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ベロベロと舐めて、元気になって戻ってきた

2014年06月12日 | 落語・民話

柳家喬太郎の噺、「擬宝珠」(ぎぼし)によると。
 

 若旦那が病気になって寝込んでしまった。

熊さんは親に頼まれて、病気の原因、思い悩んでいる事を聞き出そうと若旦那の部屋にやって来た。
 若旦那は気も消沈して寝込んでいた。

なかなかその悩み事を口にしなかった。

でも、熊さんは落語通なので解った。

女の子だったら「崇徳院」でしょ。違っていたが、若旦那だから「幾代餅」でもないし、あ!、みかんが食べたい、でしょ。(場内大爆笑)

 徳ちゃん、熊ちゃんの仲であったのを思いだした。

小さな声で聞き取れないが「潮干狩りがしたい」でもないし「煮干しが食べたい」でもないし「擬宝珠が舐めたい」??

擬宝珠って何?「擬宝珠って、お寺の屋根の上にあったり、橋の欄干の上にあるカネの丸いの、頭がとんがっているやつ。

私は子どもの時から金物を舐めるのが好きだったんだ。

食事に行ってもカレーを食べるだろ、カレーも好きだが、スプーンが舌に触った感触や味がたまらないんだ。

それが高じて、擬宝珠が舐めたいんだ」。

 「それだったら、近くの駒形橋、両国橋、永代橋が有るじゃないですか」、「それは、もう飽きた」、「ええ、もうやってんの」、「今舐めたいのは『金竜山浅草寺の五重塔』の一番上に付いている擬宝珠。でも、あれだけは夜行ったって舐められない。

なめた~~い。舐められないなら、死んでしまうかも知れない」。

 大旦那の所に戻って今の話をした。

「擬宝珠が舐めたい」と。驚く事か両親とも擬宝珠舐めが大好きであった。

駒形の擬宝珠はドジョウの味がしたし、京都の三条大橋は八つ橋の味がしたし、ハイカラだったのはニコライの擬宝珠。

「擬宝珠でも浅草寺の五重塔の擬宝珠を舐めたい」のだと熊さんは注進した。

「そうかそうか、私たちもあれが舐めたかったが、息子に譲ろう。

あれは擬宝珠とは言わず『宝珠』と言うんだが、そんなことより舐められるように手を打とう」。

 浅草寺にお願いすると、多大なお布施と人命がかかっているので許可が下りた。

足場を組んで最上階まで登れるようになった。

 若旦那は信じられずに浅草寺までフラフラしながらやって来て、足場を見つけた。

それから後は信じられない程の力強さで屋根まで上がって擬宝珠(宝珠)をベロベロと舐めて、元気になって戻ってきた

 大旦那「私たちもあれが舐めたかった。で、どんな味がしたかい」

 若旦那「タクアンの味がしました」

 大旦那「タクアンの味?それで塩加減はどの位だった。五合位か一升位か?」

 若旦那「いいえ、も~ちょっと塩辛かった」

 大旦那「三升かそれとも五升か」

 若旦那「いいえ、六升(緑青)の味がしました」。


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