廊下のむし探検 第42弾
最近は暇がなくて虫の撮影になかなか出られません。それで、6月29日にマンションの廊下で撮った写真を少しずつ出すことにしました。
今日はこの虫です。後脚脛節末端に可動性の距がちらっと見えるので、ウンカ科は確かだろうと思います。実はこのウンカ、以前、じっくり調べたことがありました。その時は可動性の距やジャンプの機構などについて調べました。種名についてはネットで調べてエゾナガウンカに似ているとしていました。エゾナガウンカ Stenocranus matsumuraiはウンカ科ナガウンカ亜科Stenocranus属に含まれています。この属については次の論文に載っていました。
S. Matsumura, "Revision of Stenocranus Fieb. (Hom.) and its allied species in Japan-Empire", Insecta Matsumurana 9, 125 (1936). (ここからダウンロードできます)
かなり古い論文なのでどれだけ使えるかよく分かりませんが、検索表が載っているのでとりあえず試してみることにしました。ただし、エゾナガウンカはこの論文ではbrevicepsという名で載っています。
①前胸背板の側隆起線(lateral keels)は直線的で完全に後縁まで達する Stenocranus
②前頭隆起線(frontal keels)の間の前頭(frons)は黄色がかる
③前翅(tegmina)の基半部は透明
④前翅には暗褐色の縦帯はない fallax, breviceps
brevicepsに到達するにはこの4項目を調べればよいのですが、最終的に交尾器を見ないと分からないので、fallax(ニセナガウンカ)との区別は付けられません。今回撮った写真でははっきりしないので、以前撮った写真を使って調べていきたいと思います。
まず①の前胸背板の側隆起線(lateral keels)は矢印で示した部分だと思うのですが、確かに後縁まで伸びています。これで、Stenocranus属になるのですが、検索表に載っている他の属は正体不明なものばかりでした。
次の②の「前頭隆起線(frontal keels)の間」は矢印で示した部分だと思うのですが、確かに黄色がかっています。さらに、③と④はその通りなので、この検索表によればエゾナガウンカか、ニセナガウンカかのどちらかというところになります。「日本昆虫目録第4巻」によると、日本産のStenocranus属は17種。このうち、本州産は10種。それに対して、この論文の検索表は台湾産や朝鮮産も含めて14種。どこまで使えるかはよく分かりません。
(追記2019/07/01:Matsumura(1936)に載っているStenocranus属14種の現在の名称を調べてみました。
akashiensis →Sagata hakonensis ハコネホソウンカ(ウンカ亜科)
breviceps →matsumurai エゾナガウンカ
elongatus ホソナガウンカ
fallax ニセナガウンカ
formosanus (台湾産)
harimensis ハリマナガウンカ
hopponis (台湾産)
koreanus (朝鮮産)
niisimai ニイジマナガウンカ
ogasawarensis →Sagata hakonensis ハコネホソウンカ (ウンカ亜科)
sapporensis サッポロナガウンカ
tamagawanus タマガワナガウンカ
tateyamanus タテヤマナガウンカ
vittatus →hokkaidoensis セスジナガウンカ
14種のうち、属の移動が2種、シノニムとされたものが2種で、その他のものは「日本昆虫目録第4巻」に載っているか、あるいはCatalogue of Lifeでaccepted nameとされているものでした)