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まもなく「病院では死ねない時代」がやってくる…いま知っておくべき「在宅死」の本当の姿

2022-01-28 15:30:00 | 日記
下記の記事はプレジデントオンライン様のホームページからお借りして紹介します。(コピー)です。

「在宅、地獄でした」。訪問看護師の宮本直子さんは、ある患者の家族からそんな言葉を投げつけられた。患者はその翌日、亡くなった。在宅での看取りでは、患者本人は最期まで好きなものを食べられて、好きなように過ごせる。しかし、すべての人が理想的な死を迎えられるわけではない――。
1時間半後、ようやく訪問医が到着したのだが…
60代で乳がんを患った女性は、悩んだうえで、在宅医療を受けることを選択した。家族も悩んだが、本人の意思を尊重して、家で看取ることにしたという。
そしていよいよ死が迫った時、本人が痛みに苦しみ、呼吸もおかしくなったため、家族から訪問看護師の宮本直子さんのもとに連絡が入った。宮本さんはすぐに患者宅に駆けつけ、同時にその家の訪問診療を請け負っていた医師に連絡をした。しかし、その訪問医は電話越しにふんふんと、適当なあいづちをうっていたという。
看護師の宮本直子さん

「先生、もちろん来てくださいますよね?」
宮本さんは強い口調でそう言った。すぐそばで死に際の女性患者がうんうん唸っているのだ。
それから1時間半後、ようやく訪問医が到着し、家族に対してこう言った。
「これから麻薬(痛み止め)を使います。これを座薬で入れると、意識がなくなってそのまま呼吸が止まってしまうかもしれません。みなさんを集めてください」
家族が揃い、全員の同意を得て、医師はその麻薬を患者に投入した。そしてしばらくして患者宅を後にしてしまう。


「今、在宅で診るなどという状況ではありません」
しかし、医師が出ていって、1時間経っても痛みがおさまらない。宮本さんが訪問医に連絡するものの、電話に出ない。家族は「(患者の)意識がなくなってしまう」という恐怖とともに、痛みにのたうちまわる女性を泣きながら見ている。訪問医に何度も電話をかけた。ようやくつながって、「痛みがおさまらないんですが」と、宮本さんが訴える。
しかし医師は「薬を増やすしかないでしょうね」と言うだけだった。
今、ここに手持ちの薬がないのに、どうやって「薬を増やす」のか。その訪問医は再びここへ来ようとしない。宮本さんは腹が立ってたまらず、「もういいです!」と電話を切った。
宮本さんは当時所属していた訪問看護ステーションの所長に相談の上、近隣病院の緩和ケア病棟に連絡して「患者を受け入れてもらえないか」と相談したという。事情を話すと、病院側は受け入れを了承したものの、「医師の指示が必要」とのこと。
宮本さんは今度は訪問医がいる医院に連絡をかけた。事務員が電話応対をする。いくら説明しても、「あのお宅は在宅で診るということですので……」と言われるばかり。朝、患者宅を訪れて、時刻は14時をまわっていた。
「今、在宅で診るなどという状況ではありません」と、宮本さんは怒りに震える声で言った。
「聞こえませんか。背後で患者さんがずっとうなっているの、聞こえませんか。この方を緩和ケア病棟に入れさせていただきます。先生にそうお伝えください」
目の前で家族が苦しみ続けるという地獄のような時間
電話を切り、宮本さんは救急車を呼んだ。そして救急隊に患者を託し、許可を得た緩和ケア病棟への搬送を頼んだ。
救急車を見送ると、同乗できなかった家族が宮本さんを恨めしげに見つめて言った。
「在宅ってこんなんでしたか? もうトラウマです。この何時間、僕たちにとって地獄でした」
宮本さんは「そうですよね」と、何度も頭を下げるしかなかった。
「もし患者さんが(緩和ケア病棟から)帰ってきたら、訪問の先生を代えることができますから。もちろん、私たちのことも代えられます。退院する時に相談してください。いい先生、いっぱいいますから」
しかし、その女性患者は翌日、緩和ケア病棟で亡くなったという。


