131.愛と忠誠心の試練:
マッカに到着したウスマーンはアブースフヤーンとマッカの有力者たちを訪問し、アッラーの使徒(祝福と平安あれ)に代わって、託されたメッセージを彼らに伝えました。
ウスマーンが話し終えると、彼らは次のように言いました:館(やかた)の回りをタワーフしたいなら、するがいい。ウスマーンは答えました:アッラーの使徒様(祝福と平安あれ)がタワーフするまで、私は決してそのようなことはいたしません。
ウスマーンが信徒たちの元に戻ると、人々は言いました:念願のカアバでのタワーフをしてきたのか?ウスマーンは答えます:皆さん、どうお思いでしょうか。私の魂をその御手にされる御方に誓って、私はかの地に1年間留まったとしても、アッラーの使徒様(祝福と平安あれ)がフダイビーヤにいらっしゃる限り、アッラーの使徒様(祝福と平安あれ)がタワーフをされるまで、決してタワーフいたしません。確かにクライシュの人々は、私にタワーフをするよう言いましたが、私は断ったのです。
132.リドゥワーンの忠誠の誓い:
一方、アッラーの使徒(祝福と平安あれ)には、ウスマーンが殺されたとの情報が入っていました。すぐに彼は忠誠の誓いに同行していた信徒たちを呼びました。信徒たちはアッラーの使徒(祝福と平安あれ)の元に集まり、アル=フダイビーヤの地の、ある木の下で、決してここから逃げ出したりしないことを誓い合いました。アッラーの使徒(祝福と平安あれ)はご自分の手を取り、「これはウスマーンの代わりに」と言われました。サムラという種類の木の下で行われた忠誠の誓いについて、次のアーヤが啓示されました:
「かつてアッラーは信仰者たちに、彼らがおまえと木の下で誓約した時に満足し給うた。それで彼は、彼らの心の中にあるものを知り、彼らの上に静謐(せいひつ)を下し、近い勝利を彼らに報い与え給うた。」(クルアーン 勝利章18節)
133.調停と交渉:
忠誠の誓いの途中、フザーア族の男、バディール・イブン・ワルカーが現われ、アッラーの使徒(祝福と平安あれ)に話しかけ、何をしにやって来たのかと尋ねました。
アッラーの使徒(祝福と平安あれ)は言われました:私たちは戦うためにではなく、ウムラ(小巡礼)のために来たのです。クライシュは度重なる戦争で大変な思いをしているはずです。ですから、彼らが望むなら、私は彼らに猶予を与え、彼らには私と人々に道を空けてもらいましょう。もし彼らが望むなら、人々が入ったもの(イスラーム)に入れば良いでしょう。そうでなければ、解散して頂きましょう。そしてもし彼らが、戦うことしか望まないのであれば、私の魂をその御手におさめ給う御方に誓って、私は首一つになるまで彼らと戦いましょう。アッラーはそのご意志を完遂し給うでしょう。
バディールがアッラーの使徒(祝福と平安あれ)が言ったことをクライシュに伝えると、ウルワ・イブン・マスウード・アッ=サカフィーが言いました:実にこの男は君たちに合理的な案を持ちかけた。ぜひ受け入れなさい。私も彼に会いに行って来よう、皆も行って来るように、と言ったので、ウルワはさっそくアッラーの使徒(祝福と平安あれ)を訪れました。そこで見た光景にウルワは驚きました。彼(祝福と平安あれ)が吐いた唾が教友たちの一人の手に落ちると、それを身体になすり付け、また彼(祝福と平安あれ)が命じると彼らはその命令を実行し、彼(祝福と平安あれ)がウドゥーをすると、彼らは使用済みの水を求めて喧嘩しそうになりました。また彼(祝福と平安あれ)が話すと、彼らは自分たちの声を低め、尊敬の眼差しで彼に視線を注ぎました。
このような様子を見たウルワは、クライシュに戻って言いました:皆さん!私はいろいろな王、つまりキスラー、カイサル、ナジャーシー王に会ってきたが、ムハンマドの仲間が彼を讃えるように讃えられる王を見たことがない!そしてそこで見たことを彼らに話すと、「確かに君たちにとって合理的な案だ、受け入れなさい」、と再度言いました。
134.協定と和解
クライシュのもとに、キナーナ家の男と、ムカッラズ・イブン・ハフスという男が二人で現れ、彼らがムスリムたちについて見て来たことを知らせました。そしてクライシュはスハイル・イブン・アムルを、アッラーの使徒(祝福と平安あれ)に送りました。アッラーの使徒(祝福と平安あれ)はスハイルを迎えるとこう言われました:クライシュがこの男を使いにやったということは、和解を意味している。スハイルは言いました:われわれとあなたたちの協定を書き記してください。
(参考文献:「預言者伝」、アブー・アルハサン・アリー・アルハサニー・アンナダウィー著、ダール・イブン・カスィール出版、P275~277など)