『噂』(by荻原浩)、読了。
おすすめのレビューで見かけて読んだ。
因みに、2001年初出。(←この時代設定重要)
登場する舞台は、大きく二つに分かれる。
一つは、「WOM(Word of Mouth)」、いわゆる「口コミ」を宣伝に利用しようとする業者たち。
彼らは、レインマンという殺人鬼を創作し、それに狙われないお守りとして口紅を売りさばこうとする。
すると何と、創作だったはずの殺人鬼の仕業としか思えない殺人事が実際に発生してしまう。
もう一つは、その殺人事件を捜査する刑事たち。
ベテランの男性と、若手の女性とのコンビが奮闘する。
終盤、女性ならではの視点(爪の手入れ)で、犯人像が絞られていく場面は興奮した。
ところで、この作品の特徴の一つは、2001年当時のデジタル事情が全面に出されている事だろう。
作中は、まだSNS登場以前の時代、フィーチャーフォン全盛期。
ドコモのiモードが最先端で、不幸のチェーンメールが流行中。
ベテラン男性刑事は、自分の娘の同年代であるティーン達との交流に悪戦苦闘する。
今後インターネットでの噂は口コミの力を超えるか否か、という議論も興味深い。
最終的に、連続殺人鬼は逮捕され、物語は穏やかに終わる。一応は。
それが、最終ページのラスト1行で引っくり返る。
あの瞬間の悪寒は、まさにミステリならでは「奇妙な味」を感じさせた。
それでは。また次回。