イスラーム勉強会ブログ

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預言者伝51

2013年09月12日 | 預言者伝関連
155.ジャアファル・イブン・アビーターリブの帰還:
  この戦の中、アッラーの使徒(祝福と平安あれ)のもとに、彼の父方のいとこであるジャアファル・イブン・アビーターリブとその仲間たちが現われました。アッラーの使徒(祝福と平安あれ)はそのことをとても喜び、ジャアファルの額に口づけしました。嬉しさのあまり、「アッラーに誓って、ハイバルにおける勝利に喜べば良いのか、それともジャアファルの帰還に喜べばいいのか分からない!」と言うほどでした。

156.ユダヤ人による罪深き挑戦:
  またこの戦でアッラーの使徒(祝福と平安あれ)は毒を盛られました。ユダヤ人のザイナブ・ビント・アル=ハーリスという女です。サラーム・イブン・ムシュカムというユダヤ人有力者の妻でもある彼女が毒を入れて焼いた羊を彼に贈ったのです。彼は肉のどの部分が一番お好きですか?と彼女がたずねると、人々は、彼は腕肉がお好きだと言ったので、彼女は腕肉に多めに毒を盛っておきました。預言者(祝福と平安あれ)がそれを齧る時、腕肉自身がそれは毒にやられていると知らせたので、彼は齧ったものを吐き出しました。

  アッラーの使徒(祝福と平安あれ)はユダヤ人を集めて言いました:皆さん、私がお尋ねしたら、正直に答えてくれますか?
人々:はい。
彼(祝福と平安あれ):あなたたちはこの羊に毒をもりましたか?
人々:はい。
彼(祝福と平安あれ):どうしてそのようなことを?
人々:あなたが嘘つきであれば毒であなたからせいせいできるし、もしあなたが預言者であれば、毒はあなたに影響しないと考えました。
とやり取りがありました。
次にかの女がアッラーの使徒(祝福と平安あれ)のもとに連れて来られました。
私はあなたを殺したかったのです、と彼女は言いました。
アッラーの使徒(祝福と平安あれ)は言われました:アッラーはあなたによって私を危険な目に遭わせ給うことはありませんでした。
教友たちが、彼女を殺さないのですか?と言うと、彼はいいえ、と答えました。
アッラーの使徒(祝福と平安あれ)は彼女を捕らえることも罰することもなかったのですが、はじめのうちは彼女を殺しませんでしたが、一緒に羊を食べたビシュル・イブン・アルーバラーゥが亡くなったときには彼女を殺しました。

157.ハイバルの戦の影響:
  ハイバルの戦の発生と、その中で信徒たちが素晴らしい勝利を得たことは、まだイスラームに帰依するに至っていなかった諸アラブ部族の心の大きく響きました。ユダヤ人の戦争における実力や、贅沢な暮しぶり、農作物の恩恵、豊富な数の武器や動物、進撃してくる敵を通さない頑丈な砦、経験を重ねた指導者やムラッヒブのような訓練された勇士の存在は前から知られていたので彼らの惨敗がその理由となったようです。

  ハイバルの戦においては、ユダヤ人の抵抗活動の中心地を成敗するだけではない重要性を帯びた目的がありました。それは、ガタファーンというアラビア半島北方面、ヒジャーズとナジドの中間地に存在する最大のアラブ系諸部族の抵抗行為の払拭です。預言者(祝福と平安あれ)がハイバルでの戦を終えてその持ち得る力全てを携えてマッカに向かう直前までは、この土地以外に考えられる逃げ場などなかったのです。

158.勝利と戦利品:
  アッラーの使徒(祝福と平安あれ)はハイバルの戦が終わると、ファダクに向かいました。するとファダクの人たちはアッラーの使徒(祝福と平安あれ)に向けて、ファダクで得られる作物の半分を差し出すとのメッセージを送りました。彼(祝福と平安あれ)はそれを承諾しました。アッラーの使徒(祝福と平安あれ)はそのような作物をご自身や信徒たちの用益に応じて分配していました。

  続いてアッラーの使徒(祝福と平安あれ)はワーディー・アル=クラーに向かいました。それはハイバルとタイマーゥの間に位置する村々の総称です。ユダヤ人はイスラームの到来以前にそこを植民地化し、やがてファダクは彼らの活動の中心地となり、またアラブのある集団が彼らに加わりました。アッラーの使徒(祝福と平安あれ)は彼らをイスラームへと誘い、彼らがイスラームに帰依すれば財産と血は守られ、その他については来世における清算に委ねられる、としました。

  またこの戦には数々の決闘が起きました。アッ=ズバイル・イブン・アル=アワームはその勝者でした。信徒たちは勝利し、ユダヤ人はすぐに自分たちの手の中にあるものを差し出したので、信徒たちは戦利品を多く得ました。アッラーの使徒(祝福と平安あれ)はワーディー・アル=クラーで得たものを教友たちに分配し、ユダヤ人には土地とナツメヤシとそこで働く者たちを残しました。

  出発したユダヤ人たちが、アッラー使徒(祝福と平安あれ)が足を踏み入れたタイマーゥに到着すると、アッラーの使徒(祝福と平安あれ)と和解し自分たちの財産でそこに留まり続け、アッラーの使徒(祝福と平安あれ)はマディーナに戻って行きました。

(参考文献:①「預言者伝」、アブー・アルハサン・アリー・アルハサニー・アンナダウィー著、ダール・イブン・カスィール出版、P317~320)