新「廊下のむし探検」

大阪北部のマンションの廊下で見つけた虫の名前を調べています

廊下のむし探検 エゾナガウンカ?

2019-06-30 20:45:37 | 廊下のむし探検
廊下のむし探検 第42弾


最近は暇がなくて虫の撮影になかなか出られません。それで、6月29日にマンションの廊下で撮った写真を少しずつ出すことにしました。





今日はこの虫です。後脚脛節末端に可動性の距がちらっと見えるので、ウンカ科は確かだろうと思います。実はこのウンカ、以前、じっくり調べたことがありました。その時は可動性の距やジャンプの機構などについて調べました。種名についてはネットで調べてエゾナガウンカに似ているとしていました。エゾナガウンカ Stenocranus matsumuraiはウンカ科ナガウンカ亜科Stenocranus属に含まれています。この属については次の論文に載っていました。

S. Matsumura, "Revision of Stenocranus Fieb. (Hom.) and its allied species in Japan-Empire", Insecta Matsumurana 9, 125 (1936). (ここからダウンロードできます)

かなり古い論文なのでどれだけ使えるかよく分かりませんが、検索表が載っているのでとりあえず試してみることにしました。ただし、エゾナガウンカはこの論文ではbrevicepsという名で載っています。

①前胸背板の側隆起線(lateral keels)は直線的で完全に後縁まで達する Stenocranus
②前頭隆起線(frontal keels)の間の前頭(frons)は黄色がかる
③前翅(tegmina)の基半部は透明
④前翅には暗褐色の縦帯はない fallax, breviceps

brevicepsに到達するにはこの4項目を調べればよいのですが、最終的に交尾器を見ないと分からないので、fallax(ニセナガウンカ)との区別は付けられません。今回撮った写真でははっきりしないので、以前撮った写真を使って調べていきたいと思います。



まず①の前胸背板の側隆起線(lateral keels)は矢印で示した部分だと思うのですが、確かに後縁まで伸びています。これで、Stenocranus属になるのですが、検索表に載っている他の属は正体不明なものばかりでした。



次の②の「前頭隆起線(frontal keels)の間」は矢印で示した部分だと思うのですが、確かに黄色がかっています。さらに、③と④はその通りなので、この検索表によればエゾナガウンカか、ニセナガウンカかのどちらかというところになります。「日本昆虫目録第4巻」によると、日本産のStenocranus属は17種。このうち、本州産は10種。それに対して、この論文の検索表は台湾産や朝鮮産も含めて14種。どこまで使えるかはよく分かりません。

追記2019/07/01:Matsumura(1936)に載っているStenocranus属14種の現在の名称を調べてみました。

akashiensis →Sagata hakonensis ハコネホソウンカ(ウンカ亜科)
breviceps →matsumurai エゾナガウンカ
elongatus ホソナガウンカ
fallax ニセナガウンカ
formosanus (台湾産)
harimensis ハリマナガウンカ
hopponis (台湾産)
koreanus (朝鮮産)
niisimai ニイジマナガウンカ
ogasawarensis →Sagata hakonensis ハコネホソウンカ (ウンカ亜科)
sapporensis サッポロナガウンカ
tamagawanus タマガワナガウンカ
tateyamanus タテヤマナガウンカ
vittatus →hokkaidoensis セスジナガウンカ

14種のうち、属の移動が2種、シノニムとされたものが2種で、その他のものは「日本昆虫目録第4巻」に載っているか、あるいはCatalogue of Lifeでaccepted nameとされているものでした

廊下のむし探検 イチゴチビナガカメムシ

2019-06-29 20:32:26 | 廊下のむし探検
廊下のむし探検 第41弾


いよいよ手元にある虫の写真がなくなってしまいました。それで、夕方5時ごろに自宅のある階の廊下をちょっとだけ歩いてみました。まだ、写真の整理がついていないのですが、とりあえず、カメムシだけ調べてみたので載せておきます。



小さなカメムシです。似たような種が多いのですが、「日本原色カメムシ図鑑第3巻」の図版を見ていたら、似た種が見つかりました。ヒョウタンナガカメムシ科ヒョウタンナガカメムシ亜科サビヒョウタンナガカメムシ族のイチゴチビナガカメムシ Stigmatonotum geniculatumです。一応、確かめてみようと思って、サビヒョウタンナガカメムシ族の属への検索表を見てみました。

