新「廊下のむし探検」

大阪北部のマンションの廊下で見つけた虫の名前を調べています

虫を調べる たぶん、クロスジチャイロコガネ

2020-06-03 21:18:28 | 虫を調べる
1月に亡くなった身内の遺品整理のついでに、自分の身辺整理も行いました。2,3年前から置いておいた標本を廃棄し、大量にあった資料や写真も捨て、身の回りもかなりすっきりしてきました。そろそろまた虫を調べ始めようかと思って、とりあえず5月30日に採集した甲虫を調べてみることにしました。



採集したのはこの甲虫です。「日本産コガネムシ上科標準図鑑」に載っている図版と比べて、コガネムシ科コフキコガネ亜科のクロスジチャイロコガネではないかと思ったので、それを確かめるために、この図鑑に載っている検索表で調べてみました。



まず、全景です。体長は背側から測ったときは9.06mm、腹側から測ったものが8.78mmだったので、その平均を取って8.9mmとしておきました。この写真は、実体顕微鏡にカメラ用のリング照明を取り付け、焦点位置を少しずつ変えながら30枚ほど撮影し、その後、CombineZPというフリーソフトで深度合成して得ました。高倍率で撮る場合は、生物顕微鏡に10倍の対物レンズを取り付けて、やはり深度合成をしました。なお、光沢の度合いを調べる場合以外は試料の周りをトレーシングペーパーの筒で覆い、照明が拡散光になるようにしています。

まずはコガネムシ科のうち、亜科の検索です。「日本産コガネムシ上科標準図鑑」は食葉性グループの検索表ですが、検索の結果はコフキコガネ亜科になりました。検索表のうち、必要な部分だけを抜き書きすると次のようになります。

①♂の前腿節と前脛節は通常に伸張し、♂♀の間であまり差異はない;♀の前脛節外側には通常3本かそれ以下の歯がある
②体は十分に中高である;触角挿入部は背面から観察できない
③爪の下面には基本的に内歯がある;少なくとも♀では1本の脚の左右の爪は対称的な形である  コフキコガネ亜科

これを写真で確かめていこうと思います。検索順に見ていくといいのですが、同じ写真が何度も出てきて煩わしいので、写真ごとに見ていくことにします。



最初はテナガコガネ亜科を除外する項目で問題なく確かめることができます。なお、これは♂だと思うので、♀の項目は除いています。



次はハナムグリ亜科とヒラタハナムグリ亜科を除く項目ですが、これも大丈夫でしょう。「触角挿入部は背面から観察できない」を書くのを忘れていましたが、挿入部はこの写真でも見えません。





この2枚の写真で、跗節爪は対称的で、爪の下に歯があることが分かります。これで、コフキコガネ亜科であることが確かめられました。次は族への検索です。

④少なくとも♀の爪は、内側爪と外側詰めの間で大きさが同じである;後脚にも同じ大きさの内外1対の爪が存在する;爪は通常、適度か非常に強く屈曲し、一部には緩やかに湾曲するものもある;脛節の外側にはふつう刺がある
⑤第5腹節と前尾節板の間には明瞭な会合線があり、これによって部分的または完全に背腹側を境界づけられる;尾節板はより角張った顕著な逆三角形か逆台形の形をなす;頭楯と眼縁突起は通常一体化することはなく、多くははっきりと別のものとして認識できる
⑥前基節は下方に強く突出し、外見上の高さは幅より大きい;後脛節先端の2刺は互いに離れて位置する;後基節の縦の幅が非常に大きいものが多い ビロウドコガネ族

これも必要な部分だけを抜き出しています。族の検索ではビロウドコガネ族になりました。これも写真で確かめていきます。





先ほどと同じ写真ですが、最初はアシナガコガネ族を除外する項目なので、これもまず大丈夫でしょう。



これは後脛節末端の写真ですが、2本の刺があります。また、その2本は離れてついています。これで④と⑥の項目の一部が確かめられました。



次は腹部末端を示した写真です。ここでだいぶ迷いました。まず、腹部の節の数え方ですが、見かけの節で表す方法と本来の節の番号で表す方法があります。ローマ数字で書いたのは本来の節の番号です。これによると腹部第5節は第VII節に該当します。次に、前尾節板という言葉がよく分かりませんでした。図で示した部分は尾節板でこれは背板の一部です。たぶん、前尾節板→尾節板としてよいのではと思いました。尾節板と第VII節の間には明瞭に線が入っています。この線で背と腹が分けられます。尾節板は逆三角形なので、この項目はOKとしました。



複眼の上に突起が出ています。これが眼縁突起だろうと思います。眼縁突起は頭楯からの突起となっていて、両者ははっきりと分けることができるので、この項目はOKとしました。



前基節は写真のように下方に張り出していて、その高さは幅よりもやや大きい感じです。それでこの項目もOKとしました。



後基節は図に示した部分ですが、確かに縦の幅は相当に広いことが分かります。これでビロウドコガネ族であることになりました。この後は属と種の検索なのですが、長くなったので次回に回します。


最新の画像もっと見る

コメントを投稿