=イルム リルマラーイーンP127~130)