老人党リアルグループ「護憲+」ブログ

現憲法の基本理念(国民主権、平和、人権)の視点で「世直し」を志す「護憲+」メンバーのメッセージ

本日は、徒然なるままに、三題。

2023-06-26 15:00:07 | 社会問題
(1)西日本新聞【社説】強制不妊報告書 国は違憲と認め救済急げ 6/24   ほかhttps://www.nishinippon.co.jp/item/n/1101037/
 ○旧優生保護法による障害者への強制不妊手術を巡り、改めて驚くべき実態が明らかになった。この問題について、衆参両院の事務局が初めてまとめた調査報告書である。
 被害者に一時金を支給する現在の救済法で幕引きすることは許されまい。政府と国会は自らの責任と優生思想に基づく施策の違憲性を明確に認め、当事者が納得できる救済策を急ぐべきだ。
 報告書は1948~96年に存在した旧法による被害実態や立法過程を対象とした。
 驚きを禁じ得ないのは、手術された最年少が9歳の男女だったことだ。男児は昭和の30年代後半、女児は40年代後半の事例である。2人は「不妊」の意味すら理解できなかったのではないか。後に現実を知った時の衝撃と屈辱に思いを致すと胸が痛む。
 報告書によると、政府は別の手術と偽ることを許容し、都道府県に件数を増やすよう求めていた。たとえ国の要請とはいえ、これを推進した地方自治体や地域社会も免罪されるとは言えないだろう。
 手術総数は2万5千件近くを数え、宮城県は男女ともに10代が最多だった。全国で最年長とみられるのは57歳男性である。旧法ですら認めていない放射線照射や子宮、睾丸(こうがん)摘出を実施した事例もあった。言語道断の行為である。
 報告書は、議員立法された旧法は衆参両院の全会一致で成立し、批判的に議論された形跡はなかったとする。
 戦後、障害者が働き、子どもを産み育てる環境は保障されない状態が続いた。「不良な子孫は残さない」という優生思想がまかり通った。
 この深刻な人権侵害の実態と国の責任について、日本社会の関心が高まったのは2018年、わずか5年前のことだ。宮城県の女性が初めて国に損害賠償を求めて提訴したのがきっかけだ。 <後略>

★更に、不届きなのは、政府が、未だに全面解決を放置していること。自民党の習い性⁉ だが、安倍信三の場合は、念がいってる。議員立法1律300万円支給案を出してきて、否なら、法案を通さない⁉と。 ビタ銭投げを飲ませた。

(2)装着式カメラ導入や受刑者「呼び捨て」見直し検討 暴行問題で  NHK NEWS WEB 6月23日 15時26分  https://www3.nhk.or.jp/news/html/20230623/k10014107411000.html
 ☆名古屋刑務所の複数の刑務官による受刑者への暴行問題で

★有識者の第三者委員会の視座、提言を支持し、今後共の活躍を期待するもの。一過性ではダメ。恐らく  
★オマケ=「さん」付け、改革は、入管や刑務所だけではもったいない。TVメディア始め、新聞等々、これに倣いましょう。…時々、犯人、被疑者らを、男、女など呼び捨て、非正規、無職など、聞きづらいセリフ蔑称が、ゴロゴロ、是非、きっと止めて欲しいな。

(3)日本の防衛費増額「私が説得」バイデン氏 大統領選にアピール NHK NEWS WEB 6月23日 13時56分 https://www3.nhk.or.jp/news/html/20230623/k10014107181000.html
  ☆アメリカのバイデン大統領は来年の大統領選挙に向けた会合で、日本の防衛費の増額について「私は3回、日本の指導者と会い、説得した」などと述べて自身が働きかけた成果だとアピールしました。
 来年の大統領選挙で再選を目指すアメリカのバイデン大統領は選挙活動を本格的に始めていて、20日、西部カリフォルニア州で支持者を集めた会合で演説しました。
 ホワイトハウスによりますとバイデン大統領は会合で日本の防衛費の増額について「日本は長い間、防衛予算を増やしてこなかったが私は広島を含めて3回、日本の指導者と会った。私は彼を説得し、彼自身も何か違うことをしなければならないと考えた。日本は防衛予算を飛躍的に増やした」と述べて自身が岸田総理大臣に直接、働きかけた成果だとアピールしました。
  ☆松野官房長官「防衛費の増額はわが国自身の判断」  

★戦争大好き人間だったんだねー 武器生産は、GDP引き上げに直結… 負け知らず⁉ 歌を忘れるはずはないか。 米国の戦争抑止は、夢のまた夢⁉ 戦争、ロシア相手に、山師、一人でできる訳もなし… おねだりが止まらない。

「護憲+コラム」より
蔵龍隠士
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22日23日にパリで開催されていた「新しい世界金融協定」に向けたサミットについて

2023-06-26 10:15:08 | 環境問題
2日間にわたり、40人の国家元首と1500人にのぼる参加者が集まり「新たな世界金融協定に向けたサミット」が金曜日にパリで終了した。

閉幕記者会見で、サミットを主催したマクロン大統領は「この2日間で、我々は地球の為の新たな合意を構築することが出来た。我々は国際金融構造とガバナンスの抜本的な改革に向けた道筋を構築する、共通の政治的見解を詳述する文書を作成した」と述べ、不平等との戦い、そして気候変動への対応という我々が直面している二重の課題に対し、大きな転換点になったと主張している。

先日の記事「今年11月末からドバイで開催のCOP28会議の意義について」の直後に早速マクロン大統領がドイツのボン会合を引き継ぐようにパリで開催した2日間にわたる会合の要点を紹介したい。

