「これからのテレワークでの働き方に関する検討会」について
厚生労働省「これからのテレワークでの働き方に関する検討会」は厚生労働省雇用環境・均等局の有識者会議になり、テレワークにおける労務管理などガイドライン(指針)の改定を目指して設置され、第1回が2020年8月17日、第2回が10月16日、第3回が11月4日、第4回が11月16日、第5回が12月23日に開催され、12月25日に報告書が公表された。
議題は、第1回が(1)座長の選出について、(2)今後の進め方、検討課題等について、(3)意見交換、(4)その他。第2回は(1)企業ヒアリング(大同生命株式会社と日本航空株式会社の2社)、(2)テレワーク関係省庁の概算要求状況について、(3)検討課題。
第3回は(1)テレワークの実施に際しての労務管理上の課題(人材育成、人事評価、費用負担等)、(2)テレワークの際の労働時間管理の在り方について、(3)テレワークの際の作業環境や健康状況の管理・把握、メンタルヘルスについて、(4)その他。
第4回は(1)テレワークにおける労務管理等に関する実態調査(速報)、(2)濱口委員によるプレゼンテーション、(3)これまでの御意見について。第5回は(1)報告書(案)について、(2)その他。
つまり「これからのテレワークでの働き方に関する検討会」においてテレワークの労務管理上の課題について主に議論されたのは、第3回会合となる。なお、議事録は長文になるため核心部分を抜粋して掲載することにした。
これからのテレワークでの働き方に関する検討会(厚生労度省ホームページ)
これからのテレワークでの働き方に関する検討会 報告書(厚生労働省ホームページ)
第3回「これからのテレワークでの働き方に関する検討会」(厚生労働省雇用環境・均等局が実施する検討会)
日時 2020年11月4日(水)午前10時~12時
場所 中央合同庁舎第5号館 厚生労働省省議室
出席 風神佐知子 慶應義塾大学商学部准教授(オンライン参加)
川田琢之 筑波大学ビジネスサイエンス系教授
小豆川裕子 日本テレワーク学会副会長(オンライン参加)
竹田陽子 東京都立大学経済経営学部教授(オンライン参加)
萩原牧子 リクルートワークス研究所調査設計・解析センター長
濱口桂一郎 労働政策研究・研修機構労働政策研究所長
守島基博 学習院大学経済学部経営学科教授・一橋大学名誉教授(座長)
欠席 小西康之 明治大学法学部教授
議事録<抜粋>
(1)テレワークの実施に際しての労務管理上の課題(人材育成、人事評価、費用負担等)<前半>
・石田雇用環境・均等局在宅労働課長補佐
資料の説明をさせていただきます。<略>
・守島座長
ありがとうございました。では、今、本日、検討課題の1点目、テレワークの実施に際しての労務管理上の課題、人材育成、人事評価、及び費用負担について御説明をいただきました。 それでは、皆さんから御意見、御発言をいただきたいというように思います。<略>
・濱口委員
濱口でございます。今の幾つかの論点について、まず1つ目の人事評価ですが、確かにこの間、マスコミ等で人事評価が最大の問題だという議論をされているのですが、人事評価というのはどちらかというと表面的な話であり、むしろ根っこの話は業務のやり方、進め方の問題ではないかと思います。
例えば欧米のオフィスであれば、ITが入る以前から基本的に紙ベースで仕事をしています。そうすると、その紙ベースの仕事の進め方が電子化されるだけであり、その電子化された紙ベースの仕事の仕方がテレワークになって距離が離れても基本的にその延長線上で行われるのです。
これに対して、もともと日本のオフィスでは紙ベースというよりも、いわばバーバルコミュニケーションあるいは場合によったらノンバーバルコミュニケーションが重要でした。だから、それが電子化されてもやはりちょっと来て、説明しろ、みたいな話になりますし、それをテレワークでやるのはなかなか難しい。その難しさが表面に現れた一つが人事評価の問題なのです。確かに人事評価という形で問題が露呈しているのですが、根っこはむしろ業務の進め方の問題ではないかと。そういう意味では、かなり根が深い話です。
ただ、だからといって、仕事の進め方を、がらっと変えて、基本的に文書ベースで全部やるべきだという話になるのかどうか。これがまた日本の組織の在り方とも密接に絡む問題なのでなかなか難しいのではないか。これは後の人材育成の問題も一緒だと思うのですが、日本の雇用の在り方の根っこに関わる話ではないかと感じております。人事評価をどうするか、成果なのかプロセスなのかという話だけでは話が解決しない、そういう印象を持っております。
