村上春樹は,漱石や太宰,三島といった日本文学史上の巨匠と並ぶくらいに論じられている。 村上春樹への関心が高またのは,『1Q84』が出た直後からである。
村上春樹への評価-日本文壇は春樹に批判的だったが・・・・
出典:『英語で読む村上春樹 2017年3月号』NHK出版刊 p101~p102 栗原裕一郎
村上春樹論が多くなってくるのは『世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド』以降で,『ノルウェイの森』あたりからぐっと増えた。『ノルウェイの森』は文芸評論家には評判が悪かったが,400万部超えのベストセラーになった。 その後くらいから,蓮賓重彦さん,柄谷行人さんといった大物の文芸評論家が村上春樹を論じはじめた。蓮賓,柄谷さんは村上春樹に批判的だったが,その影響もあってか,文壇では春樹に否定的な空気が支配的になっていた。だが皮肉なことに,日本の文壇が春樹に批判的になっていくのと裏腹に,海外での評価はどんどん高まっていった。
それで次第に形勢が逆転して,日本の文壇が世界の村上におもねるというか依存するという状況になっていた。そのあたりから爆発的に村上春樹論が増えていった感じがある。それと『世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド』くらいから大学での文学研究のほうでも村上春樹を取り上げる人が現れてきて,こちらもどんどん増えている。商業出版である文芸批評と,アカデミズムである文学研究が相互にシンクロしつつ,両方の村上春樹論が膨らんでいったというのがおおまかな流れである。
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栗原裕一郎くりはら・ゆういちろう
評論家。『(盗作〉の文学史』(新曜社)で日本推理作家協会質を受賞。音楽にも造詣が深く,文学と音楽の垣根を越えた評論活動でも知られる。著書に『石原慎太郎を読んでみた』(豊崎由美氏との共著、原書房)、編書に『村上春樹を音楽で読み解く』(日本文芸社)等がある。
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世界の終りとハードボイルド ・ワンダーランド 上巻 (新潮文庫 む 5-4) |
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