出典はDeutsche Welle;Pakistan Dawn; Capital News Kenya。

今回のサミットの成果だ、と主張されている部分を中心に、そして指摘される問題点も紹介したいと思います。
そして普段彼らの意見を読む機会がすくないと思い、ケニアのWilliam Ruto大統領の話を最後につけています。

〔成果と主張されている部分と指摘される問題点〕
1. 1000億ドル規模の特別引き出し権(Special Drawing Rights, SDR)を途上国へ移転
SDRとは、IMFが保有する通貨へのアクセスを途上国に提供し、通貨と交換ができる権利のこと。途上国にこの権利の移転が可能となる状況が生まれたことを、パリに本拠をおく気候ベンチャーキャピタルのIsabelle Albertさんは、今回のサミットの具体的な成果の一つと指摘している。

2. サミットの参加者らは、途上国の気候変動対策を支援する1000億ドルを拠出する2015年設定の目標が今年達成される可能性が高いことを予測している。

3. 多国間開発銀行(Multilateral Development Banks, MDB)の融資能力の拡大
今後10年間で、バランスシートが最適化され、より多くのリスクが取られることが予想されることから、多国間開発銀行(MDB)の融資能力が全体的に増加し、2000億ドル規模になるとの予測が為されている。今後の改革が実施されるとMDBはより多くの資本が必要と見込まれ、より多くの資金を注入する必要性のあることを富裕国が初めて認めている。

4. ジャストエネルギー移行パートナーシップ(Just Energy Transition Partnership, JETP)
これまで大半の資金提供は特定のプロジェクトに向けられてきた。より大きい効果を資金提供に持たせるにはより体系的なアプローチが望ましいと考えられ、ジャストエネルギー移行パートナーシップ(Just Energy Transition Partnership, JETP)の取り組みがその第一歩だった、と捉えられている。
 このJETP投資スキームでは、富裕国は化石燃料に依存する途上国を支援してクリーンエネルギーへの転換を図り、そして転換過程で生じる社会的影響に対して手当てするというものである。2021年11月以降、南アフリカ・インドネシア・ベトナムの3つのJETPが締結され、セネガルが今回のパリサミットで4番目のJETP国となった。

5.2020年に債務不履行となっていたザンビアの63億ドルの債務の再編についての合意
この件でアメリカと中国とが、長らく対立していた。この件で大半の債権をもつ中国は世界銀行やIMFなどの金融機関に対し、損出の一部を吸収するように求めているが、金融機関や西側諸国はこれに反対している。

6.今回のパリサミットの大きな成果として、富裕国側が、途上国も意思決定プロセスに加わることが重要であることに理解を示したことだと、気候経済委員会委員長のロレーヌ大学Damette教授が言っている。

7.Damette教授を始めとして多くの人が、特にアメリカとG7が主導している世界銀行とIMFが現在の差し迫った課題に取り組む組織としては不適格になっているとして、広範な改革が必要だとしている。殊にトップダウンアプローチ手法の両組織の体質が問題視されており、パリに本拠地を置くシンクタンク気候経済研究所のClaireI Eschelierさんもボトムアップの手法が合理的としている。

8.今後10年間で、多国間開発銀行(MDB)の融資能力が全体的に増加し、2000億ドル規模になるとの予測が為されており、したがって富裕国がより多くの資金をMDBに注入すると見込まれている。この件に関し一部の気候変動活動家にはこの構図に批判的な人もいる。例えば気候アクションネットワークインターナショナルのHarjeet Singhさんは「気候変動対策を強化するには多額の財源が緊急に要求されることは理解できるが、現在の構図は民間投資に偏りすぎている」と指摘している。

9.Wind CapitalのAlbertさんは、パリサミットは正しい方向への第一歩ではあるが今後我々が公正な移行を確実に達成できるかどうかは、今後の数カ月、数年の行方を注視する必要があるとしている。今回の合意が今年末のドバイCOP28の成功につながるよう期待したいと述べている。

次いでパリサミットにも参加したケニアのWilliam Ruto大統領の話を紹介する。出典はCapital News Kenyaからです。

Ruto大統領は先ず世界的な融資システムが不公平であり、懲罰的なものであり、全ての人に公平なチャンスを与えるものでないと、主張する。現在、貧困国はリスクの大きい借り手と位置付けられ、富裕国より8倍高い金利を設定されている、という。

それでも彼は「ケニアは施しの資金援助は望まない」とした上で、次のように語る。
「人は平等な存在だとする構図・絵柄を好まない人々も居る。そういう人は得てして我々アフリカ人は絶えず支援が欲しいと言い続ける状況の続くことを願うものである。だが我々は“気候変動の被害者だ”や“施しを”といった不平をいう話には飽きあきしているのだ。」 「我々アフリカ人は支援を望むのではなく、気候変動を含めて現在の課題解決に関与したい。」
 
またRutoさんは、ケニアが開発援助よりも民間投資を呼び込むことを望み、そしてIMFと世界銀行の改革を要求している。そして途上国の債務管理の再考を支持し、海上輸送と航空輸送及び金融取引に対する国際税の導入を支持している。
 
ケニアは債務返済に年間100億ドルを支払っている。もしもこれを国の発展に使えるならば、これは迅速に利用可能な、とても大きい国の資源となり、莫大な効果を発揮するものになるだろう、とした上で、世界銀行やIMFを含む国際金融機関に借りている借金が20年間猶予付き50年ローンに変換されさえすれば、この我々の希望する構図は実現可能なのである、とRutoさんは主張している。ケニアの希望する構図は、借金から逃げ出すのではなく、返済スケジュールの変更を指摘しているのである。

アフリカの人々の中にはロシア進攻後、ただちにウクライナに数10億ドル規模の支援が実施される一方で気候変動問題に対する富裕国側の鈍さに苛立ちをしめす動きも見られる。Rutoさんも「ウクライナは我々が直面している気候変動という問題に比して大きいものではなく、我々は他の全ての問題を脇においてでも気候変動に一致して対処すべき」としている。
 