「訪問医」と「訪問看護師」はいつもセットではない
当時を振り返って、宮本さんはこう話す。
「麻薬の使い方は、訪問医の経験と熱意によって異なります。この患者さんの場合は、医師が家族にもっと丁寧に状況を説明して、痛みで苦しまないことを最優先にし、穏やかな最期にするような薬の使い方をすれば、家族も本人もこのような思いをしなかったでしょう。心ある訪問医なら、その患者さんがどう生きてきたか、どのような性格かをふまえて、臨機応変に薬を選択し、そのたびに説明します。家族とまだ話したい人、最後まで意識を失いたくない人、痛みに弱い人などさまざまな人がいるんです。患者さんを主としながら、さらに残された家族のことも配慮して関わる訪問医だってたくさんいます」
「訪問医」と「訪問看護師」はいつも“セット”ではない。宮本さんはその訪問医とは初めての関わりだったという。
「病院から退院する際、訪問看護が必要となると、まず訪問看護ステーションに依頼がきます。病院側から『近隣でいい先生がいたら紹介してください』と言われることもありますし、長く同じ病を患っている方はもともと地域にかかりつけ医の先生がいて、その方が主治医になる場合もあります。ケアマネージャーさんが『この訪問医の先生でお願いします』と指定する場合もあります」(宮本さん)
訪問医も訪問看護師も、遠慮なく変えていい
なかには「往診します」とうたっておきながら、よほどの緊急時でない限りは患者宅を訪れず、看護師や薬剤師に薬だけを届けさせるという「訪問医」もいるそうだ。希望をもっている患者に対し、「この病気は何年しかもたない」など心ない言葉を口にしたり、患者の要望に対し「無理でしょ」とすぐに決めつける医療従事者もいる。
「訪問医はもちろん、訪問看護師もケアマネージャーも交代できます。もし『二度と来るな!』と思うような対応をされたら、遠慮なくチェンジしてください。患者さんに関わる誰かに本音を話せばいいんです。訪問医、ケアマネージャー、私たちのような訪問看護師が話しづらかったら、地域包括センターでも、病院のソーシャルワーカーでもいい。思ったことを口にすれば、相談しやすい人に話してみれば、きっと誰かが解決する方法を教えてくれるはずです」(同)
“看護師はえらくない”と、宮本さんは思っている。患者さん主体だから「自分のやり方を通さない」のだという。もし他の看護師のやり方がその患者さんに合うのなら、そのやり方を皆で共有するのがいいのではないか、と話すのだった。


終末期にどういった選択があるのかを理解したほうがいい
元看護師で現在はケアマネージャーを務める吉野清美さんは「オールマイティな医師はいない」と話す。
「先生(医師)は神様でないですし、ミスもするし、感情もあらわにするし、自分の専門以外のことには熱心でない先生も少なくありません。先生が人柄的にも“いい人”だと思わないほうがいいですよ。病院しか知らない医師も多く、むしろみなさんより社会経験が豊富でなかったりするのです。事前に“情報”を武器として持つことも必要です」
情報とは終末期にどういった選択があるのかを理解し、それを伝えられる力とも言い換えられる。
吉野さんが今、広めているのが『私の生き方連絡ノート』(「自分らしい「生き」「死に」を考える会」編)だ。ノートは自分が望むこれからの医療・ケアについての希望を書きとめられる形式になっている。言葉はあいまいだが、ノートは各々が具体的に記していきやすいスタイルだ。
ケアマネージャーの吉野清美さんが広めている『私の生き方連絡ノート』。

例えば<今の自分が望む医療・ケアのかたち>では、次のような例があげられている。
・あらゆる手段をとって最期まで病気と闘う
・最先端の治療を受けたい
・●歳まではできるだけ治療を受けたい
・生活の質(口から食べる、声を出す、家で過ごす、仕事を続けるなど)を落とさないことを第一に考えて治療したい
・年単位で余命が期待できればつらくても治療するが、治療しても週単位でしか余命が延びないなら、その治療はしない
・生まれ故郷で療養したい
・療養は家族とともにしたい
ノートには<一年に一度(誕生日などに)は内容を見直しましょう><考えや状況は変わることがあります。考えが変わったらその都度書き換えましょう>と記されているが、これは在宅看取りにかかわるすべての医療従事者がよく口にすることだ。
訪問看護師も「家での看取りを勧める気持ちは全くない」
生き死にに関する自分の考えは、その都度変わっていい。大切なことは現時点での“自分の答え”を出すこと。
訪問看護師の小畑雅子さんは、「在宅看取りの支援をしている立場ですが、家での看取りを勧める気持ちは全くない」と話す。
「その人が望まれたところで最期を迎えられるのが幸いだと思います。だから最期の時を大切に生きてもらえるように、その時々のさまざまな選択を助けることも、私たちの重要な仕事だと思っていて、どっちが良いとか、どうあるべき、という主観をもたないようにしている」
ただし、コロナ発生以降、そして今後は一層、家で死ぬ傾向が強まる、とケアマネージャーの吉野清美さんはみる。
「超高齢化社会で入院患者が多いため、基本的にがんの末期で治療のない方は家に帰されると思います。また緩和ケア病棟での入院は費用がかさみます。医療費だけでなく、個室費がかかる場合も少なくありません。そのためコロナで打撃を受けた旅行業界やイベントに携わる方などは経済的に難しく、すでに病院で死ねない状況が発生しています。さらに病院側も、コロナ禍での人員不足や感染予防に手間暇がかかり、以前のような細かいケアができない状況があります。患者さん側もまた面会制限があって大切な人に会えないですし、家に帰りたいという方が増えているのが現実です」
ケアマネージャーの吉野清美さん。移動にはバイクを利用している。


現実的に「病院では死ねない時代」がやってくる
2020年の日本の死者数はおよそ138万人であるが、2030年頃には年間の死者数が160万人を超えると推計されている。多死社会の到来だ。病院で死にたい、いやいや家で、などの個人の希望はさておき、現実的に「病院では死ねない時代」がやってくるということだ。あるいは突然死、事故死などでそんなことを考える間もなく、人生の幕が下りるかもしれない。
それでも、自分がどこで死ぬかを具体的にリアルに考えること、死というゴールを見つめることは、だから今どう生きるのかにつながっていくと私は思う。
「家で死ぬのは簡単じゃない」
その続きは、人によりさまざまだ。だから病院で死にたい、けれどやっぱり私は家で死にたい。ギリギリまで家で、最後は病院に行きたい……など。それは、今のあなたが決めた答えだ。大切なことは、「誰かのために」「医師から言われたから」ではなく、最後こそ自分で決めていくことではないだろうか。