①前胸背は前・後葉間であまりくびれず、横溝は不明瞭;②前脚腿節の腹面に1本の棘状突起がある チビナガカメムシ属

実にあっけなくて最初の項目でチビナガカメムシ属 Stigmatonotumであることが分かるようです。それで、ついでにイチゴチビナガカメムシの種の説明も見てみました。

③触角の第1、4節は黒褐色で、2、3節が黄褐色
④腿節の先端近くに明瞭な茶褐色ないし黒褐色の環状紋が現れる

とりあえず、この4項目を調べてみることにしました。



それがこの写真です。①から④まですべてこの写真で確かめることができました。図鑑の説明によると、チビナガカメムシ属はサビヒョウタンナガカメムシ族の中では形態的にやや特異な属のようで、①の前胸背が中央であまりくびれず、横溝が不明瞭なところが特徴の様です。その様子はこの写真でもよく分かります。他の虫はまた次回に回します。

家の近くのむし探検 公園の虫

2019-06-28 20:21:14 | 家の近くのむし探検
家の近くのむし探検 第19弾


6月25日にマンションの廊下で虫探しをした後、家の近くの公園に行きました。ちょっと運動をするためです。そこで見つけた虫たちです。



最初はこんなコケガの仲間です。大きさを測らなかったのですが、たぶん、やや大きめの蛾。それで、ムジホソバ、キシタホソバ、ツマキホソバ辺りが考えられますが、こんな色をしているのは♀。だとすると、前翅前縁の黄色の幅がやや広いのでムジホソバあたりが考えられます。





これはナミテントウの幼虫。



前胸背板に3本線。ニクバエの仲間です。



それに、これはカノコガ。





こんな綺麗なアシナガバエは公園にはたくさんいます。ただ、今のところ、どうやって調べたらよいのかよく分かりません。



このアリもよく分かりません。



これはルリチュウレンジの幼虫。





公園で虫探しをした後、広場でランニングをして、それから公園を離れようとしたとき、こんなアリの塊を見つけました。



これがヒアリだったらどうしようとなんて考えながら拡大してみると、どうやら、トビイロシワアリみたいです。ほっとしました。





ついでに砂場を見ると、砂の上を小さなハチがたくさん飛び回っていて、ときどき砂の中に潜ったりしています。このハチについては以前調べたことがあります。たぶん、ヤマトスナハキバチで、ドロバチモドキ科スナハキバチ亜科のハチです。



最後は支柱の上に止まったツマグロヒョウモンでした。

廊下のむし探検 コガネ、蛾ほか

2019-06-27 10:41:28 | 廊下のむし探検
廊下のむし探検 第40弾


6月25日に久しぶりに公園に行って運動でもしてこようと思って、出かけるついでにマンションの廊下もちょっとだけ歩いてみました。そこで見つけた虫たちです。



こんなコガネムシがひっくり返っていました。ついでだから腹側を写しておきます。



表側も写しました。たぶん、シロテンハナムグリあたりかなと思ったのですが、「日本産コガネムシ上科標準図鑑」に載っている検索表で調べてみました。

①中胸腹板突起は平らで、うちわ状から横長の楕円形
②前胸背板の後縁中央部は顕著に湾入する;後基節は腹面中央で接する シロテンハナムグリ属 Protaetia

③中型(20mm前後)で、翅端は少し突出するか突出しない
④前脛節は被覆物を欠く;♂交尾器は左右の側片が少なくとも基半部では接する
⑤♂は腹部腹板中央が幅広くへこむか平坦
⑥中脛節・後脛節の外縁には2段刻がある 
Calopotosia orientalis, lewisi(沖縄、渡嘉敷島・・・)
Pseudocalopotosia ishigakia(喜界が島、与那国島)

シロテンハナムグリはProtaetia (Calopostosia) orientalisなので、①から⑥までを確かめれば分かります。シロテンハナムグリはこれまで何度か調べたことがあったのですが(例えば、こちら)、一応、見ていきます。



この写真から、①の中胸腹板突起の形、②の後基節、それに、⑥の後脛節の2段刻あたりが分かります。



さらに、この写真から②の前胸背板の後縁中央部の湾入が分かります。③と④はたぶん大丈夫で、⑤は♂の形質なのでよく分かりませんが、おそらくCalopotosia亜属か、Pseudocalopotosia亜属までは確かそうです。この2亜属のうち、本州産はorientalis1種だけなので、シロテンハナムグリでよいのだろうと思っています。



