リーメンシュナイダーを歩く 

ドイツ後期ゴシックの彫刻家リーメンシュナイダーたちの作品を訪ねて歩いた記録をドイツの友人との交流を交えて書いていく。

335. 18回目のドイツ旅行(15) 2人旅 インスブルックからフィラハへ

2024年01月22日 | 旅行

▶フィラハ(オーストリア)のホテル前には多くのバイクが駐車していました。


ここ
は多くのライダーが宿泊するホテルのようです。

 

▶インスブルックからフィラハへ

 2023年9月8日。今日はオーストリア国内の移動です。今まで聞いたこともなかったフィラハという町に行くことにしたのは、これも植田重雄先生が遺された『DER SCHNITZALTAR』(Herbert Schindler著 Verlag Friedrich Pustet)の影響でした。2022年にはこの本に出ていたチェコのアダモフ、オーストリアのマウアーにある迫力ある木彫祭壇を訪ねたのでしたが、今回は表紙に掲載されているマリア・ガイルの「マリアの戴冠」祭壇を見ておきたかったのです。

 インスブルックからグラーツ行きに乗り、途中のシュヴァルツアッハ-聖ファイト駅で乗り換え、お昼過ぎにフィラハに到着しました。チェックインは午後4時からなのでトランクだけ預け、町の地図を頼りに市内に出てみました。明日はこの町からマリア・ガイルまでバスが出ているのかどうか調べたくて途中のインフォメーションセンターに寄ると、若いお兄さんが親切にバス時刻表をプリントして印を付けてくれました。これで安心。バスは駅前から出るそうです。
 市内にある教会を見て回り、最後に郷土博物館へ。あまりこれといった展示物はないなぁと思いながら回っていたら、上階に明日拝観に行くマリア・ガイル祭壇の両翼裏側の祭壇画が展示されていました。明日行っても祭壇の両翼裏側までは見られないかもしれません。来て良かったと思いました。

 ホテルまで戻り、午後4時にチェックイン。部屋にはキッチンも付いていてスペースは広々としていました。でも食器が少なく、部屋の照明も暗いのが残念。駅前のスーパーで買いものをして昼食兼夕食をとりましたが、お米が売られていなかったのでパンを買ったため、パンに飽きた連れ合いは渋い顔でした。あまり喉に通りにくい食事でも美味しい葡萄が助けてくれました。

 この日、困ったことが起きました。毎日の連絡や情報を得るのに大切なスマホのためのモバイルWi-Fi用充電器がうまくコンセントに繋がらなくなってしまったのです。元々緩めだったのですが、何とかセロテープで留めたりして辛うじて充電できていたのでした。でも今日はすぐ外れてしまうのです。いくつか持って来ているコンセント口を取り替えても同様で、やっとある瞬間繋がって何とか充電することができましたが、明日からが心配です。


上の川はドラバ川。ここを越えて旧市街に入ります。


▶マリア・ガイルは遠かった…

 9月9日。この日は土曜日でしたがインフォメーションセンターのお兄さんが教えてくれたように5194番のバスは8時55分に出る予定です。ところが駅前のバス乗り場に行っても5194番というバス表示が見当たりません。4回ぐらい聞き直してやっとその表示を見つけました。それはホテルの前の停留所でした。でも時刻表には8時55分は載っていません。デジタル表示で9時30分と10時25分にこのバスが出発すると出たのですが、地元の人が「それはマリアガイルまで行かないから10時25分なら大丈夫ですよ」と言います。仕方なく部屋に戻って一休みし、再びバス停に出向くとさっきの赤いシャツのおば様がバスを待っていました。同じ方面に行くようです。このおば様がおしゃべり好きで早口で色々と話しかけてくるのです。あまり聞き取れないのですが、全然お構いなく話し続ける不思議な方でした。バスが来たら違う座席に座ったのでちょっとホッとしました。
 運転手さんにマリア・ガイルと伝えておいたので、「ここです」と合図してくれたので下車したものの、近くに全く教会は見えません。回りには大きなショッピングセンターがいくつかあったので、いざとなれば食事もトイレも何とかなると少し安心しました。
 スマホで教会の位置を出してみると、まだこの先大分歩くようです。暑い日差しが今日も照りつけています。しばらく歩いてもなかなか越えるべき川が出てこないので不安になってきました。20分以上は歩いた頃でしょうか、ようやく川が見えてきたので、これを越えると教会がありそうだとホッとしました。こちらの川はガイル川という名前だとあとで知りました。やっと標識(写真・下)が出てきて、胸をなで下ろしました。小さな教会も尖塔も見えてきました。

 中に入ると可愛らしい「マリアの戴冠祭壇」がありました。こぢんまりとまとまった祭壇で、聖母マリアが少女のようで何とも初々しいのです。堂内にあった「水をかけている聖人像」は聖フロリアンで、建物が燃えないように水をかけている様子だそうです。今までずいぶん多くの教会を訪ねてきましたが、こういう聖人彫刻は初めて見ました。

 やっと見に来られました。植田先生もここまで来られたのかなぁ、どうだろう…と思いながらバス停まで戻りました。




写真・上:翼付き祭壇 1515年頃 作者名は書かれていませんでした。


写真・上:聖フロリアン:消防隊の組織を責務とする聖人だそうです。

 

▶赤シャツのおば様

 バス停まで戻ったら、何とあの赤シャツのおば様がまた停留所にいるではありませんか。彼女は近くで買いものをして町まで戻るのだそうですが、「バスが来ない」と心配そうです。バス停の時刻表を一緒に見てみると平日の時刻表を指さすので「今日は土曜日ですよ」と言って「まだ1時間ぐらい来ませんね」と珈琲を誘ったら「もう飲んだから良いの」と言いながらマックの中には一緒に入ってきました。せめて屋内の方が暑さが凌げて良いだろうと思いながら私たちは軽食をとり、1時間後にまたバス停に行くと、バスはまた来ないのです。一体どうなっているのでしょう。朝のバスも帰りのバスも予定していた時間には来ないので、あの時刻表はあてにならないとガッカリしました。彼女はもう待ちきれないから歩いて町まで帰るといいます。以前も歩いたことがあるそうな。それなら私たちもバスは諦めて歩こうと、一緒に行くことにしました。彼女は早足でさっさと歩いて行きます。時々会話をしながらも早口なので半分ぐらいしか聞き取れません。それにしても暑い!! 三津夫は通りの反対側の日蔭のある方を歩きたかったと文句を言っていましたが、彼女は日差しを苦ともせずさっさと歩いて行きます。駅までは地元の人と一緒に行った方が安心なので何とか彼女の歩きに付いていきました。小一時間歩いたでしょうか。ようやく町の教会が見えてきました。駅の近くまで来て「ではここで」と彼女は去って行きました。不思議なおば様でした。そのおば様の写真、三津夫がマックの前で写していたのでここに載せておきます。お世話になりました。

 明日はドイツのランツフートに戻ります。


お一人住まいだというフィラハのおば様と。

※このブログに掲載したすべての写真のコピーをお断りします。© 2015-2024  Midori FUKUDA

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