  • 笹井 恵里子(ささい・えりこ)
  • ジャーナリスト
  • 1978年生まれ。「サンデー毎日」記者を経て、2018年よりフリーランスに。著書に『週刊文春 老けない最強食』(文藝春秋)、『救急車が来なくなる日 医療崩壊と再生への道』(NHK出版新書)、『室温を2度上げると健康寿命は4歳のびる』(光文社新書)など。


「親が低年収だと、子は学力だけでなく運動能力も低くなる」最新研究でわかった残酷な現実

2022-01-28 13:30:30 | 日記
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親の収入や学歴は、子どもの運動能力と相関していることがわかってきた。筑波大学体育系教授の清水紀宏さんは「親の収入や学歴が低いほど、子どもの運動能力も低くなる傾向がある。こうしたスポーツ格差は深刻な問題になりつつある」という――。
※本稿は、清水紀宏編、春日晃章、中野貴博、鈴木宏哉『子どものスポーツ格差 体力二極化の原因を問う』(大修館書店)の一部を再編集したものです。
学力が低い子どもは体力がない傾向にある
ここからは、児童生徒及び保護者へのアンケート調査と体力・運動能力の測定データを関連づけて分析した結果を中心に紹介する中で、①スポーツ格差の存在(格差はあるのか)、②スポーツ格差の原因、③スポーツ格差が子どもたちに及ぼす影響などについて明らかにしていきたいと思います。
お茶の水女子大学(2014)が文部科学省による平成25(2013)年度の全国学力・学習状況調査(ナショナルビッグデータ)と補完的に実施した保護者用調査のデータを結合させて、家庭背景による学力格差の状況を明らかにして以降、学力格差の存在はもはや揺るぎのない現実と認識されています。しかし、体力・運動能力のデータについては、未だ非公開のため体力や運動能力が子どもたちの家庭背景とどのように関係しているのかについては、未知のままです。
しかし、特に近年になって体力と学力・認知機能との関係性に着目した研究が国内でも少しずつ進められています
(東浦・紙上、2017)。
例えば、春日らの研究グループは、スポーツ庁の全国体力・運動能力、運動習慣等調査と文部科学省の全国学力・学習状況調査のデータを用いて体力と学力の関連性を分析し、小・中学生ともにすべての学力項目(国語の基礎・応用問題、算数・数学の基礎・応用問題及び学力合計)と体力合計点との間に有意な関連(0.1%水準)が認められることを2019年開催の日本体育学会第70回大会において発表しました。
このように国内外の研究成果ともに、体力と学力が有意に関係していることを明らかにした研究が多くなっています(ただし、完全に見解が一致しているわけではありません)。
そこで、本調査の対象者にも同様の関連が見られるのかを分析した結果が図表1、図表2になります。
出所=『子どものスポーツ格差 体力二極化の原因を問う』)p.77 表2-3-1

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出所=『子どものスポーツ格差 体力二極化の原因を問う』)p.77 図2-3-1

今回の調査では既述の通り、学力テストの実測値を取得しませんでしたので、児童生徒自身によるによる学力の自己評定を「上の方」から「下の方」までの5件法で回答してもらった結果を使用しました。
学力の段階別に体力得点を比較(一要因分散分析)したところ、小学校高学年では、握力とボール投げを除くすべてのテスト種目で、中学生では握力を除くすべての種目で有意な関連が認められました(特に、反復横跳びとシャトルランは学力と関連が強い)。
体力が向上すれば学力も向上するという研究もある
また、小学校高学年よりも中学生において、学力の高低による体力差は拡大していました(特に学力低位の生徒の体力が低い)。このことから、学力の低い子どもは体力・運動能力も低い傾向があること、また、この傾向は学年が進むにつれて顕著になる傾向にあることが明らかとなりした。
先行研究では、学力と体力の因果関係(どちらが原因でどちらが結果か)についても検証が進んでいます。日本の子どもを対象にした縦断的研究では、運動部に所属して体力が高まると学業成績が向上し、運動部を途中退部すると学業成績が下がったことから、運動することが体力を高めるだけでなく、体力の変化が学力の変化を引き起こす要因であると考えられています(石原、2020)。
今回の分析結果と先行研究の成果を踏まえると、教育関係者が関心を寄せる学力問題(学力低下や学力格差)の改善に向けた一方策として、体力低下傾向に歯止めをかけ、体力・運動能力の二極化傾向を改善することが有効だといえるのではないかと考えます。
つまり、体力問題への対応が、同時に学力問題の解決につながっていくということです。