最後に頭盾前縁を見て、ちょっと不安になってきました。シロテンハナムグリの説明には「(頭盾)前縁は明瞭に上反し、中央で深く湾入する」とあります。以前、撮った写真でもかなり深い湾入が見られます。ところがこの個体では浅く湾入しているだけです。本当に大丈夫だろうか。ちょっと心配になってきました。



これはヒトツメオオシロエダシャク



そして、ホシササキリ



それから、フタホシシロエダシャク



それと、キシタエダシャク



次はこのコガネムシ。今度は裏返っていませんでした。



それで、わざと裏返して写真を撮りました。「日本産コガネムシ上科標準図鑑」の図版と比べてみると、ちょっとくすんだ緑色のところがアオドウガネあたりと似ています。アオドウガネはAnomala属なので、そのうちのドウガネ種群を見てみました。この種群には6種載っているのですが、そのうち、本州産はアオドウガネ albopilosa、ヤマトアオドウガネ japonica、ドウガネブイブイ cupreaの3種です。このうち、ドウガネブイブイは金属光沢があるので除外してよいとすると、アオとヤマトアオの2種が残ります。アオはもともと南方系なのですが、近年、北上傾向が強く、ヤマトアオドウガネやヒメコガネを駆逐して、本州を北上していると書かれていました。ということで、このどちらも可能性があるようです。ただ、両者の違いはあまりはっきりとは書かれていません。ぱっと見たところ、①頭盾前縁が強く上反しているとヤマトアオ、微かに上反しているとアオ、②上翅側縁の隆起が上翅肩部より約2/3まで縁取られていたらヤマトアオ、約3/4まで縁取られていたらアオ、③尾節板が黄色の毛でまばらに覆われるとヤマトアオ、黄褐色の長毛で覆われるとアオ、というくらいかなと思います。



まずは頭盾を見てみます。かなり強く上反しているように見えますが、「強い」か「微か」は相対的な問題なので、はっきりとは分かりません。



上翅側縁の隆起は上から見たときに縁にある筋のように見える部分だと思われますが、はっきり見えているのは2/3程度、微かに見えているのは矢印のある部分まで。従って、3/4を少し超えたところ。ということで、結局、よくは分かりませんでした。何となく、ヤマトアオドウガネかなとは思っているのですが、甲虫は難しいですね。

廊下のむし探検 カゲロウ、チャタテなど

2019-06-26 20:28:45 | 廊下のむし探検
廊下のむし探検 第39弾


6月21日にマンションの廊下で見つけた虫の続きです。



最初はアカマダラカゲロウ♀で、たった今、脱皮したばかりです。



その次はクリイロチャタテだと思われる個体です。



そして、アシナガグモの仲間です。この仲間は大きな上顎で見分けていくので、この写真で区別はつきません。「日本産クモ類」によると、アシナガグモ属 Tetragnathaの日本産は21種、そのうち本州産11種。やはり採集しないと駄目でしょうね。でも、クモは苦手。



これはサビヒョウタンナガカメムシではないかと思います。





これは以前も絵合わせでスカシチャタテとしたのですが、今回もそれ以上の手掛かりはなしです。「日本昆虫目録第4巻」によると、スカシチャタテ科にはスカシチャタテ Hemipsocus chloroticus一種だけです。従って、科の検索をすればよいのですが・・・。以前作った「手作り図鑑」を見ると、跗節が2節、後小室がM脈と横脈と結合、爪に歯があるという3つの条件で確かめられるのですが、この写真では跗節が2節くらいしか分かりません。





これはヨコバイの仲間です。「絵解きで調べる昆虫」に載っている「同翅類とヨコバイ科の絵解き検索」をちらっと見たのですが、やはり採集しないと分かりそうにありません。



これはコカマキリの幼虫かな。



そして、ズグロオニグモ





最後はまたヨコバイです。「九州で見られるウンカ・ヨコバイ・キジラミ類図鑑」を見ると、何となくMacrosteles属かなと思ったのですが、それほど根拠はありません。

雑談)マンションの管理組合の役員になってから、ほとんど毎日のように仕事があり、なかなか虫に集中することができません。マンションも30年近くなると、いろいろと問題が多くて、どうしたらよいかと考えていると、ほとんど一日中つぶれてしまいます。それで、虫の名前調べは今や息抜きの一つになっています。いつもだったら、廊下を歩いて見つけた虫を1回か2回でブログに出してしまうのですが、今は3回くらいに分けて出しています。本当は捕まえて検索をしたいのですが、なかなか気持ちに余裕がなくって・・・。