マックスバリユ九州の企業戦略-県単位の地域性対応と簡便・即食を強化
出典:「月刊激流」 2020年3月号 p29~p31 国際商業出版発行
マックスバリユ九州(MV九州)https://www.mv-kyushu.co.jp/ の商品戦略の軸は「地域商品の深掘り」と「健康へのシフト」の二つ。
地域商品の探掘りは,単に地場商品の取り扱いに留まらない。地元の生産者から素材を調達し,地域のメーカーと一緒に商品を開発し,売れ筋に育成するところまで踏み込むことを目指している。また,健康関連の商品でも地域性を重視,「NBでは当たり前の糖質オフ,ビタミン強化といった健康志向の商品をローカル商品でも開発していく」。
MV九州がこうした取り組みを進める背景には全国一ともいえる競争環境にある。九州ではドラッグストアやディスカウントストアなどの異業態も含め,価格競争が極めて激しい。加えて,市場縮小と人件費の上昇が続く状況下での収益の確保は難しく,価格一辺倒で戦うだけでは,企業の存続も危ぶまれる。そこで,価格競争に巻き込まれないためには,付加価値の要素を磨き上げることが不可欠となる。
「少子高齢化の時代には地域密着と健康志向が強まるのは間違いない。そこに対応したオリジナルの商品を提供することで地域のお客様の支持を取り付けたい」とする。
いま進めている取り組みは,惣菜では,茅乃舎のだしで知られる久原醤油 (福岡県久山町)のあごだしつゆで味付けした「鶏もも唐揚 (あごだし)」 の商品化がある。
今後は,豆腐や乳製品などの日配商品でも素材の調達から製造・販売までを地域で完結する仕組みを作り,独自性のある地域商品の品揃え強化を目指す。
MV九州が地域や健康を切り口に商品開発に乗り出したのは,2016年に遡る。九州商品開発部を設立し,九州七県の地域素材を活用した九州独自の商品開発を開始した。今後は,地域性の訴求を県単位にまで絞り込み,地域に根差した商品の開発や販売に取り組む。
消費税増税後は駆けこみ需要分落ち込みから,売り上げの回復は,年末商戦まで持ち越された。だが,食品中心のスーパーマーケット(SM)ということもあり,総じて増税の影響は少なかったという。むしろ業績への影響が大きいのは,ディスカウンターやドラッグストアも含めた競争環境。同社は,「とくにここ数年,厳しさが増しておりオリンピック終了後にはさらにそれが加速する」と見る。
今年一〇月一日に予定される酒税法の改正については,「ビールの税率が下がることで一時的にはビールも伸びる可能性はあるが,長期的には単価の安い新ジャンルが売れる傾向は変わらない」と見て,新ジャンルや税率の変わらないチューハイの取り扱いを強化する方針である。
MV九州を巡る今後の最大のテーマはイオン九州,イオンストア九州 aeon-kyushu.info/static/detail/company-prof との経営統合である。今のところ統合の具体的な日程は決まっていないが,経営統合に向けた準備は進められているという。経営統合後については,「GMSにはGMSの最適,SMにはSMの最適がある」として,仕入れや物流は業態別に構築するのが望ましいとする。
なお,1月10日に発表された第3四半期の決算は,イオンストア九州が減収減益,MV九州は売り上げは前年を上回ったが,減益であった。業績の回復を待っての経営統合となると,今期も実現は難しそうである。
◆MV九州-1月10日発表の第3四半期の決算
◆イオンストア九州-1月10日発表の第3四半期の決算