子どもにとってスポーツはどれほど重要なのか
本稿では、スポーツ格差すなわち家庭の社会経済的条件(所得・学歴・職業)による運動・スポーツ機会への参加及び体力・運動能力等の不平等な差異に焦点を当て、これを問題視するスタンスをとっています。
しかしながら、現代の子どもたちにとって「スポーツをすること」や、「スポーツができること」が、彼・彼女らの日々の生活の中でとるに足らない些細なことなのであれば、いかに格差が明らかになったとしてもさほど大きな社会問題とはなり得ないでしょう。そこでここでは、親と子どもの双方の立場から調査した結果をもとに、現代の子どもにとってスポーツがどれほど重要なのか、について検討してみましょう。
まず、親に対しては、次のような調査を行いました(*1)。子どもたちが生活の中でよく利用・使用する26項目の「モノ」や「コトガラ」を挙げ、これら各々について、「小学6年生の子どもが普通に生活するために次のことがらはどのくらい必要だと思いますか」と質問し、「絶対に必要」から「全く必要でない」までの5件法で回答を得ました。
全データ(幼児の保護者から中学生の保護者まで)を用いた集計の結果は図表3に示す通りです(ちなみに親の生活必需品意識について、子どもの学年による差はほとんど見られませんでした)。
出所=『子どものスポーツ格差 体力二極化の原因を問う』)p.80 表2-3-2

全26項目の中で、最も必需品意識が高かったのは、「1.毎日の朝ご飯を食べること(5点満点中4.88)」であり、最も低かったのは、「スマートフォンやタブレット(2.08)」でした。
親は子どもが運動できる状況になることを重要視している
次に、各項目に対する必要度の高さに着目してみると、子どもの生活財は、以下のように五つの層に分類できるのではないかと考えます。(図表4)。
①「最低限の生活必需財」:毎日の朝ごはんや手作りの夕食、学校行事への参加のように50%以上の親が「絶対に必要」と回答した生活財
②「生活必需財」:病院に行くこと、子ども用の本など、50%以上が「絶対に必要」「かなり必要」のいずれかに回答した生活財
③「生活必要財」:誕生日プレゼント、お年玉、大学までの教育など、70%以上が「必要」と回答した生活財
④「中間財」:生活必要財と贅沢財の中間的な位置づけのもの
⑤「贅沢財」:携帯用ゲーム機やおもちゃなど50%以上が「必要ない」と回答したもの
出所=『子どものスポーツ格差 体力二極化の原因を問う』)p.80 図2-3-2

ところで、調査26項目の中にスポーツにかかわる項目が7項目含まれていました。それらの項目が五つの層の中のどこに位置づいているかを確認してみると、「12.友だちとスポーツをすること」「18.運動遊びができる公園」「20.好きな運動やスポーツ活動をすること」は、「3.病院へ行くこと」等と並んで②生活必需財に属しており、また、「13.スポーツや運動をならうこと」や「23.親子での運動遊び」は、「5.誕生日プレゼント」などを含む③生活必要財に属していることがわかりました。
これらの結果から、現在の親にとって子どもが運動・スポーツ活動をできる状況にすることはかなり必要度の高いことであるととらえられているようです。


スポーツ格差はスクールカーストに影響する
次に、子ども側(小学校高学年及び中学生)に対しては、「あなたのクラスで“人気者(みんなから尊敬されたり好かれる人)”になるには、次のことがどのくらい重要ですか」と質問し、提示した10項目についてその重要さの程度を「とても重要」から「まったく重要ではない」までの4件法で回答してもらいました(図表5は小学校高学年の結果)。
その結果、「運動やスポーツができること、うまいこと」は、小学校高学年男子では「クラスをまとめられること」と並んで1位、女子でも「クラスをまとめられること」に次いで2位、中学校男子では3位、中学校女子でも4位であり、子どもたちにとってスポーツはクラスの中での相対的な位置(スクールカースト)を決める重要なファクターであると思われます。
出所=『子どものスポーツ格差 体力二極化の原因を問う』)p.81

以上のことから、現代の子どもたちにとってスポーツは、親のサイドからも子どもたち自身にとっても生活上かなり重要なポジションを占めているものと推察されます。
よって、スポーツが何らかの理由でできないとすればそれは一種の社会的な剥奪状態にあると見ることができるでしょうし、彼・彼女らの選択の余地のない家庭の社会経済的条件等によるスポーツ格差は当事者たちにとってもやはり重大な問題だといえるのではないでしょうか。
中学年以下の小学生は、親の年収と体力が比例している
続いて、家庭の社会経済的条件による体力の格差(結果の不平等)を検証します。
まずは家庭の経済的条件に焦点を当てます。図表6と図表7は世帯収入別、図表8と図表9は学校外スポーツへの投資額別に体力総合点を比較したものです〔世帯収入及び学校外スポーツ費(月別支出額)については、回答の分布状況に基づいてカテゴライズしました〕。
出所=『子どものスポーツ格差 体力二極化の原因を問う』)p.93 表2-3-10

出所=『子どものスポーツ格差 体力二極化の原因を問う』)p.93 図2-3-6

まず世帯収入については、高学年を除く学年段階において、体力総合点に有意な差が認められました。特に低学年と中学年の段階において、世帯収入の違いによる体力の差、すなわち低収入家庭の児童よりも高収入家庭の児童の方が体力総合得点は高いという傾向が顕著です(なぜ高学年で有意差が確認されなかったのかについては、さらなる検証が必要です)。
また、学年進行に伴う一貫した傾向は見られませんでしたが、年収400万円未満の家庭の子どもが、高所得家庭のグループに比べて明らかに体力が低いということは共通しています。


