リーメンシュナイダーを歩く 

ドイツ後期ゴシックの彫刻家リーメンシュナイダーたちの作品を訪ねて歩いた記録をドイツの友人との交流を交えて書いていく。

334. 18回目のドイツ旅行(14) 2人旅 バーゼルからインスブルックへ

2024年01月21日 | 旅行

▶アンブラス城(インスブルック、オーストリア)


「Tödlein」(死の形象?)ハンス・ラインベルガー  1520年頃 アンブラス城

 

▶オーストリアのインスブルックまで来た理由

 以前からハンス・ラインベルガーの「死の形象」(?)を見たいと願っていたのですが、2022年はウィーンの美術史美術館にあると思い込んでいて探しても見つけられず、帰国後によくよくカタログを見直したら、インスブルックのアンブラス城にあると書かれていたことに気が付きました。そこで、今年こそはもう一度インスブルックに行ってこの彫刻を見たいと計画したのでした。
 
※彫刻名の正しい訳がわからないのでGoogle Arts & Culture のサイトに出ていた英語名を翻訳し、「死の形象?」としておきましたが、私の思いとして(?)を付けてあります。


 2023年9月6日。バーゼルからチューリッヒまで行き、乗り換え。ここチューリッヒには以前友人だったイルマとロルフ夫妻が住んでいて4回は訪れていたのですが、ロルフが交通事故で亡くなってからイルマと連絡が取れなくなり、その後初めて来たので懐かしい思い出が蘇ります。
 インスブルックまでは予定通りの運行で無事に12時半頃到着。駅前のホテルのはずなのになかなか見つけられず、ようやく見つけて入ったらとても大きくて便利なホテルでした。荷物を預けて出かけるときに中からはガラスのドアに書かれたホテル名がくっきり見えたので「何で気が付かなかったかなぁ」と不思議でした。光線の加減でしょうか。でもあとで駅のホームから見ると建物の上方にホテルの名前が大きく書かれているのがよく見えました。

 バスの乗り場を周りの人に尋ねてもどうもよくわからず、結局駅のインフォメーションに行って安いチケットを買い、504番のバスでKの乗り場から乗ることをしっかり教えてもらってアンブラス城に出発しました。
 この日はすごく暑い日で、バスを降りてからお城までの小道も強い日差しの中でしばらく歩きました。最初に入ったお城の建物の中は武器などが中心で私の目を惹くものは無く、次に向かった建物(トップ写真・上)にようやく気になっていた「死の形象?」があったのです。しかもまだかまだかと見て行って最上階でやっと登場。思っていたよりずっと小さな彫刻でガラスケースに入っていました。写真撮影も禁止で残念でしたが、さすがラインベルガーらしい個性的な形の表現だとじっくり見入りました。帰りがけにこの彫刻が載った看板が立っていたので写してきました(トップ写真・下)。
 その時に、展示内容の動画もあったので見てみると、館内にはニコラウス・ゲルハールト・フォン・ライデンの聖母子像もあることがわかりました。今までこの情報はまったく知らなかったのでびっくりして「どこで見られるのですか?」と係員に尋ねたところ、今日はあまりの暑さで作品が傷むので既に閉館したとのこと。あら~、残念! また機会があったら是非見たい聖母子像でした。

 再びバスで駅まで戻り、駅地下で夕食を買ってホテルに正式にチェックイン。今日の目的を無事達成できてビールとお茶で乾杯しました。でも暑い中での歩きは本当に疲れました。


▶昨年行けなかったシュテアツィング(イタリア)にやっと行ってきました。

 9月7日。昨年(2022年)はインスブルックに着いた日に三津夫が発熱、翌日私も発熱したため、日帰りで行くことができずにあきらめたシュテアツィング。今年こそはハンス・ムルチャーの傑作のひとつをきちんと見たいと、今日はリベンジ旅行です。今まで乗ってきたオーストリア列車は正直あまりきれいなものではなかったのですが、ここからBrenneroまで南下する地域列車は赤いシートの目立つきれいな列車でした。途中の景色もまさにチロル。なだらかな山の麓の美しい家々を楽しみながら撮影に挑戦。景色がサッと流れてしまうのでなかなかうまく捉えられませんでしたが、こんな感じ(写真・下)です。見ているだけで爽やかな風が心の中を吹き抜けるようです。


駅からの曲がり角。右上の立て札には STERZING(ドイツ語名のシュテアツィング) と VIPITENO(イタリア語名のヴィピテーノ)
と併記されています。
 下は湿原の聖母マリア教会。



シュテアツィング祭壇 ハンス・ムルチャー 1456~1458年


教会の隣にあるハンス・ムルチャー博物館

 湿原の聖母マリア教会という名前から、もっとジメジメした場所なのかと思っていたのですが、今はそんなことはなく、昔は沼のほとりだったのかもしれないと思いました。シュテアツィング祭壇の中央に建つ聖母子像と、左隣の聖ウルスラ像はバクサンドールのカタログでハンス・ムルチャー作と紹介されていたのですが、他の3人の女性像はどうなのかしらと思っていました。あとでマティアス・ヴェニガー博士に聞いたところ、これは全部ムルチャーの作品だとのことでした。帰国後にゆっくり教会のパンフレットを読んだところ、左からバルバラ、ウルスラ、聖母子像、アポローニア、カタリーナと並んでいる女性像は全てハンス・ムルチャー作と書かれていました。念のため書いておくと、上の3体の男性像は別の作家だそうです。できればもっと近くから撮影したかったのですが、前方には縄が張ってあって入ることはできませんでした。残念です。

 教会の隣の建物にハンス・ムルチャー博物館の表示があり、期待に胸躍らせて中に入って見ました。若い女性が一人受付にいて、入館料は一人2.5ユーロと格安で驚きました。これで採算が取れるのかしら? でも一歩展示室に入るとそこはムルチャー作品の宝庫。「受胎告知のマリア」から「三王礼拝」までの4枚の祭壇画、また「キリストの捕縛」から「ゲッセマネの群像」までの4枚の祭壇画、今まで見たことのない「布を持つ4人の天使像」や騎士像などに三津夫も大喜びで撮影に没頭しています。さらに「聖櫃箱の裏側の壁(?)」という展示もありました。どう数えたら良いものかわからないのですが、確実に十数点は展示されていたと思います。現在まで重ねてきた修復の記録もあり、「もしかしたらムルチャー直筆の手紙?」と思われるような流麗な文字の文書も何枚か貼られていて大変貴重な博物館だと感じ入りました。

 帰りには満足感一杯で地元のレストランに入り、パスタを食べましたがとても美味しく感じました。


▶インスブルックでもう一度宮廷教会へ

 インスブルックに戻ったのが予定より早かったので、まだ見ていないインスブルック大聖堂と2度目の宮廷教会へ足を運びました。大聖堂は2022年には修復中で中に入れなかったのですが、ルーカス・クラナッハ(父)の聖母子がはめ込まれた大変きらびやかな祭壇画(写真・下)がありました。


インスブルック大聖堂の祭壇とパイプオルガン


▶宮廷教会のラインベルガー

 昨年は発熱後の撮影で十分写せなかったラインベルガーの彫刻を写してきました。やはり姿勢が独特で、今もそこに生きているような「かっこよさ」を感じます。ここでゆっくりと見て、写真を撮って、インスブルックの2日目は終わりました。明日はフィラハに移動です。


当時の最先端モードではないかと思われる鎧をまとったラインベルガー彫刻
 ハプスブルク家アルブレヒト4世伯 1517~1518作

※このブログに掲載したすべての写真のコピーをお断りします。© 2015-2024  Midori FUKUDA

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