その人は・・・

ある演出家が亡くなった

肺癌…

入院先で　旅立った

誰が　そばにいたのか

誰が　最期を看取ったのか　わからないままに…


彼は　情熱家だった

若い頃は　世界的なオペラ歌手と　

燃えるような恋をして

ドラマのような結婚をした


家庭には収まりきらぬ二人

結局　彼女は他国へ　

彼は　彼女を追いかけて　ヨーロッパを旅する…


何年か経って　芸術を満喫した彼が帰国

演劇の世界に　全てををかける

ひたすら　演劇芸術の世界に没頭

彼の個性の強い演出は　良いか悪いかどっちか

役者は　散々振り回された

上がりは　絶賛か絶望

それでも　彼は主張を貫いた


もう　いいよ

十分頑張った

これからはいいよ

眠ってていいよ


でも　その旅立ちは　あまりにも悲しい

ああ

ああ！

今の社会は　飛びぬけた発想より

地道さを教えるのか…


いつもカッコつけていた　

彼の　あの物腰が　実に懐かしい…