幼児期からのスポーツ投資が子どもの体力を左右する
次に、学校外スポーツへの支出額別に体力総合点を比較した結果を見てください。図表8、図表9に示すように、幼児期から中学生までの各学年段階において、いずれも有意な差が認められました。
出所=『子どものスポーツ格差 体力二極化の原因を問う』)p.94 表2-3-11

出所=『子どものスポーツ格差 体力二極化の原因を問う』)p.95

特に、学校外のスポーツ活動に「ほとんど支出なし」の児童とその他の児童生徒との間に大きな体力差があること、また、「月に1万円以上」をスポーツに支出している子どもとの体力格差は、学年進行に伴って大きくなっていくことが明らかとなりました。
このことから、幼少期から家庭におけるスポーツ投資の成果が年齢とともに蓄積され、中学校期には大きな格差となって現れるのではないかと考えられます。
図表10は、家庭によるスポーツ投資の違いがどのような体力要素と関連があるのかを検討するため、体力テストの項目別に学校外スポーツへの投資額との関連を分析した結果を示したものです。
出所=『子どものスポーツ格差 体力二極化の原因を問う』)p.95

この結果から、①「シャトルラン」「50m走」のように投資額の違いが顕著に認められる(格差が生じやすい)ものと格差が生じにくい体力要素があること、②しかし、多くのテスト項目において、スポーツ投資額の違いによる体力格差は学年が上がるにつれて拡大し、中学校段階では、ほとんどのテスト項目で極めて大きな体力差となってしまっていることが明らかとなりました(紙面の関係上、男子のみの結果を記載しましたが、女子にもほぼ同様の傾向が見られました)。
特に、学校外スポーツへの投資による体力格差が大きくなるのは、男女ともに小学校中学年であるようです。そこで、3年生と4年生に分けてさらに分析してみたところ、4年生が体力格差の拡大期であることが明らかとなりました。
中学生以降の子どもの体力は親の学歴に比例する
次に、家庭の社会経済的条件の中で親の学歴(文化資本)及び職業と子どもの体力・運動能力との関連について検討します。図表11は、中学生のデータを用いて父母の学歴別(大卒以上、短大・高専・専門学校卒、高卒の三分類)に体力の総合点を比較したものです。
出所=『子どものスポーツ格差 体力二極化の原因を問う』)p.97

幼児及び小学生については、両親の学歴による体力の有意な差は認められませんでしたが、中学生では父・母ともに学歴の高い親の方が低い親の子どもよりも体力が総合的に高い傾向が見られました。他方、両親の職業については、今回の調査データからは顕著な体力差は確認されませんでした。


保護者に友達が多いほど子どもの体力は向上する
続いて、親の社会関係資本と子どもの体力の関連について検討します。社会関係資本(ソーシャル・キャピタル)は、近年、健康格差にかかわる研究分野で特に注目をされている概念です。

清水紀宏編、春日晃章、中野貴博、鈴木宏哉『子どものスポーツ格差 体力二極化の原因を問う』(大修館書店)
そこでは、地域の人々との交流・つきあいや組織・団体への参加を通じて形成された、人々への信頼やパーソナルネットワーク、そして地域における互酬性の規範などが蓄積されている個人や社会の方が健康によい行動をとる傾向があることがわかってきています。要するに、人々の間の社会関係が良好であること、また、他者とのネットワークが広く親密であることなどが健康によい影響を与えるということです。
そこで、保護者用調査の質問項目に含まれていた「子育てや子どもの教育について相談できる知人・友人」の数(「たくさんいる」「ある程度いる」「いない」の3件法で回答)を親の社会関係資本を測る変数ととらえ、これと子どもの体力との関連を分析してみました。
図表12によれば、小学校低学年の段階から、豊かな社会関係資本をもつ親の児童の方が社会関係資本をもたない親の児童に比べて、体力総合点は有意に高くなっていました。また、その格差は、小学校高学年・中学生へと上がるにつれて拡がる傾向が見られます。
出所=『子どものスポーツ格差 体力二極化の原因を問う』)p.98

以上のことから、子どもの体力・運動能力は、家庭の経済資本だけでなく、学歴のような文化資本や社会関係資本の影響も受けていることがわかります。

  • 清水 紀宏(しみず・のりひろ)
  • 筑波大学体育系教授
  • 1961年静岡県生まれ。専門分野はスポーツ経営学。一般社団法人日本体育・スポーツ・健康学会副会長、日本スポーツ体育健康科学学術連合運営委員長、日本体育・スポーツ経営学会副会長。

