真夏の夜のミステリー第5話をお話しましょう。
それは「職場の一泊旅行」で積丹方面をドライブした時のことでした。
実は職場の仲間に、もうお一方、霊感の強い女性がいらっしゃいました。
そして、そのドライブの間に、とうとう、それが起こったのです。
怖がりの人は絶対に読んではいけません。ラッコマンは責任が取れません。
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第5話 峠 道
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そのドライブは職場の上司、同僚など10名くらいで行った。
クルマ3台に別れて乗車し、ニセコに一泊して、翌日は、朝から積丹に向かってドライブしていた。
オイラは先頭のクルマを運転し、同乗者はオイラを含めて4名。
後続車は3名、3名の構成だったと思う。
その日は朝から天気もよく、絶好のドライブ日よりだった。
クルマの車内は、会話も弾み、楽しいドライブだったのだが、実は、この峠の登りにかかった頃から、オイラは嫌な予感を感じていた。
例のザワザワする感じだ。
「なんだろう」
誰かが語りかけてくるような、何かが身体に向かって、ぐ~ッと近づいてくるような、そんな感じがする。
峠にかかる大きな橋を渡った頃には、ザワザワ感がピークになった。
じっとしていられない感じになった。
何かが、こちらの無反応にイライラ感を募らせているようだ。
そこからは非常に相手が怒っているようなイメージが伝わってきた。
「ここは、きっと何かがありますね。」
オイラは同乗の3人に話をした。
「どうしたの?」
「うん、さっきから何か悪いものが取り憑いてきている感じなんです。」
「えっ!」
「気をつけて運転しますから、大丈夫です。後ろのクルマも気をつけてくれるといいのですが。。。。」
ちらっとバックミラーを見た。
同僚のクルマが2台、ちゃんと一定の間隔でついてきている。
「問題なしか。。。。」
そんな話をするものだから、車内は晴天の景色とは反対に一気に暗い雰囲気になった。
峠の頂上には展望パーキングがあった。
そこで3台のクルマが合流した。
後ろからついてきていたクルマのドライバーが、慌てたようにやってきた。
「いや=、さっきから同乗の彼女が、『肩が痛い、肩が痛い』って動けないんだ。」
「あぁ、やっぱり。」
「それはあの大きな橋を渡った頃じゃなかったですか。」
「えっ。どうして判ったの?」
「実はこちらのクルマでも嫌な予感を感じていたんですよ。」
「だからそんな話をしていたところです。」
「えっ。。。。」
彼女の話によると、憑依してきたのは女の子の霊だという。
霊は肩の痛みを訴えていたようで、憑依されてから自身の肩が痛んでいるのだという。
彼女は必死に霊に立ち去るように説得していたようだ。
3台のクルマは、それから峠の反対側に下りていく。
彼女の肩の痛みが消えたのは峠を下りて、反対側の海辺の道路に出た頃だった。
数日後、職場の同僚で一杯飲みながら、旅行のビデオを見ていた時だ。
峠のシーンにきて、誰かがそれに気づいた。
「おい、今、あの山の中腹に写っていたのを見たか?」
「き、着物姿の女の子ですよね。。。。。。」
巻き戻し再生してみる。
頂上から山並みの風景をパーン撮影した中に、一瞬、うっすらと白い着物を着た女性らしき影が浮かぶ。。。。
「・・・・・・」
そのビデオは、誰のものだったか、忘れてしまったが、
「災いがあっては困るので、消してしまった方がいいね」ということで、その場は一致したと思う。
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私たちの中には霊感の強い人がいます。
また突然、ある場所、ある瞬間に神霊と波長があってしまう場合があるのかもしれません。
どうぞ、ご注意くださいませ。
さてさて、まだ暑い夏が続きそうですが、今シーズンの「真夏の夜のミステリー」は、以上5話をもってお仕舞いとさせていただきます。
いずれ機会がありましたら、さらに怖いお話を語らせていただくことにいたしましょう。。。。。
真夏の夜のミステリー第4話をお話しましょう。
昭和40年代はじめの日本はどんな風情だったのかを知りたいと思ったら、映画「三丁目の夕日」をご覧になるのが一番近道かと思います。
昭和30年生まれのオイラは、まさにあの「昭和の世界」の中で育ってきたのです。
