下記の記事は日刊ゲンダイヘルスケアデジタル様のホームページからお借りして紹介します。(コピー)です。
「あれ、名前が出てこない」「スマホをどこかに置き忘れてきてしまった」──。加齢による物忘れは仕方のないこと。とはいえ、思い出せなかったり、忘れてしまうことが何度も続くと、自分が心配になってしまうと思います。
そのため、日頃からジムに通ったり、ジョギングをしたりして、なるべく体を動かそうと心がけている方も多いのではないでしょうか。体を動かすということでいえば、「散歩を続けると、記憶力をつかさどる海馬の体積が上がる」というピッツバーグ大学のエリクソンらの共同研究結果(2011年)が存在します。
研究では、55~80歳の約800人に、毎日40分の散歩を続けてもらったところ、1年後にほとんどの人の海馬の体積が2%ほど増加している傾向が明らかになったそうです。実に、年齢にして「1~2年若い状態に戻る」ほどの効果だといい、記憶力も改善する傾向にあったと報告されています。体に良いというイメージのある散歩ですが、まさか脳にも効果があるとは目からウロコです。
この実験は、散歩をはじめ有酸素運動をしてもらうことで、どういった効果が表れるのか検証しました。散歩以外にも、エアロビクスや水泳、ジョギングなどを行ったのですが、それらの運動にも海馬の体積増加は確認されたのです。
しかし、どこでもできて、お金もかからない散歩にも同様の効果があったというのは朗報でしょう。散歩は、コストパフォーマンスに優れた記憶力の低下を防ぐ実践術というわけです。
海馬の体積は、認知症のない高齢者でも毎年1~2%減少するといわれています。体積が減少すると認知障害を発症するリスクが高まると伝えられているだけに、散歩のような小さな積み重ねは、極めて大切といえます。また、ストレッチにそういった効果があるか否かも調べたのですが、残念ながら効果は表れなかったそうです。ですが、体には良いので、散歩しながらストレッチをすると脳にも体にも良いと言えそうです。
記憶力や集中力向上に励むなら、現在は科学・技術の向上によってさまざまなアプローチがあります。たとえば、海外では「自分の呼吸に意識を向けるスマホアプリ」が登場しています。このアプリを使って、6週間ほど瞑想トレーニングを続けたところ、集中力や記憶力が向上したとのこと。「デジタル瞑想」と呼べるような実践術が日本でもはやるかもしれません。
また、ヘッドバンド型の筐体(きょうたい)に搭載された7つの脳波センサーが瞑想中の自分の脳波を感知することで、その状況に合わせてガイド音を再生するものもあります。この脳波センシング技術は、NASAやマサチューセッツ工科大学などの研究機関での採用実績もあるほどですから、近い将来、職場や自宅に居ながらにして瞑想ができる。そんな時代が訪れてもおかしくありません。
加齢とともに記憶力はどうしても低下していきますから、過度に自分を不安視する必要などありません。費用対効果の良い散歩を取り入れ、心も脳もリフレッシュさせてください。
堀田秀吾
明治大学教授、言語学者
1968年生まれ。言語学や法学に加え、社会心理学、脳科学の分野にも明るく、多角的な研究を展開。