Rutoさんはアフリカの気候変動問題に関して強力な姿勢をもっていて、9月初旬にケニアでアフリカ気候サミットを主催する意向である。
  
Rutoさんは、気候変動対策の請求書の支払いは富裕国だけとする考えには同調しない。我々全員で支払いたいとしている。その理由は、我々は現在の気候変動問題に緊張感を持ち続けていたいし、炎上する世界に常に目を向けていたし、そして関与し続けていたいからである。

「護憲+BBS」「新聞記事などの紹介」より
yo-chan
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今年11月末からドバイで開催のCOP28会議の意義について

2023-06-21 12:47:22 | 環境問題
COP28ドバイ会議に先立つ補助会合(科学技術に関する補助会合と実施に関する補助会合)が6月5日から15日の期間ドイツのボンで開催された。初の世界規模での棚卸(global stocktake)が行われる重要な会議と位置付けられている。

ドイツ・ボンで開催されていた会議に関する記事がDeutsche Welleにあり、それを紹介するとともにCOP28ドバイ会議をよりよく理解するために、昨年のエジプトCOP27の簡単なおさらいもしてみたいと思う。

Deutsche Welleの記事(2023年6月15日、Martin Kuebler氏記す)の題名は、「気候変動:世界規模の棚卸とは如何なるものか?」 以下に大略を記します。

気候変動交渉担当者らによる10日間にわたったボン会議が終わった。緩和(mitigation)と順応・適応(adaptation)への取り組みに対する資金問題が厄介な課題だということが浮き彫りになって来ている。

国際気候行動ネットワークのHarjeet Singhさんは「ボン会議で、年末のドバイ会議(COP28)の方向性が決まって欲しいと思っていた。これ以上の遅れを認めることは出来ず、残念な状況だ」と語っている。そして技術的面では多くの進展があったとした上で、更に続けて「調整が難しい課題が残っている。それは、現在と過去において温室効果ガス排出の責任を負っているのは誰だ?ということであり、誰が気候変動の流れを止めて逆転させる行動に要する資金を提供するのか?ということであり、そして気候変動が原因で起こり続ける破壊的な影響に順応・適応(adaptation)する取り組みに要する資金を誰が提供するのか?ということである。開発途上国は選択に迫られている。即ち限られた資源の下、途上国では“人々の生計を選択すべきか、太陽光技術への投資を選択すべきか”を毎日求められている」と指摘している。
Singhさんは、今後世界が正しい軌道に乗るか、破滅への道に向かうのかを決めるのは、「資金(finance)」と「公正(equity)」についての議論だと主張している。

今回のボン会議は、“科学技術と実施とに関する補助会合”的色彩を持つことから、グローバルサウスを代表するSinghさんの主張を展開する議論はこれ以上なく、またもう一方のグローバルノースの考えもこの記事には紹介されていない。今年11月末から予定のCOP28ドバイ会議では「資金(finance)」と「公正(equity)」についてグローバルサウスとグローバルノースとの間で厳しい議論が展開されることになるだろう。

COP28ドバイ会議をよりよく理解するために、昨年のエジプトCOP27を紹介しているDeutsche Welle(2022年11月9日Jennifer Collins & Heather Moore両氏記す)を簡単におさらいしてみます。

COP27:気候変動対策の資金は何処からくるか?

「資金(finance)」と「公正(equity)」がエジプトのCOP27の中心議題だった。

低収入諸国は富裕国に対して、化石燃料に依存しない未来図への行動を資金面で支援すること、そして温暖化により発生している損出(damage)の代金の支払いを支援することを要求している。そのような温室効果ガス排出削減の行動向けの資金(finance)や温暖化が進み日照りや洪水といった損失が発生する事態への順応・適応(adaptation)対策に必要な資金として、毎年数兆米ドルが入り用だと、グローバルサウスは言っている。

これらの状況を背景に、エジプトCOP27の時点で課題として提出されていた“資金”に関するポイントをまとめて見ると

1. 2009年COP15:先進国が2020年までに年間1000億ドルの拠出を約束した件
この件に対する2022年末の時点での予測では、先進国は2023年まで公約を果たさないだろうと言われている。一方今回のCOP27においては、2025年を目標により高い資金計画案の合意を求める動きもあるという。

2.緑の気候基金(Green Climate Fund:GCF)
気候事象に脆弱な低収入諸国へ1000億ドルを投入する一つの方策であり、再生可能エネルギーへの移行を支援し、農家の日照りに順応する種子への転換とか、熱波に対処する都市部の緑化促進等を支援することを目指している。民間企業、公共機関や市民社会組織は、資金調達のためにGCFの認定を受ける必要がある。国連の専門家らが1200億ドル規模のプロジェクトリストを公表しており、そのグリーンエネルギーや作物の順応化等を含むリスト案は投資家らから支持される可能性が高いと見られる。

3.自主的な炭素市場(voluntary carbon markets)
多くの低収入国は炭素クレジット市場を利用して資金を調達したいと考えている。ケニアのRuto大統領が、炭素クレジットはケニアの次の有望な輸出品と語っていることに代表される。国連でも最近の報告書(Integrity Matters: Net Zero Commitments by Businesses, Financial Institutions, Cities and Regions)で炭素クレジットは低収入国が気候変動対策資金を調達するのに役立つだろうとし、ただし購入者が自身の排出削減行動を回避するために炭素クレジットを利用することの無いように注意すべきとしている。自主的炭素市場組織のGold Standard財団のHewlett最高技術責任者は「自主的な炭素市場は、COP27の他の資金メカニズムと同様に必要な資金の全てを提供するものではない」としている。

