老人党リアルグループ「護憲+」ブログ

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農業と食の問題を通して世界の潮流を考える(5-1)

2025-03-12 10:22:30 | 環境問題
農業と食の問題を通して世界の潮流を考える(5-1)
超加工食品の市場拡大とNOVA分類化。その対比を通して、私たちの食の流れを考える

超加工食品(Ultra-Processed Foods; UPFs)の話を続ける。

前回のポイントを再掲すると、
1. 「食べもの」のシステムに、「工業的生産化」を推進するという考えが急速に拡大し、その結果、超加工食品の市場規模も急拡大し、今や超加工食品は「地球ブランドの食べもの」になっている。
2. その結果、世界各国に古くから伝わる伝統的食べものは衰退している。
そして、「食べものの工業的生産化」には、工業型農業(集約的工業型畜産業も含む)がセットされており、よって「工業的生産化」の特徴として、少数の限られた栽培種(イネ・小麦・トウモロコシ・大豆・綿花等のGM種)や選ばれた動物のみが優先されることがあり、他の多くの植物種や動物種は数を減らしている。即ち「食べものの工業的生産化」の方向性は、生物多様性に多大な悪影響を及ぼしているのである。
3. 超加工食品の現在地として、米国や英国では市民の日々の摂取カロリーの50%以上が超加工食品から摂取しており、オーストラリアやフランスでも1/3以上、そしてアジア・アフリカ・ラテンアメリカでも急速に拡大している。
4. しかも、超加工食品の持つ影響力について国際間で大いに議論する流れは、今までのところ醸成されていないのである。

これから、食との付き合いの流れの一つとして超加工食品が急拡大している意味を、NOVA分類システムとの対比をもとに更に考えて見たい。

人々と「食べもの」との付き合い方やその向う先を決める「世の中のシステム」においては、複数のエンジンや複数の進路・回路が用意され、それぞれが様々に機能し、様々な方向に進んでいくことができることが望ましい「世の中のシステム」の筈なのに、一つのエンジンのみが優先され、向かう道筋も一つのみが優先され、それらが世の中を支配するまでに至ることが許容されている今の「世の中のシステム」に根本的な違和感を抱いている。

この優先され世の中を支配する唯一のエンジンを動かし、向かう先を一つのみに決めているのは、無論、現在「人・モノ・金」を抑え、世の流れを作りだす上で優先権を確保し抑えている社会の支配層であり、彼らの優越性が強くなりすぎていること、換言すればエリート層が提示する、エリート層にとっては都合のよいシステムを市民層にトップダウン的に下していく構造・システムが極端に優先されている、ということにあると思う。

世の中にあるトップダウン構造・システムが優先されていることにより起こっている超加工食品の急速拡大する構図に、彼らが意識していたかどうかは別にして、見方によっては『竿を指す』研究が2009年、ブラジルのサンパウロ大学のモンテイロ教授らにより行なわれた。彼らは、全ての食べものを彼らが設定する基準(「食べもの」を作る際、家庭では入手できない食品素材が使われているかどうかと共に、台所の調理手段とは全く異質の工業的製造手段が用いられているかどうか、をも基準の中に勘案している)の下、4つのグループに分ける試みを行った。彼らの行った分類、即ち『NOVA分類システム』を先ずは紹介する。

紹介する出典先は次になります。
『NOVA分類システムから見た超加工食品と食事の質と健康』
国連食糧農業機関(Food and Agriculture Organization of the United Nations)
原題:Ultra-processed foods, diet quality, and health using the NOVA classification system

(第一グループ:未加工の食べものと最小限に加工された食べもの)
未加工の食べもの(自然な食べもの)は、果物や葉野菜や茎・種子・根といった可食部の植物を指し、また動物由来のものとして、筋肉部や臓物や卵・ミルク等を指し、更に自然界のキノコ等の菌類や藻類・水等を指す。

最小限に加工された食べものは、上の未加工の自然な食べものを、貯蔵性を高めたり、食べる際の安全性を高めたり、より美味しく食べる目的で、以下に示す様々な方法で加工を加えたものであり、方法としては非可食部位や望ましくない部位の除去、乾燥化・押しつぶし・擂りつぶし・粉末化・部位別に分けること・濾過・蒸し焼き・燻製化・煮沸化・非アルコール型発酵・パスツール殺菌処理・冷却化や真空包装化等の加工処理が挙げられる。
ここで、未加工の食べものと最小限に加工された食べものとの区分けを厳格にする必要性はないとしている。

