働き方改革関連法ノート

厚生労働省の労働政策審議会(労政審)労働条件分科会や労働基準関係法制研究会などの議論に関する雑記帳

リスキリングと新しい資本主義実現会議レベッカ・ヘンダーソン委員

2022年11月06日 | ブログ管理者ノート
リスリキングとは「新しい職業に就くために、あるいは、今の職業で必要とされるスキルの大幅な変化に適応するために、必要なスキルを獲得する/させること」「(リスキリングは)『リカレント教育』ではない」「リスキリングは単なる『学び直し』ではない」(リクルートワークス研究所・石原直子人事研究センター長/主幹研究員)。

「リスキリング支援を大幅に強化する」岸田総理
岸田文雄総理はのニューヨーク証券取引所で2022年9月22日にスピーチをし「本の経済界とも協力し、メンバーシップに基づく年功的な職能給の仕組みを、個々の企業の実情に応じて、ジョブ型の職務給中心の日本に合ったシステムに見直す」「これにより労働移動を円滑化し、高い賃金を払えば、高いスキルの人材が集まり、その結果、労働生産性が上がり、更に高い賃金を払うことができるというサイクルを生み出していく」「そのために、労働移動を促しながら、就業者のデジタル分野などでのリスキリング支援を大幅に強化する」と語った。

リスキング議論を新しい資本主義実現会議で加速

また、岸田総理は新しい資本主義実現会議(第10回、2022年10月4日開催、議長:岸田総理)で「リスキリング、すなわち成長分野に移動するための学び直しやセーフティネットの整備、年功賃金から日本に合った職務給への移行等を含め、この会議で議論を加速いたします」と述べている。

その新しい資本主義実現会の議題の一つが「新しい資本主義のグランドデザイン及び実行計画」の実施についての総合経済対策の重点事項(案)。

後日、新しい資本主義のグランドデザイン及び実行計画」の実施についての総合経済対策の重点事項(最終版)が内閣官房サイトで公表されたが、最終版には「リスキリング(リスキリング中の生活保障、セーフティネットを含む)や賃金の在り方(年功賃金から個々の企業の実情に応じた日本に合った職務給への移行等)を含め、官民で来年6月までに『労働移動円滑化のための指針』を策定する」と。

リスキリング支援「5年で1兆円」所信表明演説
日本経済新聞(『リスキリング支援「5年で1兆円」 岸田首相が所信表明』、2022年10月3日配信)は「岸田文雄首相は衆院本会議で所信表明演説し、個人のリスキリング(学び直し)の支援に5年で1兆円を投じると表明した」と報じた。

また、JBpressは岸田総理所信表明演説とリスキングについて記事を掲載している。記事によると「リスキリングは就業時間中に行うべき『業務』」とされるが、「就業時間中にリスキリングを行うための時間確保がままならず、帰宅後や週末に時間を捻出しないといけないという声を耳にする」ということだそうだ。

10月3日の岸田総理の所信表明演説全文は朝日新聞デジタル(『岸田文雄首相の所信表明演説(全文)』、2022年10月3日配信)に掲載されている。

朝日新聞の記事によると、岸田総理は所信表明演説で「リスキリング、すなわち、成長分野に移動するための学び直しへの支援策の整備や、年功制の職能給から、日本に合った職務給への移行など、企業間、産業間での労働移動円滑化に向けた指針を、来年6月までに取りまとめます。特に、個人のリスキリングに対する公的支援については、人への投資策を、『5年間で1兆円』のパッケージに拡充します」。

『岸田文雄首相の所信表明演説(全文)』(朝日新聞デジタル)

リスキリングとは(リスキリングの定義)
『リスキリングとは―DX時代の人材戦略と世界の潮流―』(2021年2月26日、リクルートワークス研究所・石原直子人事研究センター長/主幹研究員)において、リスキングとは「新しい職業に就くために、あるいは、今の職業で必要とされるスキルの大幅な変化に適応するために、必要なスキルを獲得する/させること」と定義され、「近年では、特にデジタル化と同時に生まれる新しい職業や、仕事の進め方が大幅に変わるであろう職業につくためのスキル習得を指すことが増えている」と記載されている。