4.損失損害基金(loss and damage fund)による補償
洪水による破壊や不作による生計の消失など気候変動による破壊に対する支払いを支援することを目的とする特別損失損害基金の創設を、低収入諸国は永年に渡り主張している。
ケニアのRuto大統領は「損失と損害の議題は、際限なく対話を続けるような抽象的な話ではない。数百万のケニア人、数億人のアフリカ人が毎日のように経験している悪夢だ」と主張している。
またナイジェリアKebetkache女性開発資源センターのOkonさんは、歴史的に化石燃料の持つエネルギーを解放利用することで現在の気候変動の主因と目される温室効果ガスの大半を排出し、その結果技術力と生産性とで世界を凌駕し、経済を発展させてきた富裕国が一方で存在する。そして温室効果ガスを歴史的にほとんど排出していないにも拘らず気候変動による犠牲のみ強いられているアフリカの現在の構図が一方で存在している。
損失損害基金による補償は、富裕国による「援助(aid)」と見るべきではなく、富裕国がグローバルサウスから奪ったものを返す一種の「賠償金(reparation)」と見るべきと主張している。
これに対して、富裕国側は特別な形の損失損害基金の創設の考えに長く抵抗してきており、その理由は富裕国側に莫大な資金を負わせることになるからとしている。

そしてこの損失損害基金の議題は、今年初めてCOPに公式に認定されている。

5.債務軽減(debt relief)と債務自然スワップ(debt-for-nature swap)
低収入諸国に対する気候変動対策資金の多くは、助成金(grant form)ではなく融資(loan)の形で行われている。このloan形式だと、すでに債務を多く負っている国々は更なる債務に陥る。これを避けるためアフリカや島嶼諸国等多くの国が何らかの形の債務軽減を求めている。
債務自然スワップ(debt-for-nature swap)または債務気候スワップ(debt-for-climate swap)が打開策の一つになり得ると主張されている。これらの方式には、国の債務の一部を免除し、熱帯雨林やサンゴ礁などの重要な天然資源を保護するための保全計画に投資することが含まれる。
カリブ海コミュニティ気候変動センターのBynoeさんは「各国が何らかの形の救済策で合意しなければ、気候問題上の不公正さは深まるだろう」と主張している。そして「私達は既に多くの債務を抱えており、これ以上の債務は私達にとっては、ほとんど持続不可能な状況をもたらすことだろう。」と言っている。
IMFは2022年8月19日に途上国の対外債務(debt)と気候対策の実施を交換(swap)する債務気候スワップ(debt-for-climate swap;DCS)方式が、先進国からの贈与援助等より効果的である、と発表している。

対外債務(debt)の負担に悩まされるグローバルサウスは、温室効果ガス排出削減の行動向け資金(finance)と温暖化による損失が発生する事態への順応・適応(adaptation)対策向け資金として毎年数兆米ドルが入り用だと主張している。
一方富裕国は「援助(aid)」より債務気候スワップ(debt-for-climate swap;DCS)方式が有効との小手先の経済の技術論に誘導しようとし、そして規模も1000億ドル程度の議論となっている。
そしてグローバルサウス側は、富裕国がグローバルサウスから奪ったものを「賠償金(reparation)」として取り返す機会だと見ている。

資金(finance)と順応・適応(adaptation)と「公正(equity)」に関する現時点での世界の認識には大きな隔たりがある。COP28ドバイを見据えての今後の動向に注目したい。

再度Deutsche Welleの記事(2023年6月15日、Martin Kuebler氏記す)「気候変動:世界規模の棚卸とは如何なるものか?」に戻り、紹介を続けます。

COP28ドバイは、世界で初めての「世界規模の棚卸(global stocktake)」の機会となる。即ち2015年のパリ協定の目標へ向かって、世界各国がそれぞれ独自に設定した目標(nationally determined contributions)を世界で初めて「世界規模の棚卸(global stocktake)」を行う機会(進捗状況を総点検する機会)となる。この棚卸は5年ごとに実施されることになっている。

棚卸が成功できるかどうかが、COP28ドバイが成功したかどうかを決め、そしてまた最終的には2030年の目標を我々が達成できるかどうかを決めることになるだろう、と国連気候変動担当責任者のSimon Stiellさんは言っている。

世界規模の棚卸のアイデアは2015年のパリ合意から生まれ、そこには世界各国が、どのように温室効果ガス排出を削減するか、変化する世界の影響(impacts)に、どのように順応していくか、そして気候危機に対処するのに必要な資金をどのように確保していくのかを定期的に点検していくかの方策が組み込まれている。

世界規模の棚卸の目的は、各国に対し説明責任の訓練の場を提供すること、各国の設定した目標の定期的な確認作業の場を提供すること、次に何処へ向かう必要があるか、を考える場を提供することであり、そして併せてパリ協定の目標達成のためには、どれだけ迅速に行動する必要があるかを理解する場を提供することだ、とStiellさんはいっている。

2021年に始まり今年2023年の初めに終了した第一段階では、排出量・順応への取り組みや各国の国家気候行動計画(Nationally Determined Contributions; NDC)に関する最新データの収集が含まれている。
第二段階の技術評価は今回のボン会議で終了しており、ここで専門家と気候変動担当者にCOP28での議論に先だってデータを評価する機会が与えられた。

最終的な総括報告書は9月に予定されており、世界がパリ協定の合意目標達成から、どれだけかけ離れているのかを示し、そして改善が必要な点に関するアドバイスの提供がなされると見られる。

Singhさんは今までのほとんどの国際協定には、定期的な見直しと、将来を見据えた計画を策定する機会を可能にする世界規模の棚卸作業のようなプロセスは無かったという。単なる技術的なプロセスに留まらずに野心的な行動につながる意味あるものに確実にしていきたい、としている。