それから、費用負担の話も、例えばテレワーク手当という話が幾つかのところで出ているのですが、これは前回、私のほうから提起した、そもそもテレワークする権利があるのか、義務があるのかという、そこを踏まえないといけないのではないか。
テレワークにかかるコストについては、既に厚労省で助成金も用意されていますが、そうではなくて労働者に対するテレワーク手当ということになると、やはりそもそもテレワークするということが権利、義務としてどうなのかという話をきちんと詰めた上でないと、やや先走りの話ではないかという印象を持ちます。
人材育成は、先ほど申し上げた人事評価の話とつながっていますが、日本の場合、即戦力として採用するわけではなくて、いわば素人を採用して、それをその上司や先輩が鍛えていくというやり方です。そうすると、そこはやはり文書ベースだけではなかなかうまくいかないので、どうしてもバーバルなあるいはノンバーバルなコミュニケーションとともにやっていくことになる。となると、テレワークとの相性というのはなかなか難しい。これも人材育成をどうするかという形で問題としては出てくるのですが、やはりその根っこのところには根深い問題があるのではないかと思います。雑駁ですけれども、この3つの論点について、そんな印象を持っております。
・守島座長
ありがとうございます。<略>
・竹田委員
今のお話にありましたように、対面でオフィスに集まって仕事をするという前提で今の仕事は組立てができているのですね。だから、もっと本質的に必要なことは何かということを考えなければいけない時期に来ていると思うのです。
テレワークのために仕事を全面的に変えるというのは目的と手段を取り違えているということだとは思うのですが、しかし、テレワーク以前に今までのやり方をもっと変えたほうがいいのではないかという状況は日本の様々な業界であるので、ちょうどいい機会ではないか。テレワークでいろいろ業務を見直さなければいけないのならば、テレワークだからということではなくて、もっと本質的に我々はどういう価値を生み出し、その手段のために今ある技術的に可能な方法で何が達成できるのかという本質に戻るよい機会である。
まず既存の仕事をベースに労働条件がどうかとか様々なことを考えるのではなく、一度立ち返って考えたほうがいいですよというのをぜひガイドラインに、抽象的でも構わないので入れてほしいと思います。
各論としていろいろありますけれども、一つは、多くの企業が、うちはテレワークできないという理由としてセキュリティーというのを挙げがちだと思うのです。セキュリティーというのは確かに大きな問題であって軽視はできないのですけれども、ただ、ブラックボックス的にもうセキュリティーが駄目だからできないというように答えてしまうように特に小規模な企業なんかはありがちだと思うのです。なので、それも業務の見直しと同時に何が、どういうセキュリティーが必要であって、そのために今のある技術でどこまで解決可能かというように分解して考えていかなければいけない。これもセキュリティーについて考えるいい機会なのではないかと思います。
あと人材育成は一番ヒューマンタッチが必要で、特に人は学ぶときに言葉での指示だけではなくて人のやっている姿を見て学ぶということがすごく大事なのだと思います。それが欠けてしまうのが今年の新入社員にすごく問題なのだと思います。これはある程度、人材育成に関しては意識的にオフラインを使っていくというのも一つですし、もう一つ、これはアイデアでガイドラインに載せるようなことではないですけれども、オンラインにおけるOJTという方法論を考えてみたらいいのではないかなとちょっと思っています。例えば特定のメンターみたいな人と1日オンラインでつながっていて、その先輩がやっている仕事をつぶさにオンラインで見ていて、今の仕事はどういう意味があるのですか、こういうやり方をしているのはなぜですかというように質問ができるというようなことを 集中的にやるとかということが例えば考えられると思います。
もう一つ、労働者のいろいろな権利があると思うのですけれども、労働時間が割とはっきりしているような仕事だと時間外につながらないという、呼び出しなどに応じない、メールを見ないということの切り分けが比較的可能なのですが、テレワークだとつながらない権利を再認識することが大切になる。ただ、テレワークのいいところは、割と時間にフレキシブルで育児とか介護とかの合間にもできるというよさもありますので、業務の性質にもよりますが、この時間はつながらない、この時間はつながるという時間を労働者側がかなり主体的に定義して企業と協議しながらフレキシブルに運用していくというようなことができると理想なのではないかと思います。
