「萩原朔太郎」のこの詩集を読むと、途中で読みたくなくなってしまう。 孤独で、悲しくて、苦しくて、読むのを投げ出したくなってくる。 でも、この詩には生命力というか、力強さを感じる。暗闇を照らす ひとつの灯火のように・・ この詩が他の詩を支えている。いや、もしかしたら、他の詩が「竹」を 支えているのかもしれない。脇役として存在しているのかもしれない。 そんな事を考えていたら・・・ 「人間も、もしかしたら、一瞬の灯火を見たいが為に 今日もこうして生きているのかもしれないな」と思った。
“萩原朔太郎” 詩集 「月に吠える」より――
竹
光る地面に竹が生え、
青竹が生え、
地下には竹の根が生え、
根がしだいにほそらみ、
根の先より繊毛が生え、
かすかにけぶる繊毛が生え、
かすかにふるえ。
かたき地面に竹が生え、
地上にするどく竹が生え、
まつしぐらに竹が生え、
凍れる節節りんりんと、
青空のもとに竹が生え、
竹、竹、竹が生え・・・
(略)