非営利団体Climate Works財団のHelen Mountfordさんは、今回の棚卸が気候変動事象の今後の行方、我々が真に住みやすい将来を確保できるかどうかを決める重要な10年の期間における決定的な転換点になる作業の場を提供することになるだろうとしている。

そしてSinghさんは「タイミングが極めて重要である。我々は科学者から既に情報をもらっている。そして何が必要なこともわかっている。今や大切なことは政治的な方向性であり、これこそが世界の指導者らが提供する必要のあることである」という。

「護憲+BBS」「新聞記事などの紹介」より
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無関心こそが最も望まれているのではないか

2023-06-18 20:36:07 | 政治
一年ほど前から、政治学者の中野晃一先生が配信している動画を観て、政治について門外漢の自分でも少しは現状を理解できるようになろうとしている。

こうした有益な発信を自分から探索して見つけなければ、現在の日本の何が問題なのか、なぜ問題なのかを知らずに日々を過ごしていることだろう。存在する情報資源と必要とする人を結びつける仕事の重要性は立場上理解しているつもりではあるが、つなぐ役割の意義や必要性を述べていくと話が脱線してしまうので、詳しく述べることは差し控えたい。

話は戻り、中野先生の動画チャンネルでは、この一ヶ月間は「基本的だけど今更質問できない政治に関する疑問」を掘り下げている。

規模の大小を問わず多くの報道で目にする「首相の解散権」という言葉についても、そもそもそのような権利を明確に定義する法令は現時点では存在しないことを初めて知った。また、不動の三年間と言われていたのに、どうして急に解散がどうのという話が急浮上しているのかがまったくわからなかったが、その理由が筋道を立てて説明されている。

このコラムで以前に紹介されていた、映画の『妖怪の孫』ではないが、世襲や既得権益を守ることしか考えていない人たちを代表者にすると、一般市民のことなど顧みず、自分たちが権力にしがみつくためならば、もはや何でもありになってしまう。

「政治家なんて誰がなっても同じ」という声は、筆者の周囲でも時折聞かれる。しかし、私たちの代表者がどういう人で何をしているのかを市民の側からチェックすることで流れを変えることはできないか。チェックする際に何に注目すればいいのか、どのような観点があるのかを示してくれる情報源は貴重である。

そういった情報を共有することで関心が持てるようにすることが今、求められているのではないか。

「護憲+コラム」より
見習い期間
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原発はやっぱり怖い

2023-06-12 21:33:36 | 原発
過日、護憲+の会に参加されたメンバーから、お礼とお知らせが届きました。皆様、ぜひお聞きください。
―――――
福島原発に関する最新情報です。
私は先ほど、聴きました。
非常に怖くなりました。

西谷文和 路上のラジオ「震度6強でフクイチ1号機倒壊?」森重晴雄さん
https://youtu.be/YtVAfs7FhZQ
――――――
福島原発については、こうした情報と楽観的な情報との間に乖離がある。もちろん日本に原発が存在する以上、何もなく落ち着いていけば助かると思うが、そうもいかないのでは?と、皆も薄々気づいているのではなかろうか。

それでも直視しても、自分ではどうにもできないと思っているかもしれない。確かに地震や津波といった自然の起こす災害自体は、私たちは何ともできない。でも、それが起きた時に少しは災害を小さくすることはできるのではないか。

例えば福島第一原発は、一部の学者が指摘していたように、万一を考えて電源施設を高台に作っておけば、かなり防げたかもしれない。

しかし、原子力は果たして人間がどこまでコントロールできるものなのか。何も起こらなければ大丈夫というのは、コントロール出来ていることにはならない以上、原発を廃止する方向を目指すことしかない。

福島第一の事故後にドイツは脱原発を目指した。現存のエネルギーに今は頼りつつも、方向性を自然エネルギーに切り替えたことで、問題になっている効率性などの研究も進むだろう。

日本の「原発は安上がりだ」という論は本当だろうか?
国土の喪失も含め多大な損害を引き起こし、後始末さえまだできていない(果たしてできるのか?)福島のような万一の事故を除いても、毎日出てくる放射性廃棄物の後始末や、老朽化しての解体コストまでを入れたら、赤字になるだろう。米国は原発の高コストをきちんと認めているそうだ。

国家予算すなわち税金からの原発へのつぎ込みは、他の電源開発とは比べ物にならない。また、予算をつぎ込んでいる放射性廃棄物の再処理システムは、失敗しているのが現状だ。費用対効果だけを考えても「再処理の成功は無いだろう」というのが世界の方向。原発は安くない。

そろそろ私たちも、原発に税金をつぎ込み、国民を放射能の危険にさらす政治家を選ばないようにする。つまり脱原発の方向を定めても良いのではないだろうか。

参考
ドイツの電力事情 
https://www.renewable-ei.org/activities/column/REupdate/20230425.php

原発推進派の原発コスト計算
https://www.enecho.meti.go.jp/about/special/tokushu/nuclear/nuclearcost.html

原発ゼロ・エネルギー転換戦略のコストへの言及
https://energytransition.jp/strategy/qa/nuclear

原発の本当のコスト 39ページありますが、ぜひご一読を。
https://www.foejapan.org/infomation/news/110419_o.pdf

「護憲+BBS」「新聞記事などの紹介」より
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国民を見ず、オトモダチを見る自公政権と太鼓持ち

2023-06-12 09:47:36 | 自民党政治
「木を見て、森を見ず」という、ことわざがある。

先日、参院法務委員会で入管難民法改「悪」案を採決した際、山本太郎議員に暴力行為があったとの事で自民党が懲罰動議を提出する、公明党も同調するという。その前は同委員会で取材していた東京新聞・望月記者が不規則発言をしたことに対し、日本維新の会・鈴木宗男が「発言権のない記者が左翼活動家のように叫び、議事を妨害した。東京新聞の記者から記者バッジを取り上げろ」旨の発言をした。

