先日、妙な電話がかかってきた。
電話を受けたのは母だ。
電話の相手は弟で、携帯をなくしたといっており、ものすごく消沈しきった様子であったという。
警察にも届け出ており、どういうわけか、見つかったときにはうちに電話がかかってくるようなことをいっていたらしい。
新しい携帯の番号を告げると、忙しいから切るねといっていそいそと話を切り上げたといい、なんだかよくわからない内容だ。
しかも、風邪をひいたのか声がずいぶんとおかしかったという。
母は携帯電話の中に入っている個人情報を気にしている様子だったが、わたしはなんで警察からうちへ連絡が来るようになっているのかが気になった。
嫁さんに見られてはまずい内容が携帯に入ってるんじゃないかと疑ったのだ。
こんなことで浮気がバレるなんてバカらしいではないか。
ところが翌日、母は直接弟と会い、携帯がどうなったかを聞くと、弟はきょとんとして内ポケットから携帯を取り出したという。
つまり……ちまたでウワサのオレオレ詐欺からの電話だったのだ。
母の友人にこの話をしたところ、同じ手口でだまされかかった人がいたことがわかった。
母も新しい携帯の番号を書き留めていたように、その人もその後が気になって新しい携帯に電話をかけたというのだ。
そうしたらいきなり、酔っぱらったいきおいで女の人を突き飛ばしてしまい、お金が必要になったといわれ、指示されるがままに100万円を振り込んだそうだ。
だけど、その口座は犯罪に使われていると銀行側が知ったのか、相手に渡る前にストップされていたので戻ってきたという。
だんだんと手口が巧妙になっているじゃないか。
だますのなら一回目の電話でさっさとだまさなくてはだましきれないと思っていたが、そうではなかったのだ。
まずは本物の息子との連絡を絶つことが最優先事項になっている。
うちの母も確認のためになくしたという携帯にかけてみることはなかったし、自宅の方に電話するのもなんだかためらうような雰囲気だった。
さいわいと母の職場と弟の職場は近いところにあるので直接聞いてみたというわけだった。
そんなわけでして、今更ながらの題材だけど。
ショートショートをひとつ。
*-*---------------------------
振り込め詐欺
*-*---------------------------
「もしもし、オレだけど……」
「え?」
「オレ、オレだけど」
「正敏かい?」
「そう……あの、あのさ……」
「もう、なんだい。泣いているのかい? 男のくせに母親に電話で泣きついてくる馬鹿がおるか」
「ごめん、だけど、大変なことになって。お金が必要なんだよ。それがものすごい大金で、どうしたらいいのかわかんなくてさ」
「そんなことぐらいで泣くんじゃない。お金ならあるから」
「でも、本当にとんでもない額なんだよ」
「大丈夫。お父さんの退職金で株投資してたから、うちにも少しはお金があるんだよ。今、五千万くらいになってるから、それだったら少しは足しになるんだろ?」
「ありがとう、母さん」
「だけどその株を売りさばくには三十万必要なんだ。手元にないんだけど、それくらいなら用意できるのかい?」
「え? ……ああ、なんとかするよ」
「じゃあ、今からいう口座に振り込んでおくれ。メモの用意はいいかい?」
電話を受けたのは母だ。
電話の相手は弟で、携帯をなくしたといっており、ものすごく消沈しきった様子であったという。
警察にも届け出ており、どういうわけか、見つかったときにはうちに電話がかかってくるようなことをいっていたらしい。
新しい携帯の番号を告げると、忙しいから切るねといっていそいそと話を切り上げたといい、なんだかよくわからない内容だ。
しかも、風邪をひいたのか声がずいぶんとおかしかったという。
母は携帯電話の中に入っている個人情報を気にしている様子だったが、わたしはなんで警察からうちへ連絡が来るようになっているのかが気になった。
嫁さんに見られてはまずい内容が携帯に入ってるんじゃないかと疑ったのだ。
こんなことで浮気がバレるなんてバカらしいではないか。
ところが翌日、母は直接弟と会い、携帯がどうなったかを聞くと、弟はきょとんとして内ポケットから携帯を取り出したという。
つまり……ちまたでウワサのオレオレ詐欺からの電話だったのだ。
母の友人にこの話をしたところ、同じ手口でだまされかかった人がいたことがわかった。
母も新しい携帯の番号を書き留めていたように、その人もその後が気になって新しい携帯に電話をかけたというのだ。
そうしたらいきなり、酔っぱらったいきおいで女の人を突き飛ばしてしまい、お金が必要になったといわれ、指示されるがままに100万円を振り込んだそうだ。
だけど、その口座は犯罪に使われていると銀行側が知ったのか、相手に渡る前にストップされていたので戻ってきたという。
だんだんと手口が巧妙になっているじゃないか。
だますのなら一回目の電話でさっさとだまさなくてはだましきれないと思っていたが、そうではなかったのだ。
まずは本物の息子との連絡を絶つことが最優先事項になっている。
うちの母も確認のためになくしたという携帯にかけてみることはなかったし、自宅の方に電話するのもなんだかためらうような雰囲気だった。
さいわいと母の職場と弟の職場は近いところにあるので直接聞いてみたというわけだった。
そんなわけでして、今更ながらの題材だけど。
ショートショートをひとつ。
*-*---------------------------
振り込め詐欺
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「もしもし、オレだけど……」
「え?」
「オレ、オレだけど」
「正敏かい?」
「そう……あの、あのさ……」
「もう、なんだい。泣いているのかい? 男のくせに母親に電話で泣きついてくる馬鹿がおるか」
「ごめん、だけど、大変なことになって。お金が必要なんだよ。それがものすごい大金で、どうしたらいいのかわかんなくてさ」
「そんなことぐらいで泣くんじゃない。お金ならあるから」
「でも、本当にとんでもない額なんだよ」
「大丈夫。お父さんの退職金で株投資してたから、うちにも少しはお金があるんだよ。今、五千万くらいになってるから、それだったら少しは足しになるんだろ?」
「ありがとう、母さん」
「だけどその株を売りさばくには三十万必要なんだ。手元にないんだけど、それくらいなら用意できるのかい?」
「え? ……ああ、なんとかするよ」
「じゃあ、今からいう口座に振り込んでおくれ。メモの用意はいいかい?」
ショートショート、いい味です。こんな知恵が回る人が身近にいると安心ですね。
銀行によってはATMで振り込むときは「振り込め詐欺ではありませんか?」と一応忠告してくれるんですけどね・・・
ショートショート、楽しんでもらえてよかったです!
騙していたつもりが騙されていたって話を考えてみました。
長い間留守にしててすいませんでした。