街のあちこちで工事の槌音が聞こえ、日本が新たしい時代に向かって動き始めた時代。
田舎でしたから、自動車なんて走っていることはまれ。走っているのは工事トラックくらいです。
家庭のテレビは、やっと普及し始めた頃。
当時のテレビはブラウン管で、リモコンなんてあるはずもなく、ツマミスイッチを引いてON、押してOFF。
チャンネルはガチャガチャと回すタイプでした。。。。。
そんな小学生のオイラの経験をお話しましょう。
怖がりの人は絶対に読んではいけません。
どんなことがあってもオイラは責任が取れません。。。
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第4話 バンドーさん
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あれも暑い夏のことだった。
夏休みの小学生は朝6時半から近くのグランドで行われるラジオ体操に参加することが義務づけられていた。
だから朝6時過ぎには起きて、ラジオ体操に参加、それから家族での朝食となる。
当時の我が家は祖父母、両親、妹とオイラの6人暮らし。
狭い団地の居間で円卓テーブルを囲んでの食事だった。
両親が働きに出ており、7時半頃のバスに乗っていたはずなので、その日の朝食も、間違いなく「7時前後」だったはずだ。
朝、ラジオ体操から帰ると母が一言つぶやいた。
「今日はカラス鳴きが悪いから気をつけるんだよ」
「カラス鳴きが悪い」という言葉は我が家では、よく耳にする言葉だった。
「カラスが何か不吉なことを暗示している」という意味合いなのだろう。
粗末ではあったが、一家6人で食卓を囲んでいた時。。。。。。。。
時計の針は朝の7時。
突然、我が家のテレビが点灯した。。。。。
そしてNHKニュースが流れだした。
「ダメでしょ。食べながらテレビを見るんじゃありません。」
母にそう叱られた。
当時のテレビは貴重品。
テレビのスイッチを入れるためには「オヤジの許可」が必要だったのだ。
オイラは、左脇にいた妹か、正面のオヤジがスイッチを引いたのだろうと思っていた。
しかし、他の家族からは、テレビの一番近くにいたオイラが疑われていた。。。
「僕は入れてないよ。」
そう訴えたが、相手にされなかった。。。。
その時だ。
居間から裏庭の勝手口に向かって人が歩いて行く。
いや言い方がちょっと違う。
正確には、「居間から裏庭の勝手口に向かって人のような影が、す〜と動いている。」だ。
「誰かいたよ」
「馬鹿なことを言っていないで、早くご飯を食べてしまいなさい。」
子供心に不思議に思ったが、恐怖感のようなものはなかった。
その日の夕方、両親が職場から帰ってきて「不吉なカラス鳴き」の原因が判明した。
なんでも郵便局の配達員さん。
地域では「バンドーさん」と呼ばれて明るく、勤勉で、尊敬・信頼された配達員さんが亡くなったという。
40代くらいだったのだろうか。
当時の郵便局員さんは、クルマやバイクを使う訳ではなく、自転車の前に大きな黒い革のカバンを積んで配達して歩いていた。
その日のバンドーさんは、夏の暑さがきつくなる前に遠方集落に郵便物を配達しようとしたようで、朝早くに町の郵便局を出られたようだ。
我が家には、祖父母の年金か何かの用事で訪問される予定だったという。
「バンドーさん、来ないね」
祖父母はそんな話をしながら、バンドーさんを待っていた。
しかし残念ながらバンドーさんは、その朝、自転車ごと大型工事トラックに轢かれ、即死されたようだ。
亡くなったのは、まさにその朝、7時のことだったという。
そう。
私にはわかりました。
勤勉なバンドーさんは、ちゃんと約束を守って我が家にきてくれていたのです。。。。
真夏の夜のミステリー第3話
それは高校2年の夏。。。。
同級生の何人か夏休みを利用してオイラの田舎に遊びにきた時のことです。
男の子が5人、女の子が3人だったように記憶しています。
都会育ちの同級生にとって、オイラの育った山の暮らしは珍しさもあったのでしょう。
みんな喜んで訪ねてくれたのです。。。。。
しかし、あんなことに遭遇するとは誰が想像したでしょうか。。。。。
これはオイラの体験談ですが、怖がりの人は絶対に読んではいけません。
どんなことがあってもオイラは責任が取れません。。。。。。。