ちょっと待て!「木」ばかり見て、どうする。まともな政党・政治家ならば、なぜ山本議員が体を張って採決阻止に動いたのか、なぜ発言権のない望月記者が黙って見過ごせなかったのか、よ~く「森」を省みて考えてほしい。現状の入管法が人権無視の現場で運用されている点を棚上げし、大阪出入国在留管理局・常勤医が飲酒しての不適切な勤務を隠し、同委員会で難民審査参与員・柳瀬房子(難民を助ける会会長)のウソと斎藤法務大臣の無責任さで議事を進め、入管法改正案の立法事実が崩れているにも関わらず、数の力と議長権限で強行採決に至ったこと。

こんなデタラメを見過ごし、「参議院は良識の府」と憤る鈴木宗男。同じ委員会で「国益なくして、私は人権もないと思っております。人権だけ、優先してもですね」と発言したオマエこそ、法務委員会に出席する資格などない。山本議員ではなく、立法事実の崩れた法案に賛成した議員全員が懲罰を受けるべきだろう。過去に国会採決で腕力を誇示した馳浩や「ヒゲの隊長」佐藤議員は懲罰を受けたのか?

この「初めに結論ありき」という政治の悪い流れは「国会で118回も虚偽答弁」した安倍晋三から始まり、記者会見を「全く問題ない」で受け流した菅義偉に引き継がれ、愚息を重用した岸田文雄が踏襲している。コイツらは国益という「森」を見ているフリをして、数々の正しい「木」を切り倒してきた。いや、岸田首相は身内・官邸・国会という「木」しか見ていなくて、国民・民主主義という「森」は眼中にないのだろう。そして、統一教会に侵された腐った木や森は見ないフリを続けている。

同様に米国追従は国益・省益・大企業の利益とばかり、不公平な日米地位協定を見直さず、治外法権とばかり在日米軍基地から垂れ流されるPFAS入り泡消火剤や住宅地での軍用機騒音に目をつぶり、FMSの言いなり価格とノウハウ非公開の武器を購入して無責任な配備を進めている。日本以外に導入する国がない、運用・保守に問題の多いオスプレイ。沖縄方面で上級将官多数が搭乗した陸自ヘリUH60JAは運用機数が少なく、老朽化していたという実情。

今、日本の政治は「森を見て、木を見ず」状態で、相変わらず無責任とオトモダチ・太鼓持ち重用が横行している。すでに赤木さんという正しい「木」は切り倒され、茂り放題で「知らねぇなぁ」政治家の「木」に追肥をし、腐った「森」を隠すために民事裁判で億単位の賠償金(税金)を浪費した。強引に開催した東京五輪の不正・不祥事・疑惑の『森』は不問のまま。カネと権力を乱用した安倍政治を止められなかった無力さ。

かつて、「保育園落ちた、日本死ね!!!」とブログした女性が理不尽に批判された。作家・島田雅彦さんが「暗殺が成功してよかった」とネットでつぶやき炎上したが、東京新聞に連載された小説「パンとサーカス」を読んでいた私は、彼を責める気になれない。その炎上騒動を夕刊フジが煽り、執筆批判したのが安倍政治を称賛していたジャーナリスト・有本香というのもお笑いなのだが。

根拠のない傲慢な政治、その政治家と徒党を組む面々を許して彼らの煽りに黙っていたら、日本は戦争に加担して太平洋戦争を繰り返すだろう。

「護憲+コラム」より
猫家五六助
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映画「妖怪の孫」

2023-06-05 15:49:08 | 自民党政治
4月末に友人と誘い合って映画「 妖怪の孫」 を観ました。 

中途半端に要領が良くて、中身が何も無い空っぽな人が権力を握ると、恐ろしい事になるのですね。自分達に都合の良い法案を通し、数字を捻じ曲げ、大事な事を隠し、 あった事をなかった事にしようとする。そのために一人の公務員が生命を断った。

更に、国債をファンドにして日銀を私的な銀行の様に扱い、総裁を自分の意に沿った人間に変えて、何とかバズーカと言われる様な無茶な株価操作をさせた。

安保法案、集団的自衛権、その他の危険極まりない法律を次々と通し、いつでも国民の首を絞められる手段を、権力の側が持ってしまった。

共謀罪も、特定秘密法も、一度日本が戦争に巻き込まれたら、これらの法律が力を発揮して、 その場に居ただけや思わず口にした事で事情聴取の対象になり、「少しお話を聞かせてください」と言われ何処ぞに連れて行かれるー

そんな事があっただけで 住んでいる地域ではヒソヒソブツブツ噂が囁かれ、ネットでは、スパイは取り締まれ!この国難に何をしたのだ!とヒステリックになった国民が一丸となって、ネットに晒され、拡散され、自宅を破壊しようと襲いかかるー
というのは私の妄想でしょうか。

「妖怪の孫」と言われた人もそこまで情報や権力をコントロールして国民の意思力を奪い、唯々諾々と従わせる事を企んでいたのでしょうか。

というより10年先、15年先の事は何も考えていない彼が考えていたのは、改憲を実行し祖父を超える事。そのために私達国民の命や生活を手段や道具にされてはたまったものではありません。

更に彼が亡くなっても、その影響力は妖怪の様に衰える事なく、私達の周囲に漂っているのです。
 曰く、1人が声を挙げても仕方がない
 曰く、政治家なんて誰がなっても同じ
 曰く、自民党以外だれに任せていいのか分からない