血圧、本当の危険値は? 上が160以上でもOKな年齢も

2022-01-28 12:00:00 | 日記
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高血圧を始め、様々な生活習慣病の治療が始まる端緒となるのが、日本人の多くが受診する健康診断の「基準値」である。「健康」か「病気」かを見極める境界線だ。ところが、健康診断や人間ドックで“健康の判定基準”とされている数値の元になっている各学会の診療ガイドラインには、「年齢と性別」という重要なファクターが抜け落ちている。
長年、健康基準に関する研究を行なっている東海大学医学部名誉教授で『「血圧147」で薬は飲むな』著者の大櫛陽一氏が指摘する。
「米マサチューセッツ州フラミンガムの住民を追跡調査した研究では、5歳刻みで心筋梗塞など心疾患に対するリスクが異なることが明らかになりました。健診の基準は男女別、年齢別でなければ役に立たないのです。そもそも20歳の男性と、80歳の男性を同じ基準で判断できるわけがない」(以下、「」はすべて大櫛氏)
大櫛氏は2004年、日本総合健診医学会で、全国45か所の健診実施機関から約70万人分のデータを集めて解析した「男女別・年齢別健康基準値」を発表した。その数値が健診の基準値とはかけ離れていたため、各専門医学会からは猛反発が巻き起こった。
しかし、大櫛氏はその後も調査を進め、神奈川など3県の約40万人の住民の健診結果とすべての疾患による死亡の関係を追跡調査し、基準内であれば死亡率が上がらないことを確認した。
大櫛氏が調査したデータの中から、「血圧」について見てみよう。
74歳は血圧168まで基準内
写真2枚
これまで高血圧の治療を受ける患者が目標とする血圧は、75歳未満なら140/90(最高血圧/最低血圧)mmHg未満とされていたが、4月に日本高血圧学会が定める高血圧治療ガイドラインの改訂を控え、130/80未満に変更される。
しかし、「大櫛基準」では、血圧は65歳男性なら上が165、下が100までが基準範囲(正常値)で、130まで下げる必要はないことになる。なぜこれほど数値の開きがあるのか。
「そもそも高齢者は、ある程度血圧が高くなければいけないのです。年を重ねるにつれ、皮膚がかさかさになって硬くなるのと同様に、血管も硬くなっていきます」
これは動脈硬化ではなく、糖化という細胞の老化によって起きる現象だという。
「硬いゴムホースで水を送り出すには水に勢いがないといけないように、硬い血管を通して血液を送り出すには、血の勢い(血圧)も強くなければいけない。血圧が年齢によってある程度高くなっていくのは『正常』と言えるのです。だからこそ血圧の健康基準範囲も、年齢ごとに見る必要がある」
大櫛氏は年齢ごとの血圧の「大櫛基準」を下回ると起こるリスクについてこう話す。
「体内では脳が最も多く血液を必要としていますが、問題なのは脳が血液を送り出すポンプである心臓よりも上にあること。日中行動しているときなどは、重力の抵抗を受けているので、上向きに血液を送り出すには、高齢になるほど強い圧力が必要になる。圧力が弱まって脳に血が巡らないと、めまいや貧血、最悪の場合は脳梗塞の原因にもなる」
大櫛氏が特に警鐘を鳴らすのは、今回のガイドラインの改訂で目標値(降圧目標)が変更されることで、降圧剤を処方される人が増えることだという。
「私の推計では、降圧剤の服用を勧められる治療対象者はこれまで約1660万人だったのが、約4000万人に増えます。複数の研究や調査により、降圧剤で20以上血圧を下げると脳梗塞の発症率や死亡率が高まることがわかっている。急激な血圧低下により血流が悪くなり、血栓で脳の血管が詰まってしまうのです。
私が福島県郡山市の約4万人の男女(平均年齢約62歳)を平均6年間追跡調査したところ、血圧が180/110以上の人で降圧剤を使って血圧を最大20以上下げた人は、使わなかった人より、死亡率が5倍も高いという結果が出ました」

眞子さんに続き佳子さまも“皇室脱出”濃厚…高まる「伝統重視」愛子さまへの期待

2022-01-28 08:30:00 | 日記
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(C)JMPA
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岸田文雄首相は1月12日、安定的な皇位継承策を検討していた政府有識者会議の報告書を、衆参両院の議長に提出した。
 
だが、報告書ではもともと議論されるはずだった皇位継承策については先送りになっており、代わりに皇族数確保策を提言したにすぎない。皇室担当記者はこう語る。
 
「有識者会議の提言は、女性皇族の人生を大きく左右する可能性があります。女性皇族が結婚後も皇族の身分を保持するよう、制度の改正が提言されているからです」
 
秋篠宮家の長女・眞子さんは、小室圭さんとの結婚に伴って皇籍を離脱。眞子さんは中学生のころから皇族としての生活に息苦しさを感じ、“皇室脱出”を模索されていたという。佳子さまも姉の眞子さんと同じく、皇室を早く離れたいという思いが強いとみられている。
 
「皇族数確保策さえも、旧宮家の男系男子を皇族の養子にする案などは実現性に乏しく、国会で議論がすんなりまとまることはないでしょう。報告書のとおりに制度が変われば、女性皇族は結婚しても皇室にとどまることが原則となり、皇族として一生を過ごすことになります。佳子さまはそうなる前に結婚し、皇籍を離脱しようとお考えになっていることでしょう」(前出・皇室担当記者)
 
“皇籍離脱”へ邁進されることになるとみられる佳子さま。一方で、愛子さまには重責がのしかかっていくことになる。
 
「愛子さまはこの2~3年で結婚されることは考えていらっしゃらないでしょう。つまり、一生皇族として生きると覚悟されることになるということです。佳子さまが皇籍を離脱されれば、内親王は愛子さまおひとり。5歳年下の“将来の天皇”である悠仁さまを、天皇家の娘である愛子さまが支えていくことになります」(前出・皇室担当記者)
 
