第46弾をお届けします。
<がめつい>
小学生の頃、「がめつい奴(やつ)」をテレビで見た記憶があります。調べてみると、1959年に東京の芸術座で初演され、大当たりとなりましたから、それの劇場中継だったようです。その公演ポスターがこちら。その後、映画化、テレビドラマ化されるなど、随分話題を呼びました。
主人公は、お鹿というケチで強欲なお婆さん、つまり「がめつい奴」です。ストーリー、場面はほとんど覚えていませんが、ポスターの一番後ろに映っている中山千夏の達者な子役ぶりだけが印象に残っています。
さて、「がめつい」って、いかにも大阪弁的な響きがあります。でも、子供心に「あまり聞いたことのない言葉やなぁ」と感じていました。それも道理で、制作者の菊田一夫の「造語」だったのです。
どうやってこの言葉をひねり出したのでしょう。諸説あるようですが、「ガメる」という大阪弁動詞の「がめ」に、「つい」をつけて形容詞化したのでは、というのが有力です。
そういえば、小さい頃、母親が古い噂話の中で、「あの人の麻雀は、とにかく「ガメる」ねん。高い役、大きいアガリばっかり狙ってたわ」と話してたのを思い出します。強引、強欲に勝ちにいく、儲けにいく・・・そんなニュアンスで使ってたようです。
子供同士だと「あんた、おやつ「がめ」ったらアカンで。みんなで分けて食べようよ」と一人占めや、取り分をごまかす行為をたしなめるのに使ってました。
「こっちも精一杯、がんばって値引きさしてます。これ以上、安うせえて「がめつい」こと言われても困りまんな」
今や(たぶん)全国的に通用する「がめつい」ですが、「がめつい」ことを必ずしも悪いこと、恥ずかしいこととしない大阪という風土、そして大阪弁という文脈に一番馴染んでいる気がします。
<商売あがったり>
「あがったり」というから「順調」かと思ったらそうじゃないんですね。「干上がる」という言葉からの連想でしょうか「うまくいってない」ということを意味します。
とは言え、大阪人が使うのですから、今日、明日にでも倒産、などという深刻なニュアンスはありません。一時的に、売り上げ、儲けに影響が出る(かもしれない)という程度のことが多いです。自分の責任でないことのせいにして、自虐的にぼやいたり、他人(ひと)の商売のことを、ちょっと心配して使うのが、一番ハマるようです。
「こんな暖冬続きじゃ、冬モノ扱うてる店は、「商売あがったり」やろな」
「近頃は、みんなネット通販とかを利用するもんやから、ウチみたいに、店頭だけでコツコツやってるとこは「商売あがったり」や」
具体的な商取引の場面で、この言い回しが登場することがあります。
「そないな(そんな)値段で納品せぇ言われても勘弁しとくんなはれ(してください)。それじゃ「商売あがったり」ですわ」
もちろん駆け引きでしょうけど、大阪商人の「断る力」の発揮しどころです。
「商売」というのを、仕事、職業として捉えて、こんな言い方もできます。
「デジカメ、スマホがこんだけ普及して、素人でも写真の加工ができる時代ですやろ。私らプロの写真家は、「商売あがったり」ですわ」
プロとしての収入への影響ということもありますが、持っている技能、技術を発揮する場が減る、奪われる・・・そんな思いを込めた使い方です。
いかがでしたか?それでは次回をお楽しみに。