ほら、ほら、G7サミットが成功の内に終わったと、岸田政権の支持率上がっているそうですよ。TVが毎日取り上げ、議長国、議長国と持ち上げ、 物分りの良い国民が、岸田さんも大変ねぇ〜と。

いや、いや、大変なのは、卵を始め諸物価が値上がりして、卵かけご飯を2個の卵を混ぜて3人で分けている私達の生活でしょ。鳥インフルエンザの影響もあるかも知れないけれど、防衛費に多大な予算をかけて、余ったコロナ対策費やその他の余った予算を防衛費に回すなら、物価高騰対策費にでも回すとか、消費税を物価が落ち着くまで0%にするとか、方法は幾らでもある筈。

それもせずに防衛力強化、原発再稼働や新しい原発を新設するとか、そんな事をやろうとしている岸田政権の支持率が上がっているなんて、やはり私達は妖怪に騙されているのかも知れません。

妖怪は孫のあの人だけではなかったのです。私達が 「仕方がない」「何をやっても変わらない」と 諦めため息を付きながらスマホの画面ばかりを見ている間に、令和の妖怪がそこら辺を歩き回っているのかも知れない、そう思わせられた映画でした。

「護憲+コラム」より
パンドラ
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「世界で最初に飢えるのは日本」を読む(その1)

2023-06-03 14:23:49 | 安全・外交
1.(はじめに)

戦後史(戦争も含む)を検証している中で、歴史学が見落としているのではと思う「敗戦直後の食料事情」に疑問を抱いた、この一年であった。

ある判事の餓死事件(山口判事の餓死)がきっかけで、当時の政府が採った食管法をもう一度再考するべきではないかと考えるようになっていた。結論を先取りして言うと、当時の政府は、食管法に基づき、配給だけで生活することを国民に強制していた。山口判事の餓死は、彼の餓死という問題に還元できない、国民すべてに襲い掛かる餓死という問題であり、「事件」だったのである。

そして、現在でも、その餓死の危機的状況は日本に迫っているのではないかと思い巡らせている時に、鈴木宣弘東大教授の上記タイトルの著書に出会うことになった。

この本は、新書版であるが、かなりの情報量であり、一回でその概略を紹介できる構成とはなっていない。今回と次回で、分けて紹介したい。

最初に問題のキーワードになることがある。それは何故、日本の「食料自給率が37パーセント」と低いのであろうか。その「疑問」を解く謎の解明は、鈴木教授がすべて、この著書で書きつくしている。

2.「大惨事が迫っている」国際機関の警告

この見出しで、鈴木氏は、次のように述べる。
『いま、世界中で、かつてない規模の食料危機が迫っている。WFPとFAOは、2022年6月に、ハンガーホットスポットーFAO-WFPの急性食料不安に対する早期警告という報告書を発表している。
新型コロナウィルスの拡大や、ウクライナ戦争の影響などにより、世界20か国以上で深刻な飢餓が発生すると「警告」したのである。(中略)
「世界同時多発食料危機」が、現実の世界でも切羽詰まった問題になっているのである。
その中で、日本の食料問題もまた、深刻な脅威に直面している。』

そして、さらに鈴木氏は概ね、次のように述べる。
『筆者が主張する根拠は、日本の食料自給率が今後大幅に低下するという試算にある。
日本のカロリーベースの食料自給率は、約37パーセントという低水準だ。しかし、37パーセントと言うのは、あくまで楽観的な数字に過ぎない。
農産物の中には、種やヒナなどを、ほぼ輸入に頼っているものもある。それらを計算に入れた「食の自給率」はもっと低くなる。
農水省のデータに基づいた筆者の試算では、、2035年の日本の「実質的な食糧自給率」は、コメ11パーセント、野菜4パーセントなど、壊滅的な状況が見込まれるのである。』

この後の文章で、鈴木氏は、なぜ、世界の食料問題が危機的な状況を迎えたのか、現状分析などを具体的に述べているが、肝心の日本の農政の失敗に関して、次の見出しで、日本の「食の安全保障」(全くないが)を批判して、読者である私たちに、岸田政権の欠陥を突き付けるのである。

3.日本には「食料安全保障」が存在しない(鈴木氏曰く)

『2022年1月17日に行われた岸田総理大臣の施政方針演説で、「経済安全保障」という言葉が語られた。だが、そこに、「食料安全保障」、「食料自給率」への言及はなく、農業政策の目玉は、輸出振興とデジタル化であるとされている。(中略)
勿論筆者も輸出振興を否定するわけではない。だが、食料自給率が約37パーセントと、世界的にも極めて低い日本にとって、食料危機が迫るいま、真っ先にやるべきことは、輸出振興ではない。国内生産の確保に全力を挙げることである。(中略)
いま、日本に突き付けられているのは、食料、種、餌などを海外に依存する度合いが大きすぎれば、いざという時に国民の命を守れない、という現実である。それなのに、より自由化を進めて、貿易を増やすことが安全保障であるといった、筋違いの議論は、いまだに横行しているのである。』

4.かくして、鈴木氏の説得力のある日本の食料事情の危うさを訴える実証的な報告で、日本政府の「農政」の失敗が理解されたと思うが、このような食糧自給率の貧困は今に始まった事では、勿論ない。

それはこの本で、その「原因」となった日本の「農政」の失敗が、実はアメリカの日本への「計画的な策略」に起因していることが、明らかになるだろう。その策略に手を貸したのが、政府の官僚、とりわけ、財務省などであったことを著者は言及している。

この詳細は、次回のコラムに続きます。

「護憲+コラム」より
名無しの探偵
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生態系の崩壊を抑制する法律を間に挟んで、EUと農民との間に意見の対立が起きている