皇嗣の秋篠宮さま、そして悠仁さまという二人の皇位継承者がいらっしゃる秋篠宮家。だが、眞子さんの結婚をめぐる問題を発端に、秋篠宮家の方針を不安視する声も聞こえ始めた。
 
「秋篠宮家は、お子さまの自主性を尊重する教育方針で、前例を破ることも少なくはありません。眞子さんは学習院大学ではなくICU(国際基督教大学)に進学され、佳子さまもそれに続きました。悠仁さまは幼稚園からお茶の水女子大学の附属校に通われています。また、秋篠宮さまご自身も侍従・女官という職員の呼び方を廃止し、男女を区別しない『宮務官』という名称に統一されました」(前出・皇室担当記者)
 
時代に合わせて皇室のあり方、皇族方の生き方が変わっていくのは自然なこと。ただ、“小室さん問題”をきっかけに国民の不安が増大しているのは間違いない。眞子さんは結婚に関する儀式を行わず、秋篠宮さまも「儀式というものが非常に軽いものだという印象を与えた」と発言されたほどだった。
 
「秋篠宮家は時代に合わせて新たな取り組みをされてきたともいえますが、一方で伝統を軽視しているという見方もあります。そういったなかで愛子さまに期待が集まっているのは、天皇家の一人娘の愛子さまが、皇室の伝統や、昭和、平成、令和と引き継がれてきた皇室のあり方を重んじる姿勢を見せられているからでしょう」(宮内庁関係者)
■同窓会で純白の振袖姿を披露された愛子さま
 
眞子さんと佳子さまがICUを選んだ一方で、愛子さまは幼稚園から大学まで学習院、しかも天皇陛下と同じ文学部を選ばれた。また、小学生のころから蚕を飼育されたり、皇室の歴史に関心を持たれたりと、愛子さまは早くから皇族としての自覚を抱かれていたようだ。
 
1月10日、都内のホテルで学習院女子高等科の卒業生による「二十歳の会」が開催された。愛子さまは会場にお出ましになることはなかったが、リモート参加で旧友と再開。画面越しに純白の振袖姿を披露されたという。
 
20歳の節目に披露された着物姿には、日本の伝統を受け継ぎ、皇室を守っていくという愛子さまの決意が込められているのかもしれない。
 
皇室ジャーナリストの渡邉みどりさんは「愛子さまが幼いころにお召しになった御地赤は、美智子さまが鳳凰の柄にお決めになったそうです」と語る。
 
「明治時代に、皇后の正装は勲章を身につけることができる洋装に定められました。しかし、和装の美しさは日本の伝統文化として、皇室に受け継がれてきたのです。美智子さまは、’12年にエリザベス女王の即位60年を記念する晩餐会に出席された際には、尾形光琳の『燕子花図』をモチーフにした帯をお締めでした。
 