また、リスキリングは「『リカレント教育』ではない」「リカレント教育は『働く→学ぶ→働く』のサイクルを回し続けるありようのこと。新しいことを学ぶために「職を離れる」ことが前提になっている」と、さらに「リスキリングは単なる『学び直し』ではない」「昨今の『学び』への注目のなかには、個人が関心に基づいて『さまざまな』ことを学ぶこと全体をよしとする言説が多いが、リスキリングは「これからも職業で価値創出し続けるために』『必要なスキル』を学ぶ、という点が強調される」と、そして「リスキリングに類似の言葉に、アップスキリング、アウトスキリングという言葉もある」と、石原直子氏は述べている。

リスキリングとは―DX時代の人材戦略と世界の潮流―(PDF)

経済財政運営と改革の基本方針2022
(2022年)6月7日に(経済財政諮問会議での答申を経て)閣議決定された「経済財政運営と改革の基本方針2022」(骨太方針2022)の4頁には「社会全体で学び直し(リカレント教育)を促進するための環境を整備する。学び直しによる成果の可視化と適切な評価、学び直し成果を活用したキャリアアップや兼業・副業の促進、学ぶ意欲がある人への支援の充実や環境整備、成長分野のニーズに応じたプログラムの開発支援や学び直しの産学官の対話、企業におけるリカレント教育による人材育成の強化等の取組を進める」と。

また、「経済財政運営と改革の基本方針2022」(骨太方針2022)の5頁には「国家公務員について、既存業務の廃止・効率化、職場のデジタル環境整備、勤務形態の柔軟化などを通じた働き方改革を一層推進するとともに、採用試験の受験者拡大やデジタル人材を含めた中途採用の円滑化、リスキリングなど人材の確保・育成策に戦略的に取り組む」と。

経済財政運営と改革の基本方針2022(PDF)

新しい資本主義実現会議(レベッカ・ヘンダーソン委員プレゼン)

第11回の新しい資本主義実現会議(議長:岸田首相)が(2022年)10月26日に開催されたが、議事はレベッカ・ヘンダーソン委員によるプレゼンテーションと意見交換。

後日、公開された議事要旨によると、ヘンダーソン委員は「具体的なリスキリングの例についてお話しする。これは非常に簡略化した形だが、労働市場の下層へのリスキリングについては、例えばブルーカラーとかサービスセクターの人たちだが、自己制御やビジネスの理解を助けるということによって、それだけで彼らが事業を前進させる力になるだろう。一方で、経済の上層の方へは、新しい科学的な能力だとか、新しい産業を作っていくための投資が重要である。その両方が、グリーンへの移行と経済成長を実現するために必要である」と発言している。

つまり、新しい資本主義実現会議でレベッカ・ヘンダーソン委員は下層へのリスキリングは自己制御やビジネス理解の助け、上層へは新しい科学的な能力や新しい産業を作るための投資が重要、「その両方がグリーンへの移行と経済成長を実現するために必要」ということだろうが、残念ながら、よく理解できなかった。

このヘンダーソン委員発言の後、報道関係者が入場し、メデイアを前にして岸田首相は「本日の議論では、資本主義は繁栄やイノベーションにとって源泉であり、これなしでは私たちが直面する大きな問題を解決できないわけだが、その資本主義が脅威にさらされているということ、そして、資本主義を再構築する必要があるということがコンセンサスとなった。このための具体策として、グリーン経済への移行の加速、労働者のリスキリングと賃上げ、企業に移行を促す投資へのインセンティブの強化、官民の連携の促進、こういった点が共有された。他方で、その実現は容易ではない。実行には勇気と創造性、努力が求められる、こうした指摘もあった。本日の意見交換も参考にし、年末のスタートアップ5か年計画や、資産所得倍増プランの策定、さらには来年6月の労働移動円滑化のための指針の策定、フォローアップ、そして、新しい資本主義の実行計画の改訂に向けて、皆さんと議論を行っていきたい」と述べている。

新しい資本主義実現会議(第11回)議事要旨(PDF)

ヘンダーソン委員提出資料(Reimagining Capitalism 資本主義の再構築)(PDF)

なお、時事ドットコムニュース(2022年11月5日)は「従業員のリスキリング(学び直し)を支援するため、経済産業省が2022年度第2次補正予算案に753億円を計上する方針である」と報じた。

「学び直し」に750億円 転職まで一貫支援―経産省補正予算案(時事ドットコムニュース)


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