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第3話 けもの道
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同級生たちは、その日の午後からオイラの家にやってきた。。。。
晴天で真っ青な空が広がり、焼けるような暑い日だった。。。。
オイラの家は貧しかったが、母親としては、息子の友達が初めて家に遊びにくるということで、精一杯の接待をしてくれたのだろう。。。
近所の畑で取れるトウキビやら、スイカやらで、もてなしてくれた。。。
友達は皆、喜んで大いに笑った。。。。。
食事の後、手軽なハイキング気分で、オイラが小学生の頃によく遊んだ河へ、みんなを連れていった。
そこは、山道を登って林道を歩き、細くなった道の途中から脇道、滝の音のする方に、ちょっと下ったところだ。
山の子供たちにとっては、河と滝が自然のプールというか、夏休みの社交場だった。
よく滝から河に飛び込んで遊んでいた。。。。
そんな馴染みの山道を歩いていると、女の子の一人が「キャーッ」と声を上げた。
足下に、小振りな茶色の蛇がくねっていた。
「お==、それはマムシで危ないから離れてね!」
オイラは得意げに知識を披露した。。。。
午後4時を回った頃に、女の子たちは2キロ先にある駅に向かって歩いて帰宅していった。
残された男の子らは、さすがに、ちょっと白けた感じにはなったが、その日はテントを2張りはってキャンプすることにしていたので、落胆してばかりはいられなかった。
せっかくなので、昼間に遊んだあの河のそばでキャンプしようということになって、リヤカーに荷物を積んで少年たちは、またあの林道を登っていった。。。。
河に下る道の脇に、ちょっと開けた場所があった。
その場所からも、奥に向かって河の方に小さな道が続いている。。。
ちょうどテント2張りが設置できるような広さだった。。。。
5人は、そこにテントを張り、キャンプファイアーをした。。。
今にして思えばまじめな高校生だったのだろう。
田舎の集落だから、手軽に酒が手に入らないこともあって、その日、アルコールは抜き。
午後7時~8時になると山の中は、真っ暗になる。
星の光が天上一杯に広がっていたのを覚えている。
昼間の遊びの疲れもあって男の子達は、早々にテントで眠ることにした。。。。
テントの中で、ほんの何分か、たわいもないおしゃべりをしていたが、皆、すぅ~と眠りに落ちていった。。。
どれぐらい時間が経ったのだろう。。。。
オイラは、例のザワザワとした嫌な予感を感じ、テントの中で一人、目を覚ました。。。。
ゴーという滝の音が遠くに聞こえている。
テントの周囲は静かだ。。。。。
風が止まっているのか、笹の葉音がしない。。。。。
虫の声がない。
河が近いし、カエルの声くらい聞こえてもよさそうなものだがな。。。。。
そんなことを漠然と考えていた。。。。。
その時、「バーーン」という轟音とともに、テントの中を頭の方から足の方に向かって「何か」が飛んだ。。。。。
透明な固まりだ!
「うぁ==」
オイラは青くなった。。。。
何だ!今のは。。。。。。
テントは倒れていない。。。。
他の友達は寝たままだ。。。。。。
あの音に気づかなかったのか。。。。
テントの周囲から異音は聞こえてこない。。。。。
腕時計を見る。。。
腕時計の蛍光塗料の針が、午前2時をちょっと回った所にあった。
「気のせいだったのか?」
その時、もう一度、「バーーン」という音とともに何かが飛んだ。。。。
また頭から足に向かって。。。。。
「ギャ==」
今度は隣に寝ていた友人も気が付いたようだ。。。。。
「何だ、今の音?」
「う、うん、何かは判らないが足の方に飛んで行った。」
「みんなを起こした方がいいかな?」
「そうだな。もし熊なんてことになったら大変だから。火を炊こう。」
みんなは、得体のしれない「何か」におびえながらキャンプファイアーの回りに集まって一夜を明かした。。。。
その「何か」は2度ばかり、少年たちを驚かせただけで、その後は何も起こらなかった。。。。
おびえていたためか、翌朝は日が昇るとともに、みんなでテントを畳みはじめた。。。。。
「グァー」
友達の押しつぶしたような声がした。。。。
「どうした?」
みんなが駆け寄る。。。。
友人の指先が射す方向、テントの中にマムシがとぐろを巻いていた。。。。