このような、いわゆる“皇室外交”の場では、やはり和装のほうが華があります。忘れてはならない日本文化として、愛子さまには今後もお召しになっていただきたいです」
 
今回の「二十歳の会」では、3年後の自分に向けて手紙を書くという時間も設けられていたという。
 
3年後、もしかすると佳子さまは結婚し皇室を離れられているかもしれない。あるいは、国会での議論が終わり、皇室典範が改正されている可能性もある。
 
国民の期待を一身に背負う愛子さまは“3年後の自分”にどのようなエールを送られたのか――。


発酵食品をとるほど腸内フローラが多様化する

2022-01-28 08:30:00 | 日記
下記の記事日経グッディ様のホームページからお借り紹介します。(コピー)です。

普段の食事で発酵食品をたくさんとると、腸内フローラ(*1)の多様性が増し、全身性の炎症が抑制される可能性があることが米国の研究で明らかになりました。
10週間の介入試験で、発酵食品を食べるほど腸内フローラの多様性が増すという結果が。(写真=123RF)
食物繊維や発酵食品は腸内フローラに好ましい影響を与えるのか?
先進国では、工業化が進むにつれて慢性疾患の患者が増加し、並行して腸内フローラも変化してきたことが分かっています。また、米国に移民した人たちを追跡した研究では、移民後に腸内フローラが速やかに欧化し、肥満が増えて、炎症レベルを示す検査値も悪化した、と報告されています。
腸内フローラは全身性の炎症状態に影響すること、そして慢性疾患の多くに慢性炎症が関係することから、食事によって腸内フローラのバランスを変化させられるなら、食習慣を見直すことにより、全身性の炎症を弱め、慢性疾患のリスクを低減できるのではないかと考えられるようになりました。
近年、腸内フローラに好ましい影響を与える可能性があるとして注目されているのが、食物繊維と発酵食品です。食物繊維の摂取量が多い人ほど死亡率が低いとする報告があるほか、食物繊維の摂取を増やすと、腸内フローラに変化が生じ、健康関連の検査値も改善することが示唆されています。
ヨーグルトやキムチなどの発酵食品が健康利益をもたらすことを示すデータも蓄積されています。発酵食品の摂取は、体重の維持に役立ち、糖尿病、がん、心血管疾患リスクの低下と関係することが、大規模な観察研究などで示唆されていました。
そこで今回、米スタンフォード大学などの研究者たちは、米国の成人を対象に、食物繊維が豊富な食事、または発酵食品を豊富に摂取する食事を10週間続けることにより、腸内フローラと免疫系にどのような影響が現れるのかを調べることにしました。
*1 ヒトの腸の中に棲みつく多種多様な細菌の集まりのこと。腸内細菌叢(ちょうないさいきんそう)とも言う。
健康な成人39人を食物繊維群または発酵食品群に割り付け
健康な成人39人を、「植物性の食物繊維が豊富な食事(食物繊維群)」または「発酵食品が豊富な食事(発酵食品群)」にランダムに割り付けました。食物繊維群には、1日あたりの食物繊維摂取量をそれまでより20g以上増やすように指示し、発酵食品群には、発酵食品の1日あたりの摂取量をそれまでより6皿以上増やすように指示しました。
食物繊維または発酵食品は、いきなり指示された量を摂取するのではなく、目標レベルまで増やすための期間として4週間の増量期間を設けました。その後、指示された量の摂取を継続し、できればさらなる増量を目指す6週間(維持期間)、さらに、本人が望む量だけ摂取する4週間(選択期間)を設けました。隔週で便と血液の採取を行い、腸内フローラの組成や機能の分析と免疫系に関する分析を行いました。
試験に参加した人の中から、試験期間中に抗菌薬の処方を受けた患者などを除外し、36人(各群18人)を分析対象としました。平均年齢は51歳で、女性が73%、白人が81%で、BMI(体格指数)の平均は25(米国では30以上が肥満)でした。割り付け時点では、両群の腸内フローラの多様性に差はありませんでした。
食物繊維群では、1日あたりの食物繊維摂取量の平均は、介入前が21.5gで、維持期間の終わりには45.1gに増えていました。発酵食品群では、介入前の0.4皿から6.3皿に増えていました。食物繊維群では、摂取エネルギーがやや増加し、鉄やマグネシウム、カリウム、ビタミンC、カルシウムの摂取が増え、動物性たんぱく質と塩分の摂取量は減少していました。発酵食品群では、ヨーグルトやキムチのような発酵野菜、発酵チーズ、発酵ドリンクなどの摂取が増えるとともに、動物性たんぱく質の摂取も増えていましたが、塩分摂取量に変化は見られませんでした。なお、食物繊維群に発酵食品の摂取増加は見られず、発酵食品群には食物繊維の摂取増加は見られませんでした。
発酵食品の摂取量が増えるにつれて、腸内フローラの多様性は拡大
まず、炎症反応の指標である「サイトカイン反応スコア(CRS)」を評価しました。CRSは、15種類のサイトカイン(*2)の反応性を評価した結果をスコア化したもので、スコアが高いほど炎症反応は低く、免疫系の反応性は高い、すなわち好ましい状態にあることを意味します。残念ながら、食事介入による両群のCRSの変化に、有意差は見られませんでした。
また、両群ともに、インスリン、中性脂肪、LDLコレステロール、HDLコレステロール、血圧、腹囲には変化は見られず、感じていたストレスレベルや健康状態、疲労感、認知機能などにも差は認められませんでした。
しかし、以下のような評価項目には差が見られました。
*2 サイトカイン:主に免疫系細胞から分泌される低分子のたんぱく質の総称。細胞間の情報伝達の役割を担っている。
食物繊維群では、腸内フローラの多様性は変化してはいませんでしたが、腸内細菌の増加を示唆するデータが得られました。これは繊維の消化に対応するための変化と考えられ、実際にグリカンを分解する糖質関連酵素の分泌が増えていました。免疫系への影響は一貫していませんでした。
これまでの報告にあったような、腸内フローラへの好ましい影響が見られなかったことについて、研究者たちは、「介入期間が短かったのではないか」との考えを示しています。
一方の発酵食品群では、維持期間の終わりにかけて、発酵食品の摂取量が増えるにつれて、腸内フローラの多様性が拡大していました。摂取量の増加と多様性の拡大の関係が最も強力だったのは、ヨーグルトの摂取でした。また、追跡期間中に、血液中のサイトカインやケモカイン、その他の炎症性たんぱく質が減少していました。減少していたサイトカインの1つであるIL-6は、慢性炎症が認められる関節リウマチや2型糖尿病、また慢性ストレスなどを有する患者で高値となることが知られています。
以上の結果は、先進国の住民に広がっている、腸内フローラの多様性の縮小と慢性炎症傾向を改善するために、発酵食品の積極的な摂取が役立つ可能性を示しました。
論文は、Cell誌2021年8月5日号に掲載されています(*3)。
*3 Wastyk HC, et al. Cell. 2021;184(16):4137-53.e14
大西淳子(おおにしじゅんこ)
医学ジャーナリスト
筑波大学(第二学群・生物学類・医生物学専攻)卒、同大学大学院博士課程(生物科学研究科・生物物理化学専攻)修了。理学博士。公益財団法人エイズ予防財団のリサーチ・レジデントを経てフリーライター、現在に至る。