最後に、環境整備で意外と重要なのは、椅子、机ではないかと思うのですね。先ほどの企業の補助は通信費とか光熱費などを意識しているのが多かったように思いますが、最初によい椅子と机を買うというのは在宅ワークでかなり大きくて、これは自宅にある適当な机、椅子でやりなさいというパターンが多いような気がしますので、ちょっと初期費用ということを念頭に置いていろいろ制度をつくるといいのではないかと思います。 <略>
・守島座長
ありがとうございました。では、続けて風神委員、お願いいたします。
・風神委員
風神です。1点ずつコメントさせていただきたいと思います。 最初の1番目の委員も評価の仕方について言及されていたと思いますけれども、誰かが例えばやらなければいけないが直接結果にはつながらない仕事など、オフィスでは働きぶりで評価されていたようなことということが、例えばガイドラインでは、業績評価や人事 管理に関してテレワークを行う労働者については通常の労働者と異なる取扱いを行う場合、 異なるときにはあらかじめ取扱い内容を明示するように記載しているのですが、そうではなくて仕事の成果に重点を置いた場合とは必ずしも言えなくて、事前に異なる取扱いをせずに事後的に働きぶりとかが見えないために評価が下がってしまうということがやはり今回皆さんも非常に不安に思っていて、そういったことは防止する必要があるのではないかと思っています。頂いた資料1の6ページの下ではないのだけれども、上も用意していない場合ということをもう少しガイドラインでも明記したほうがいいのかなと感じました。
2点目の費用負担ですけれども、オフィスで働いていたときというのも椅子とかそういったコストというのは賃金から引かれていたとも言えるわけですから、そうすると、これは在宅特有かどうかというよりも、どこで働くかと考えるときに賃金と雇用環境ということを加味して労働者も決定するわけですから、見える化ということが必要であると思っていて、現在のガイドラインでは就業規則でどちらがコストを負担するのかを定めなさいというところまでが書かれているのですが、定めてありますというだけではなくて、労働者へ採用時ですとかテレワークを導入するときにも説明が必要ではないかと思います。
非課税について、最初の事前説明のときに少し言及されていたのでお伺いしたら、そのときには最初、労働者負担になると経費とかの計上がなかなか個人ではできないからかなと考えたのですが、修正版のほうを拝見させていただくと、実費というものは除いて上回った分を非課税にするかどうかというのに変えられているのですけれども、テレワーク手当などを非課税にするならば、それをどうして非課税にするのか、その根拠というものも明確にしておく必要はあるのかなと思います。
最後、人材育成についてですけれども、ソフトスキルというのは自分にとって何を身につけるべきなのか、労働者のほうでは分かりにくいところ、オンラインの場合、往々にして起こるのは研修というのを自ら自分で受けなければならないときがやはり多くなってしまうのではと考えます。あるいは先輩とある時間にオンラインで研修を受けるようにしましょうといっても、先輩も横にいて働きぶりを見て助言をするというときと急につながって何か助言しなさいというのはやはり異なってくるので難しさというのはあると思います。
それを放置したりしておくと、後でスキルによって、ジョブ型とかが最近また話題になっていますが、ジョブ型までいかなくても成果によってその人の人事評価をしていきます、給与を決めますとなったときに、労働者から今までスキルが身につけられなかったので不当だと言われることにもなりかねないので、現在のガイドラインですと充実を図ることが望ましいとまで書かれているのですけれども、それだけでなくてもう少し配慮すべき点な どを例示してもよいのかなと思います。ロールモデルなどもなかなかテレワークですと離れた環境の中で見つけにくいということもあるので、そういったことの構築というのも必要かなと思いました。以上です。<つづく>
*第3回「これからのテレワークでの働き方に関する検討会」の議事の続きについては、今後もつづけて投稿したいが未定(ブログ管理者)。
第3回「これからのテレワークでの働き方に関する検討会」議事録(PDF)
テレワーク労務管理上の課題 人事評価 労働時間管理 健康管理(働き方改革関連法ノート)
追記:厚生労働省「テレワークの適切な導入及び実施の推進のためのガイドライン」公表
厚生労働省は、現行のテレワークガイドライン(指針)「情報通信技術を利用した事業場外勤務の適切な導入及び実施のためのガイドライン」を「テレワークの適切な導入及び実施の推進のためのガイドライン」(指針)に改定し、本日(2021年3月25日)公表。
テレワークの適切な導入及び実施の推進のためのガイドライン(厚生労働省)