きわどい所で、何事もなく終わってよかったのだが、果たして、あの「何か」は何だったんだろうか。。。。
2つの考え方ができるように思う。
一つはマムシに襲われそうになった子供たちを救おうとする何かの手助けだ。
子供たちに危険を知らせるために、ああやって起こしてくれたのかもしれない。
そしてもう一つは、オイラたちがテントを張った場所が「けもの道」であり、「けものの霊」のとおり道でもあった。
オイラたちは、手軽に「けもの道」を遮ってテントを張ってしまったのかもしれない。
そう考えた方が、オイラのいつもの嫌な予感に関しては納得がいくのだ。。。。
マムシがテントの中に入っていたことの説明もつく。。。
けものたちは、この道を使って、むこうの河へ行き来していたのかもしれない。。。
そして、けものたちの霊も。。。。。。
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さてさて、夏まっ盛り。。。。
これからキャンプでもしようとお考えの貴方。。。。
けっして「けもの道」にテントを張ってはいけません。。。
そこは「けものの霊」のとおり道でもあるのです。。。。
真夏の夜のミステリー第2話をお聞かせしましょう。。。。
これはオイラの体験談ですが、怖がりの人は絶対に読んではいけません。
何があっても、オイラは責任が取れません。
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第2話 居心地の悪いスナック
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その店は市内の繁華街からやや離れた所にあった。
あれは今から30年も前のことになる。
オイラは30才を過ぎたころ。
季節は秋から冬になろうとしていた。
仕事の打ち上げということで、仕事帰りに職場の仲間10人程度でスナックに出かけた。
誰かが予約していたのだろうと思うが、オイラには初めての店だった。
同僚に案内されるままに和気あいあいと徒歩で、その店に向かった。
スナックの前に到着した時には、辺りは真っ暗になっていた。
古い住宅やら、事務所・倉庫やらが集まった一角。
2階建のコンクリート造りで、小奇麗な感じではあるが、周辺の暗さから、何やらポツンとした感じで、その店の灯りが点いている。
重厚な感じの入口ドアを開けて店内へ。
「うわぁ」
いきなり「ブルッ」ときた。
いつもの、あの首筋の後ろがザワザワするような感じである。
「これは何かあるな」
嫌な予感がよぎった。
店の奥のソファー席に案内された。
マスターとママさん、あと若い女性の方がお一人いたように記憶している。
オイラたちの他に客はおらず、入店時は、いたく静かな感じの店だった、
酒が入ると、同僚たちのボルテージも上がり、笑い声やらカラオケやらが店内に満ちた。
オイラも次第に、あの嫌な予感を忘れ、楽しくバーボンウィスキーを飲んでいたと思う。
1時間くらいも経っただろうか。
その硬直はいきなりきた。
背筋から首にかけて、ずっしりと重くなり、ギューッと筋肉が硬直していく。
背中が金縛りにあったような感覚だ。
「こ、これはまずい。」
「やはり、ここには何かがいる」
見える訳ではない。
聞こえる訳でもない。
よって確証はない、
しかしオイラの第六感は、あきらかに邪悪なイメージと、身の危険を察知している。
首を左右に振ったり、回したり、口を開け閉めしたり、自分なりに懸命に抵抗した。
しばらくすると、硬直は「ふぅ~」と消えていった。
「ちょっと飲みすぎたようなので先に帰るわ~」
怖くなったオイラは、そう言って仲間より、先に店を出ることにした。
出口に向かって、オイラは驚きとともに、確信した。
入った時には気にも留めなかったが、薄暗い左の壁一面に来訪者のものであろうポラロイド顔写真が貼られている。
壁一面だ。
これはいけない。
不特定の人の顔写真だけを、こうして数多く集めていると、必ず寂しい霊が集まってくる。
この店で感じたあの硬直感はただものではない。
ひとつ二つではないと思う。
それも邪悪なイメージ、緊迫感を強く感じたのだ。
その日、帰宅時には、まき塩で身を清めた。
それからオイラは二度と、その店には行っていない。
翌日、その店の場所を地図で確認してみた。
そして改めて恐怖に包まれた。
店の先には、大災害で亡くなった多くの方をまつった慰霊堂が建っているのだ。。。。