2023-06-01 17:13:30 | 環境問題
「生態系の崩壊を抑制する法律を間に挟んで、EUと農民との間に意見の対立が起きている」
(Deutsche Welle 2023年5月26日 Tim Schauenberg氏記す)

気候変動の事象を泥炭地の視点から考えることは見過ごされやすいものだったと思います。
Deutsche Welleに格好の記事がありましたので紹介します。欧州の泥炭地ということで温帯から寒帯地域の泥炭地の場合を考える機会となります。

一方、インドネシアに特徴的にみられる熱帯地域の泥炭地の状況や課題については別の機会に紹介したいと思います。

気候変動のスピードを抑制することを目標に、EUは農業の生産活動から生じるGHG(温室効果ガス)排出を抑制すること、そして土壌の持続可能な利用を促進することを目指して、新たな法律の成立を検討している。この新たな法律にはCO2の貯蔵庫であるピートランド(泥炭地)の復元が含まれていることから、もとピートランド(泥炭地)だった土地を利用している農民らの働く場が失われるとして批判も起こっている。

欧州地域のグリーン化を促進し、気候変動が進行する中で地域の生態系と生物種の保全を目指す自然復元法(Nature Restoration Law)は2022年6月にEC(European Commission)により初めて導入されているが、排水された元は泥炭地だった土地を復元するという内容を含んでいることから政治的に抵抗を受けている。

法案が成立すると、以前は泥炭地、今は農地になっている土地の30%は10年内に元の泥炭地に復元し、別の利用法に変更が求められ、さらに2050年には30%を目途の復元面積が70%にまで引き上げられることになっている。

農民団体は貴重な耕作地の大規模な減少に繋がる法案として懸念を訴え、一方法案擁護者らは泥炭地が地球温暖化のスピードを鈍化させる上で有効な手段であり、EUが掲げるパリ協定の目標達成には必須のものだと主張している。

湿地帯の一つの形の泥炭地と言うものは、数千年にわたり大量の植物の死骸が水面下に貯留することで形成されており、他の如何なる生態系よりも大量の炭素を貯えていることを特徴としている地帯である。

地球規模で見ると泥炭地は全陸地の3%程を占めている。一方泥炭地が貯留する炭素量は地球上の森林全体が吸収する炭素量の2倍程を貯えている。

ここで泥炭地を排水し、農業の様な何らかの利用をその地で行うとすると、泥炭地はCO2貯留地ではなく、反対に温暖化ガスの大きな発生源地域へと変わってしまうことになる。

欧州全域のGHG排出量の7%分が排水された泥炭地及び湿地帯からの排出の結果である。そしてこの量は欧州全域の工業活動からの排出分に匹敵するという。

養分が豊富で生物多様性にも役立っている欧州の泥炭地の面積を合計するとドイツほどになる。その半分以上が回復困難なダメージを既に受けている(ドイツでは90%近くがダメージを受けているという)。

スカンジナビアやバルト海諸国に存在する以前は泥炭地だった場所は、現在は森林として主に利用されている。オランダ・ポーランド・ドイツでは排水された元泥炭地の大半が現在農地になっている。ドイツでは全耕作地の約7%は元泥炭地であり、現在全GHG排出量の37%が農業からものである。

ドイツ北西部にある研究機関(Greifswald Mireセンター)のHirschelmannさんは、パリ協定を確実に順守するには排水された元泥炭地での農業を廃止して、paludiculture(再度湿潤化した泥炭地を利用した農業)に投資するといったパラダイムシフト(paradigm shift)が求められると言っている。

一方欧州議会の保守グループ(欧州民衆党、European People’s Party)は今回の泥炭地復元法の効力を大幅に削ぎ取ることを狙っている。そして農業目的の土地利用から農業以外の目的への土地利用の変更にも反対の立場である。また欧州農業団体のCopa-Cogecaは今回のEUのグリーン法案の経済的および社会的欠点を警告している。即ち排水されていた元泥炭地の再湿潤化は欧州の農業生産性を大幅に低下させることに繋がり、食料の安定確保に危険をもたらすとしている。

これらの主張に対してグリーン法案擁護者らは、長期的にみればこの法案は欧州の食料安全保障に資するものだと主張する。即ち欧州環境・海洋・漁業委員会のSinkevicius委員は、この5月初めに「多くの神話があるのは事実だが、グリーン法案には多くの利点が農民に対してあるのも事実である。土壌の肥沃化、日照り災害の減少、保水力改善、受粉活動の増大が例である」とツイートしている。

また緑の党の欧州議会議員のPaulusさんは「農民は常に排水した元泥炭地に換金作物を栽培することで短期的利益を最大化することを選択するものであり、一旦排水した元泥炭地を再度湿潤化した土地で農業活動を行うことはしたくないのである。それ故に、農民に対して補償等のインセンティブを行うことが当然の考え方になる」と述べている。

野心的な法案を擁護する人は、利益の出る農業と湿潤地への復元策とがお互いに利益が相反する関係である必要性はないと指摘している。欧州委員会の計算によれば、天然の資源を復元するのに投資される1ユーロの金は長期的に見れば少なくとも8倍の8ユーロ分の経済的リターンが見込まれるとしている。

再度湿潤化した泥炭地は、穀物(grains)やコーンのようなものを単一栽培するには適していないものの、Greifswald Mireセンターも含まれる多くの研究機関が1月に公表したPosition Paperによると、再湿潤化泥炭地は他の作物の生育には適している可能性はあるとしている。

再湿潤化し復元した土地には、樹木や牧草やアシ・ヨシを栽培することは可能であり、これらアシやヨシは建築向断熱材またはプラスチック代替用有機素材として利用できる。また牛の代わりに水牛が再度湿潤化した泥炭地で飼育できる日が来るかもしれないとしている。

「護憲+BBS」「新聞記事などの紹介」より
yo-chan
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