未加工の食べものと最小限に加工された食べもののエネルギー密度【簡単に言うと一口分の食べものが持っているカロリーの大きさ;一口分のカロリーが大きい食べものは、エネルギー密度が大きい食べものということになる、例えば油で揚げたスナック菓子や砂糖・脂肪分をふんだんに使った洋菓子等はエネルギー密度の大きい食べものの代表といえる;食べものと健康との関係性を考える際、この食べものが持っているエネルギー密度の大きさは、重要な考慮すべき因子とされている】は様々であり、脂質・炭水化物・蛋白の含量とそれらの含有割合も様々である。ビタミンやミネラル分やその他の生理活性物質についても同様である。

大まかに言うと、動物由来の食べものは種々のアミノ酸やビタミン・ミネラルの良い供給源であるが、エネルギー密度は通常高く、健康に問題のある動物性脂肪を多く持っており、そして食物繊維はほとんどないという特徴を持つ。
植物由来の食べものは、通常エネルギー密度は低く、食物繊維の良い供給源となる。そして多くが様々な微量栄養素・生理活性物質に富み、アミノ酸供給源としても良好な性質を持っている。

これらの状況は、種としての人間が雑食性の生き物として生れてきた来歴と結びつくことであり、古くから伝わる伝統的食べものが、同じような雑食性的組み合わせからなっている理由でもある。例えば穀物(grains and cereals)と豆類(legumes and pulses)との組み合わせ;根菜類(roots)と豆類の組み合わせ;穀物と野菜の組み合わせ;そしてそれら組み合わせへの適量の動物由来の食べものの追加である。

これらを主体にした食事というものが、健康な食事の基本となってきていたのであり、残していきたい考え方であり、食べ方であり、生き方である。

(第二グループ:台所向け・調理向けに加工された食品材料)
このグループには、油・バター・ラード・砂糖や塩が含まれる。
これらの食品材料は、第一グループの食べものや自然界から次に示す方法で製造されたもので、方法としては、圧縮・精製・擂りつぶし・製粉・乾燥などがある。

これら方法のあるものは、古い歴史を持つものであるが、現在では通常、家庭やレストラン等での食べものの調理に使いやすいよう、工業的に生産されている。

当然、このグループの食品材料は栄養性のバランスは欠いており、また塩を除いてエネルギー密度は高い(1g当たり砂糖4kcal、油脂類は9kcal)。
因みに、調理した豆類のエネルギー密度は、1g当たり1.3kcal程、調理した野菜は0.4kcal程である。

家庭で、レストランで、これらの食品材料を加え、第一グループの食べものを調理して、食べものが出来上がる。
多くの第二グループの食品材料は安価なことから、過剰使用に気を付けることが必要。

(第三グループ:加工した食べもの)
このグループには塩漬け調理した野菜や豆類の缶詰やビン詰、果物のシロップ詰・魚介類のオイル漬け缶詰・ハムやベーコン、パストラミやスモークした魚介類等の動物性食品・大半の焼き立てのパン製品・塩だけが加えられているシンプルなチーズ等が含まれる。

これらの加工した食べものは、第一グループの食べものに塩・油・砂糖・その他の第二グループの食品材料が加えられ作られており、これら加工処理によって作られた食べものは保存性が向上し、嗜好性も向上している。

多くの加工した食べものには、第一グループの食べものに2~3種の第二グループの食品材料が加えられており、家庭やレストランにおける食べものの中に混ぜられて食べられるのが普通で、時にそのままの形でスナックとして食べられることもある、非常に嗜好性を高めた食べものである。

第二グループの食品材料を使って第一グループの食べものを加工するやり方は、古くから自家製造されてきたものであり、今も残っているものではあるが、現在は大半が通常工業的に生産されている。

加工された食べもののエネルギー密度は、野菜缶詰を除いて多くの食べものは1g当たり1.5~2.5kcalの妥当なものもあれば、3~4kcalといった高いものもある。

(第四グループ:超加工食品”Ultra-Processed Foods; UPFs”が属する)
超加工食品(UPFs)は、大量生産を目標に、工業的手法や工程を使って調製し用意した食品素材を調合・混合・組み合わせ、工業的手法を用いて作りあげたものと規定している。

超加工食品の典型例は、炭酸入りソフトドリンク類・甘味のある油っこい袋入りスナック類や塩味袋入りスナック類・キャンディ類・大量生産した袋入りパンやバン類・クッキーやビスケット類・ペイストリー類(焼き菓子類)・ケーキ類・ケーキミックス・マーガリンやその他のスプレッド類・甘みを付けた朝食用シリアル類・フルーツヨーグルト類・エネルギードリンク・調理済み畜肉食品・チーズ・パスタやピザ・魚やチキンのナゲッツやスティック類・ソーセージ類・バーガー類・ホットドッグ等々である。換言すると、ファーストフード店やコンビニの棚で極めて良く見かける『食べものたち』だといえる。

