雑賀孫市(まごーん)の中の人ブログ

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寺田寅彦と「Give a reason」

2018年07月07日 08時32分54秒 | 日記
2018年6月18日に大阪で震度6の地震が起こりましたが、讀賣新聞によれば、これは1923年の統計以降大阪では初の観測になるということです。

1923年と言いますと関東大震災が起こった年です。物理学者の寺田寅彦はこの時のことを『地震雑感』に書き残しています。寺田は関東大震災による被害を受けて「我々は、滅多に得られない苦い経験を嘗めさせられた。」として「この苦い経験の記憶がいつまでつづき、この心掛けがいつまで忘れられないでいるかということが問題である。」と警鐘を鳴らしています。
寺田は地震で古記録などを調べ直し、自身が嘗めた経験を昔の人が全く同じく嘗めていたことを知ります。そしてそこで得られた教訓が「いつの間にか全く世の中からは忘れられてしまって、今文明開化を誇っている我々がまた昔の人の愚かさをそのままに繰り返しているという不思議な、笑止な情けない事実である」と、例えば明暦の大火で由井正雪の残党が大正の今日では朝鮮人と社会人に名前を変えてなぶり殺される(これはデマによる惨劇について)だけであるとかを例に書き記しています。
この寺田の言葉を見るに、Twitterで熊本や大阪の大きな地震の際に流言飛語が飛び交っている様はもう何度見たものかと思い出します。

さて、大阪の地震は1995年に発生した阪神淡路大震災以来の大規模な地震でした。その翌年、ある曲が世の中に出てきます。
「目まぐるしい 時間の群れが 走り抜ける 都市はサバンナ かわるがわる シュールなニュース 明日になれば 誰も忘れてる…」
『Give a reason』のこの一節は、当時の時点で情報があふれていたことを認める一つでしょう。寺田や江戸の人たちが生きてた頃より情報が流れる現代、私たちは苦い経験をすぐに忘れないようにしなければ、また寺田に失笑されてしまうでしょう。

大阪地震ならびにこの度の豪雨で被災された方々、心よりお見舞い申し上げます。

参考文献
千葉俊二・細川光洋編・寺田寅彦『地震雑感/津波と人間』(中公文庫、2011年)。
「林原めぐみ Give a reason 歌詞」
(http://j-lyric.net/artist/a000fb1/l0011d0.html)
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