(2021.12.20)
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(3) 偽りの飲み薬(全面改訂)
政府は、新型コロナのワクチンや治療薬の施策に前のめりとなっています。とくに米国メルク社が開発した飲み薬「モルヌピラビル」が話題で、新聞各紙は、世界最初の飲み薬として年内にも特例承認されること、および160万人分を調達する契約を同社と結んだことを報じています。重症化率を30パーセント下げる効果があった、というのが根拠のようです。
しかし世界では、この薬の賛否を巡る激しい応酬が行われている最中なのです。と言っても、この薬を支持する意見は、ほぼメルク社の経営陣と同社専属の研究者からに限られています。
否定的な見解を示している大多数の研究者たちは、主に2つの理由を挙げています。ひとつは、効果に重大な疑問があるということです。プラセボと比較した臨床試験が2つあり、一方が762人を対象にして5月から8月初旬に、他方は646人を対象に8月から10月初旬にそれぞれ行われたものでした。
ところが、前者の調査で、モルヌピラビルを飲んだ人たちがプラセボに比べて重症化する割合が半減したと結論されたにもかかわらず、後者では効果がまったく認められなかったのです。企業側は「理由はわからない」とコメントしていますが、政府委員のひとりは「後者の臨床試験が行われた時期はデルタ株が全盛だった」とし、この薬は変異株に効かないようだと述べています。
もっと遙かに重大な懸念は、この薬が「ウイルスのRNAを書き換えて死滅させる」という働きをすることから、ヒトのDNAにも組み込まれてしまうのではないかということです。
米国ノースカロライナ大学の研究者は、試験管内で、ハムスターの細胞にモルヌピラビルを32日間加えたところ、DNAに組み込みが起こっていたと報告しています。これに対し企業側は、「同じ条件で、げっ歯類で実験を行ったがDNAへの組み込みは認められなかった。人間では5日間服用するだけなので問題ない」とコメントしました。
研究者の多くは、その原理から考えて、ヒトのDNAへの組み込みが起こる可能性は高いと考えています。メルク社に対し「げっ歯類で行った実験のデータ」を論文にして公表すべしと迫っていますが、いまのところ応じる気配はありません。
この薬は、ウイルスのRNAのコピーが作られるとき、つまりウイルスが分裂する際、無意味な人工コードを組み込むように設計されており、もし、それがヒトのDNAにも起こるようなら、がんの発生や胎児への重大な影響を心配しなければならないことになります。
【参考文献(すべて新しい論文と差し替え)】
1) Kabinger F, et al., Mechanism of molnupiravir-induced SARS-CoV-2 mutagenesis. Nat Struct Mol Biol 28: 740-746, 2021.
2) Eastman Q, Molecular picture of how antiviral drug molnupiravir works. The Emory Health Science Research Blog, Sep 8,2021.
3) Kozlov M, Merck's COVID pill loses its lustre: what that means for the pandemic. Nature, Dec 13, 2021.
4) Muwller B, Merck's Covid pill might pose risks for pregnant women. New Yor Times, Dec 13, 2021.
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期待の治療薬「モルヌテラビル」も、できれば避けた方がいいいようだ。特に、薄赤の色かけのところが怖い。自分だけで終わらない・・・
新薬の宿命、短期で開発された薬の宿命といえばいえるが。
ここにも「金、金、金」が見える。