超加工食品には、製造面の特徴、用いる食品素材の特徴、その配合・調合の仕方の特徴、そして製造する超加工食品の嗜好性UPを目指す細工上の特徴等において、以下に示す特徴があり、第1~3のグループの食べものと超加工食品とを判別する際に役立つことになる。

1. 第一グループの食べものを材料とし、それらを細分化・分画化し、糖質・油脂・蛋白質・澱粉・食物繊維その他ビタミンやミネラル等の各成分に分けてそれぞれを別々に利用するという思想がある。
【家庭の台所ではあり得ない工業的製造ならではの発想である】

2. そして、第一グループの食べものも、何でも良い訳ではなく、選ばれたごく少数の作物が上記発想の分画に供せられる。ここに大きな特徴がある。
選ばれる植物性の食べものは高収量作物(多収穫性・病害虫抵抗性を持たせた所謂GM作物であるトウモロコシや小麦やコメや大豆やサトウキビ・テンサイ糖)であり、動物性の食べものは集約型工業型飼育システムで育成された家畜からのものが選ばれる。
【ここでも、台所とは異なる工業的ならではの発想があり、生物多様性の減少化の問題や多肥料・多農薬・多量用水・農地の多量占有といった問題が内在していることから、水系の劣化や富栄養化そして土壌・水系の酸性化とともに、そもそも人新世時代の望ましくないサイクルを促進する材料が一杯詰まった環境を生みだすことになる】

3. 細分された各分画食品素材(糖質・油脂・蛋白質・澱粉・食物繊維・ビタミンやミネラル等)は、あるものは加水分解処理を行い、油脂類については水素添加還元処理を施し、その他化学修飾処理(澱粉の処理が典型例)を行うことも、大きな特徴である。

各種処理で得られる代表的なものに、糖類ではフラクトース・高フラクトースコーンシロップ・果汁濃縮物・転化糖・マルトデキストリン・デキストロース・ラクトース(乳糖)があり、油脂分では水素添加油脂【例えば飽和脂肪酸が一例でこれにより液状油脂を固体にしたり、油やけの心配のない油脂が提供できるという利点があり、焼き菓子等に重用されている。一方、油脂中にある全ての不飽和結合の完全水素添加を敢えて行わなかった時期には健康被害の原因となることが後に判明し使用禁止となったトランス脂肪酸がここに登場していた】やエステル交換油脂【食用油脂の融点を上げたり下げたり調整する目的で利用されているようだ】があり、蛋白では蛋白加水分解物・大豆たんぱく分画物・グルテン・カゼイン・乳性蛋白・骨から機械的に切り離された肉(mechanically separated meats)等がある。

4.そして、上記の諸作業で生産した家庭の台所では入手不可能な、各食品素材を目的性能が最大限に発揮されるよう配合し、その混合物を、例えばエクストルーダー(射出成型)処理やその他の成型加工機を使って製品を作りだしている。
【3,4共に家庭の台所では為し得ない工業的製造ならではの発想がここにもある】

5.更に大きな特徴として、商品の嗜好性や販売力を高めることを目的に、着色料やフレーバー剤やフレーバー増強剤や人工甘味料や乳化剤・増粘剤・発泡剤や消泡剤・賦形剤・炭酸化剤・ゲル化剤・つや出し剤等の食品添加物を加えることで、製造する超加工食品にお化粧を施す努力をしていることが挙げられる。加えてパッケージングも購買意欲を高める目的で工夫を凝らしていることは言うまでもない。
また、従来から言われている、嗜好性拡大のための塩分や糖分・油脂分の過剰使用による健康被害が、超加工食品の販売力の高さと相まって高まる恐れを秘めている。

6.超加工食品は、その簡便さ・利便性ならびに賞味期限の長さ、過食さえ心配な美味しさ、そして繰り返し購入が懸念される常習性といった性能をも秘めた商品と言える。
そして、これら超加工食品は、安価であり、そして至る所でもっとも購入しやすい状態で販売され、更に今風の独特の新規販売戦略も世の中に組み込まれつつあり、先に示したように、世界の各地で市場規模を急速に拡大しているのもうなずける状況がどうやら確立してきているのが、現在の世の中の大きな特徴である。
【この辺りは、非常に興味があるとともに懸念される部分でもあり、別の機会に紹介する予定です】