厚生労働省「これからのテレワークでの働き方に関する検討会」は厚生労働省雇用環境・均等局の有識者会議になり、テレワークにおける労務管理などガイドライン(指針)の改定を目指して設置され、第1回が2020年8月17日、第2回が10月16日、第3回が11月4日、第4回が11月16日、第5回が12月23日に開催され、12月25日に報告書が公表された。
議題は、第1回が(1)座長の選出について、(2)今後の進め方、検討課題等について、(3)意見交換、(4)その他。第2回は(1)企業ヒアリング(大同生命株式会社と日本航空株式会社の2社)、(2)テレワーク関係省庁の概算要求状況について、(3)検討課題。
第3回は(1)テレワークの実施に際しての労務管理上の課題(人材育成、人事評価、費用負担等)、(2)テレワークの際の労働時間管理の在り方について、(3)テレワークの際の作業環境や健康状況の管理・把握、メンタルヘルスについて、(4)その他。
第4回は(1)テレワークにおける労務管理等に関する実態調査(速報)、(2)濱口委員によるプレゼンテーション、(3)これまでの御意見について。第5回は(1)報告書(案)について、(2)その他。
つまり「これからのテレワークでの働き方に関する検討会」においてテレワークの労務管理上の課題について主に議論されたのは、第3回会合となる。なお、議事録は長文になるため核心部分を抜粋して掲載することにした。
これからのテレワークでの働き方に関する検討会(厚生労度省ホームページ)
これからのテレワークでの働き方に関する検討会 報告書(厚生労働省ホームページ)
第3回「これからのテレワークでの働き方に関する検討会」(厚生労働省雇用環境・均等局が実施する検討会)
日時 2020年11月4日(水)午前10時~12時
場所 中央合同庁舎第5号館 厚生労働省省議室
出席 風神佐知子 慶應義塾大学商学部准教授(オンライン参加)
川田琢之 筑波大学ビジネスサイエンス系教授
小豆川裕子 日本テレワーク学会副会長(オンライン参加)
竹田陽子 東京都立大学経済経営学部教授(オンライン参加)
萩原牧子 リクルートワークス研究所調査設計・解析センター長
濱口桂一郎 労働政策研究・研修機構労働政策研究所長
守島基博 学習院大学経済学部経営学科教授・一橋大学名誉教授(座長)
欠席 小西康之 明治大学法学部教授
議事録<抜粋>
(1)テレワークの実施に際しての労務管理上の課題(人材育成、人事評価、費用負担等)<前半>
・石田雇用環境・均等局在宅労働課長補佐
資料の説明をさせていただきます。<略>
・守島座長
ありがとうございました。では、今、本日、検討課題の1点目、テレワークの実施に際しての労務管理上の課題、人材育成、人事評価、及び費用負担について御説明をいただきました。 それでは、皆さんから御意見、御発言をいただきたいというように思います。<略>
・濱口委員
濱口でございます。今の幾つかの論点について、まず1つ目の人事評価ですが、確かにこの間、マスコミ等で人事評価が最大の問題だという議論をされているのですが、人事評価というのはどちらかというと表面的な話であり、むしろ根っこの話は業務のやり方、進め方の問題ではないかと思います。
例えば欧米のオフィスであれば、ITが入る以前から基本的に紙ベースで仕事をしています。そうすると、その紙ベースの仕事の進め方が電子化されるだけであり、その電子化された紙ベースの仕事の仕方がテレワークになって距離が離れても基本的にその延長線上で行われるのです。
これに対して、もともと日本のオフィスでは紙ベースというよりも、いわばバーバルコミュニケーションあるいは場合によったらノンバーバルコミュニケーションが重要でした。だから、それが電子化されてもやはりちょっと来て、説明しろ、みたいな話になりますし、それをテレワークでやるのはなかなか難しい。その難しさが表面に現れた一つが人事評価の問題なのです。確かに人事評価という形で問題が露呈しているのですが、根っこはむしろ業務の進め方の問題ではないかと。そういう意味では、かなり根が深い話です。
ただ、だからといって、仕事の進め方を、がらっと変えて、基本的に文書ベースで全部やるべきだという話になるのかどうか。これがまた日本の組織の在り方とも密接に絡む問題なのでなかなか難しいのではないか。これは後の人材育成の問題も一緒だと思うのですが、日本の雇用の在り方の根っこに関わる話ではないかと感じております。人事評価をどうするか、成果なのかプロセスなのかという話だけでは話が解決しない、そういう印象を持っております。
