黒式部の怨念日記

怨念を恐るる者は読むことなかれ

百科事典

2024-12-27 16:51:27 | 生活

百科事典に対する敬愛は、子供の頃読んでた小学館の大日本百科事典(ジャポニカ)由来である。なにしろ、私の脳内の雑学のほとんどは全23巻のこの事典によって培われたものだから。当時、私は学校から帰るとこの事典に首っ引きでその日気になっているワードを引き、そこから関連した事項を次々と引いていって、気がつくと床に読み散らかした巻が何巻も転がっていて、最後にそれを箱カバーに戻して夕ご飯、というのが日課であった。ちょうど、今の人がネットサーフィンをするごとしである。特によく引いたジャンルは音楽、そして性である。仕方がない、大人が教えてくれないのだから。例えば、小学3年の担任の先生が「結婚しないと子供はできない」と言ったのを不思議に感じて母に先生がこう言ってたんだけどと言っても「先生がそんなこと言ったの?いやらしい」と眉をひそめたきり、なにがいやらしいのかは教えてくれなかった。こうした大人の怠慢を私は自ら補っていたのである。実際、「補って余りある」だったようで、私は得た知識を学校の掃除の時間に惜しみなく学友に伝えていた。その様子を担任の先生が見てにんまりしていたということを後から聞いたから、私は担任の怠慢をも補っていたことになる。

そのジャポニカだが、実家にあったもののほか、私は実家を出てからも古本で同じものを揃えている。敬愛の念はよほどのものである。すると、実家のが残っていれば相続して2セットあっておかしくないのだが、第22巻の日本大地図(書斎のゴミ箱の猫除けの重しになっている)以外見当たらない。

2セットとも資源ゴミに出したのだろうか。ありうる。ときどき断捨離熱が出るからそのとき犠牲になったのかもしれない。痛風がおさまったら押入の中を捜索してみるか。だが、もし残っていたとしても、1970年までの情報だから相当古い。各分野とも半世紀で研究は相当進んだろう。だが、へー、昔はこんな風に考えられてたんだというのを知るのも一興であるから、デスクサイドに置いて、昔のように引いてみたいと思う。

そうは言っても、日々の調べ物には電子化されたものが便利である。20年前に買ったシャープの電子辞書の中にはブリタニカが入っている。ブリタニカと言えば30巻以上あって、百科事典界の横綱だからこれで十分だろうと思ったら、30巻以上あるわりには随分文章が短い。そう言えば、テレビ通販で電子辞書を紹介してたとき「これだけの紙の本が入ってるんですよ!」と言って本を並べた中にあったブリタニカは6冊程度。その謎が解けた。ブリタニカは小項目事典と大項目事典に分かれてて、小項目事典が6巻で、電子辞書にはそれが入ってるのだそうだ。

やはりもっと分厚い解説が読みたい。すると、平凡社の百科事典の電子版には30巻全部の内容が入っているという。平凡社の百科事典と言えば、これもその名をよく聞く百科事典界の横綱である。ポチった。すぐに来た。

期待に胸をふくらませて昔よく引いたワードを引いてみる。性に関することは小学生の学友に教授する内容として十分。音楽については?作曲家のデュファイのことも載っているし、教会旋法の解説もある。フルトヴェングラー、ベーム、カラヤン等の指揮者についても載っている。ピアニストのバックハウスだって載っている。だが、ジャポニカにはマリア・カラスの記事が真っ赤な口紅をつけたショートカットの写真付きで載っていた。アンナ・モッフォ(ソプラノ)のことだって「悪声」という異議ありな情報付きで載っていた。そのどちらもない。最近改定された版だがベースは古いんだろうと思って(だから、ドミンゴやパヴァロッティが載ってないのは当然だと思って)カルーソーを引いてみた。なかった。編集方針だろうか、歌手については手薄いと感じた。なぜかマリアン・アンダーソン(アルト歌手)は載っていた。そう言えば、昼間に再放送しているカムカムエブリバディで世良公則が歌ってたんで(名シーン)、「(ルイ)アームストロング」で引いてみた。あった。仇名が「サッチモ」であることも載っていた。

因みに、かなり後年になって母から聞いた話だが、ジャポニカの購入には父は反対だったそうだ。あの父のことだ、さもありなんと思いつつ、普段は父の言いなりの母も、ここはよく踏ん張ってくれたと思う。そのあるのとないのとで私の人生は大きく変わったことだろうから(ってことは、なかったらもっとマシな人間になったってこと?)

ジャポニカでよく引いたジャンルを一つ言い忘れた。なぜかエンジン(ガソリンエンジンとかディーゼルエンジンとか)のこともよく調べていた。自分でこしらえたかったのかも知れない。現在の私からは1ミリも想像できない話である。


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