次に、超加工食品を他の食べものと見分ける際に役立つ情報を紹介する。

製造メーカーは、販売する商品のラベルに製造工程の情報は記載することはなく、ましてやその製造工程を採用している目的についての情報等の記載はない。このことが、時に購入時に紛らわしさ、不明確さが生れる原因となる。
無論、例えば新鮮野菜や果物・根菜類やジャガイモの様なもの、そしてパスツール殺菌処理牛乳や冷蔵販売の肉製品、さらに台所用の食用油や砂糖・塩等といったものは、明らかに超加工食品ではない。

しかし、容易に判別が付けにくいものも多くあり、例えばパン類であり、朝食向けのシリアル類である。

判別に役立つ一つに、”あらかじめ包装されている出来合いの食べもの(pre-packaged food)”やドリンク類に対し、法令で定められているラベル表示の確認を行うやり方がある。

工業的生産であるが、使用材料が小麦粉・水・塩とイーストだけから作られているパンは第三グループの加工された食べものになる。しかし、ラベル表示に乳化剤または着色剤かのいずれかが付け加わっていれば、それは超加工食品となる。

ひき割りオーツ麦(steel-cut oats)のプレーンタイプやコーンフレークのプレーンタイプや裁断された小麦(shredded wheat)は第一グループの最小限に加工した食べものになるが、同じ食べものであっても砂糖が加わっていれば、第三グループの加工された食べものとなり、さらにフレーバー剤や着色料が使われていたら超加工食品となる。

一般化すると、購入する食べものが超加工食品であるのか、異なるのかの判別は、ラベルの使用添加物に家庭の台所では見ることのない、既に上記した超加工食品向けの工業的に生産された食品材料を一つでも含んでいれば、その食べものは超加工食品とみなすことになる。

ここで、一つ注意しておく必要のある問題が、添加剤のラベル表示には、国際間で統一されていない状況があるということである。

例えば、フレーバー剤(flavours)やフレーバー増強剤(flavor enhancers)の表示については、着香剤(flavourings)や天然フレーバー(natural flavours)や人工フレーバー(artificial flavours)、更には具体的にグルタミン酸ナトリウム(monosodium glutamate)と記載されるケースもある。着色剤については、カラメル色(caramel colour)の表示もあり、乳化剤の場合には、大豆レシチン(soya lecithin as emulsifier)と記載される場合もある。
国連食糧農業機関が定期的に添加剤のリストの更新サービスを行っており、参考になる。

今回の情報はここまでとしたい。

超加工食品をめぐるMonteiro教授らのNOVA分類の動きに合わせて、超加工食品が潜在的に持っている健康への影響を調査する研究の報告例が相次ぎ出されている。

そして、超加工食品を大きな商機として拡大化を図るビジネス界の動き、殊に私たちには付いていけそうもない新たなバーチャルな広告販売戦略の動向や、Monteiro教授らのNOVA分類システムの問題点を指摘し、分類システムの改定を目指すNOVO Nordisk Foundationが資金を提供する2年をかけてのNOVA2.0の展開の動向等々、ビジネス界と学界等とのやり取りの状況の紹介は最近の重要なテーマの一つであろう。次回以降これらの紹介を展開したい。

超加工食品が大きな利益を生む商機ととらえるビジネス界のトップダウン的な上からの圧力の拡大と、結果としての超加工食品の市場の興隆を見るにつけ、これらビジネス界のエンジン推進力を、Monteiro教授らの提示したNOVA分類システムがブレーキ役として働く機能を持っていそうなことが垣間見える点が殊に興味深い。

エリート層のトップダウンの圧力が、どの分野でも幅を利かせすぎているのが、現代の特徴とすれば、これに『棹差す』動きには大いに注目したい。

山火事の頻発を目にして、参考となる考え方を提示した。
ブレーキは不充分、アクセルは踏み続ける結果、人新世時代は進み、自然界からの解答が、地球の温暖化・沸騰化の現出であり、世界は今、ある地域は異常な乾燥、別の地域は異常な豪雨。そして異常な乾燥と異常な豪雨が予測不能に急に激変する所謂「気候のムチ打ち症(climate whiplash)」または「水に着目した気候のムチ打ち症(hydroclimate whiplash)」が現出していると述べた。

『人新世時代』の進行とともに発生する災厄は『人災』であり、しかもその『人災』は、『格差の拡大を不公正・不公平な形』で私たちに強いてきているのであり、その上更に、その『人災』の発生は、今までは私たちの意識の外、無縁のものと思ってきていたものが、今や私たちはその『災厄という人災』の発生が、確率の問題と考えざるを得ないまでに私たちの目の前に浮上してきているのである。

『人新世時代』の進行につれ派生して起こる『災厄という人災』は、異常気象の進行だけではないのであり、例えば超加工食品の隆盛もその一つではないか,という思いからこの話題を取り上げております。

「護憲+BBS」「新聞記事などの紹介」より
yo-chan
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