それから、費用負担の話も、例えばテレワーク手当という話が幾つかのところで出ているのですが、これは前回、私のほうから提起した、そもそもテレワークする権利があるのか、義務があるのかという、そこを踏まえないといけないのではないか。
テレワークにかかるコストについては、既に厚労省で助成金も用意されていますが、そうではなくて労働者に対するテレワーク手当ということになると、やはりそもそもテレワークするということが権利、義務としてどうなのかという話をきちんと詰めた上でないと、やや先走りの話ではないかという印象を持ちます。
人材育成は、先ほど申し上げた人事評価の話とつながっていますが、日本の場合、即戦力として採用するわけではなくて、いわば素人を採用して、それをその上司や先輩が鍛えていくというやり方です。そうすると、そこはやはり文書ベースだけではなかなかうまくいかないので、どうしてもバーバルなあるいはノンバーバルなコミュニケーションとともにやっていくことになる。となると、テレワークとの相性というのはなかなか難しい。これも人材育成をどうするかという形で問題としては出てくるのですが、やはりその根っこのところには根深い問題があるのではないかと思います。雑駁ですけれども、この3つの論点について、そんな印象を持っております。
・守島座長
ありがとうございます。<略>
・竹田委員
今のお話にありましたように、対面でオフィスに集まって仕事をするという前提で今の仕事は組立てができているのですね。だから、もっと本質的に必要なことは何かということを考えなければいけない時期に来ていると思うのです。
テレワークのために仕事を全面的に変えるというのは目的と手段を取り違えているということだとは思うのですが、しかし、テレワーク以前に今までのやり方をもっと変えたほうがいいのではないかという状況は日本の様々な業界であるので、ちょうどいい機会ではないか。テレワークでいろいろ業務を見直さなければいけないのならば、テレワークだからということではなくて、もっと本質的に我々はどういう価値を生み出し、その手段のために今ある技術的に可能な方法で何が達成できるのかという本質に戻るよい機会である。
まず既存の仕事をベースに労働条件がどうかとか様々なことを考えるのではなく、一度立ち返って考えたほうがいいですよというのをぜひガイドラインに、抽象的でも構わないので入れてほしいと思います。
各論としていろいろありますけれども、一つは、多くの企業が、うちはテレワークできないという理由としてセキュリティーというのを挙げがちだと思うのです。セキュリティーというのは確かに大きな問題であって軽視はできないのですけれども、ただ、ブラックボックス的にもうセキュリティーが駄目だからできないというように答えてしまうように特に小規模な企業なんかはありがちだと思うのです。なので、それも業務の見直しと同時に何が、どういうセキュリティーが必要であって、そのために今のある技術でどこまで解決可能かというように分解して考えていかなければいけない。これもセキュリティーについて考えるいい機会なのではないかと思います。
あと人材育成は一番ヒューマンタッチが必要で、特に人は学ぶときに言葉での指示だけではなくて人のやっている姿を見て学ぶということがすごく大事なのだと思います。それが欠けてしまうのが今年の新入社員にすごく問題なのだと思います。これはある程度、人材育成に関しては意識的にオフラインを使っていくというのも一つですし、もう一つ、これはアイデアでガイドラインに載せるようなことではないですけれども、オンラインにおけるOJTという方法論を考えてみたらいいのではないかなとちょっと思っています。例えば特定のメンターみたいな人と1日オンラインでつながっていて、その先輩がやっている仕事をつぶさにオンラインで見ていて、今の仕事はどういう意味があるのですか、こういうやり方をしているのはなぜですかというように質問ができるというようなことを 集中的にやるとかということが例えば考えられると思います。
もう一つ、労働者のいろいろな権利があると思うのですけれども、労働時間が割とはっきりしているような仕事だと時間外につながらないという、呼び出しなどに応じない、メールを見ないということの切り分けが比較的可能なのですが、テレワークだとつながらない権利を再認識することが大切になる。ただ、テレワークのいいところは、割と時間にフレキシブルで育児とか介護とかの合間にもできるというよさもありますので、業務の性質にもよりますが、この時間はつながらない、この時間はつながるという時間を労働者側がかなり主体的に定義して企業と協議しながらフレキシブルに運用していくというようなことができると理想なのではないかと思います。
最後に、環境整備で意外と重要なのは、椅子、机ではないかと思うのですね。先ほどの企業の補助は通信費とか光熱費などを意識しているのが多かったように思いますが、最初によい椅子と机を買うというのは在宅ワークでかなり大きくて、これは自宅にある適当な机、椅子でやりなさいというパターンが多いような気がしますので、ちょっと初期費用ということを念頭に置いていろいろ制度をつくるといいのではないかと思います。 <略>
・守島座長
ありがとうございました。では、続けて風神委員、お願いいたします。
・風神委員
風神です。1点ずつコメントさせていただきたいと思います。 最初の1番目の委員も評価の仕方について言及されていたと思いますけれども、誰かが例えばやらなければいけないが直接結果にはつながらない仕事など、オフィスでは働きぶりで評価されていたようなことということが、例えばガイドラインでは、業績評価や人事 管理に関してテレワークを行う労働者については通常の労働者と異なる取扱いを行う場合、 異なるときにはあらかじめ取扱い内容を明示するように記載しているのですが、そうではなくて仕事の成果に重点を置いた場合とは必ずしも言えなくて、事前に異なる取扱いをせずに事後的に働きぶりとかが見えないために評価が下がってしまうということがやはり今回皆さんも非常に不安に思っていて、そういったことは防止する必要があるのではないかと思っています。頂いた資料1の6ページの下ではないのだけれども、上も用意していない場合ということをもう少しガイドラインでも明記したほうがいいのかなと感じました。
2点目の費用負担ですけれども、オフィスで働いていたときというのも椅子とかそういったコストというのは賃金から引かれていたとも言えるわけですから、そうすると、これは在宅特有かどうかというよりも、どこで働くかと考えるときに賃金と雇用環境ということを加味して労働者も決定するわけですから、見える化ということが必要であると思っていて、現在のガイドラインでは就業規則でどちらがコストを負担するのかを定めなさいというところまでが書かれているのですが、定めてありますというだけではなくて、労働者へ採用時ですとかテレワークを導入するときにも説明が必要ではないかと思います。
非課税について、最初の事前説明のときに少し言及されていたのでお伺いしたら、そのときには最初、労働者負担になると経費とかの計上がなかなか個人ではできないからかなと考えたのですが、修正版のほうを拝見させていただくと、実費というものは除いて上回った分を非課税にするかどうかというのに変えられているのですけれども、テレワーク手当などを非課税にするならば、それをどうして非課税にするのか、その根拠というものも明確にしておく必要はあるのかなと思います。
最後、人材育成についてですけれども、ソフトスキルというのは自分にとって何を身につけるべきなのか、労働者のほうでは分かりにくいところ、オンラインの場合、往々にして起こるのは研修というのを自ら自分で受けなければならないときがやはり多くなってしまうのではと考えます。あるいは先輩とある時間にオンラインで研修を受けるようにしましょうといっても、先輩も横にいて働きぶりを見て助言をするというときと急につながって何か助言しなさいというのはやはり異なってくるので難しさというのはあると思います。
それを放置したりしておくと、後でスキルによって、ジョブ型とかが最近また話題になっていますが、ジョブ型までいかなくても成果によってその人の人事評価をしていきます、給与を決めますとなったときに、労働者から今までスキルが身につけられなかったので不当だと言われることにもなりかねないので、現在のガイドラインですと充実を図ることが望ましいとまで書かれているのですけれども、それだけでなくてもう少し配慮すべき点な どを例示してもよいのかなと思います。ロールモデルなどもなかなかテレワークですと離れた環境の中で見つけにくいということもあるので、そういったことの構築というのも必要かなと思いました。以上です。<つづく>
*第3回「これからのテレワークでの働き方に関する検討会」の議事の続きについては、今後もつづけて投稿したいが未定(ブログ管理者)。
第3回「これからのテレワークでの働き方に関する検討会」議事録(PDF)
テレワーク労務管理上の課題 人事評価 労働時間管理 健康管理(働き方改革関連法ノート)
追記:厚生労働省「テレワークの適切な導入及び実施の推進のためのガイドライン」公表
厚生労働省は、現行のテレワークガイドライン(指針)「情報通信技術を利用した事業場外勤務の適切な導入及び実施のためのガイドライン」を「テレワークの適切な導入及び実施の推進のためのガイドライン」(指針)に改定し、本日(2021年3月25日)公表。
テレワークの適切な導入及び実施の推進のためのガイドライン(厚生労働省)